Cengiz Candar コラム:「連邦国家」イラク ―トルコはどう付き合うべきか?
2007年04月12日付 Hurriyet 紙

トルコで最も広く蔓延している病気の筆頭格である「知識を持たずに考えの持ち主になる」病。その影響が最も顕著に現れているのがイラク問題である。

特に我が国で北イラクと名付けられ、イラク・クルディスタンが含意させる地域、すなわち我が国の国境の奥に位置し、トルコがイラクと直接接している地点で、地域の経済活動の屋台骨がトルコ人の実業家の何十億ドルという金額に上る協定によって支えられているにもかかわらず、トルコの世論と政治エリートが持っているこの地域に関する知識はごくわずかである。

私は北イラクとイラク・クルディスタンという名称を、それぞれ意図的に違う意味で使っている。北イラクとは、首都バグダッドから100キロメートルほど北の地点から始まり、ハムリーン山の山並みの上に広がり、トルコ国境まで延びる地域を指して用いられる「地理的な」定義である。一方イラク・クルディスタンは、北イラクに位置するが地域全体を含まず、ドフック、アルビル、スレイマニイェの各州で構成される「行政・法制上の」名称である。例えばキルクークは、北イラクにあるがイラク・クルディスタンには含まれない。

問題は、トルコが2003年にイラクで起こった「パラダイムシフト」を目にしながらも認めることができず、状況の変化に合った政治方針を生み出せないことに起因している。トルコ政府が北イラクの一地域に「連邦国家イラク」の枠組みの中で「クルド政権」が成立したことや組織化しつつあることを認め、これにふさわしい形で行動することができれば、トルコとイラク・クルディスタンとの関係も、トルコ-イラク、トルコ-アメリカ間の関係一般についても今日我々が行き着いている段階(=緊張関係)にはたどり着かなかっただろう。

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トルコのように何百年にもわたる強固な「中央集権国家」の伝統を持ち、社会の「政治文化」もこれに応じて形成された国で、「連邦制」の実験を目の当たりにしたとき、これを理解することは当然のことながら容易ではない。「連邦制」は、トルコではほとんど「分離主義」や「(国の)分解」と同義の言葉として受け止められている。そもそもイラク(新)憲法に移行し、イラクが「連邦国家」となり、イラク連邦制が「クルディスタン地域政府」によって実行に移されたにもかかわらず、イラク人もまたこれを完全に理解できないでいるように見える。トルコのこの問題での「ぎこちなさ」も少しは理解できないではない。

今年の年初、すなわち数カ月前に英BBC、米ABCニュースやその他有力な国際メディア組織がイラクで実施した世論調査からは、この件について興味深い結果が明らかになった。
(調査は)次の3択で質問されたようだ:
1. バグダッドに中央政府のある統一イラク(単一国家)
2. バグダッドに連邦政府が、 また(各地域に)各自の政府がある地域国家(イラク憲法が想定した、現在の法的状態)
3. 別々の独立国家に分かれた国家(分裂)

この3択の質問へのイラク人の回答は極めて注目に値する。人口のおよそ60パーセントを占めるシーア派の41パーセントは「単一国家」を、40パーセントは「連邦」を、19パーセントは「分裂」を支持した。クルド人の49パーセントは「連邦」と答えた一方、30パーセントは3番目の選択肢、すなわち「独立」を選んだようだ。人口の17~20パーセントを占めるスンナ派アラブ人の97パーセントの回答は「単一国家」であった。

「連邦」支持のシーア派もグループに分かれている。どのグループも「連邦」という言葉から違う意味を引き出し、期待を寄せている。一方でこの目立った数字の大部分は、イラクの原油資源の4分の3を確保している南部の、大部分がバスラ地域に居住するシーア派によるものだ。バスラ州の(住民の)46パーセントは「連邦」を、23パーセントは「独立」、すなわち「独立シーア派国家」を支持している。バスラ市での「連邦制支持派」は54パーセントに達する。イラクのシーア派の人々の多くは「イラク民族主義」を、残りは「アラブ民族主義」を支持していることが分かっている。

このようなイラクの様相は、事の収拾が極めて困難であり、イラクが今後長きにわたって「見通しの不透明さ」や「不安定さ」を克服できないことを示している。

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クルド人の観点から見ると、「連邦」は彼らをイラク国家の傘の下に繋ぎ止めておくことのできる「最小の共通分母」である。上で述べた世論調査の最初の選択肢(=単一国家)は、クルド人にとって全く有効ではない。そのため、イラクでは実現がもはや不可能な選択肢だ。2003年の戦争前の「統治構造」への回帰を志向するいかなる努力も、この4年間軍事衝突や暴力行為の当事者となっていないクルド人が、そもそもやっとのことで繋がっているイラクを放棄する過程を引き起こすだろう。

この観点から、万一トルコ政府がイラクの分裂を危惧しており、「クルド人の独立」がイラクの分裂を引き起こすと考えているのなら―発言や態度がそのことを示しているのだが―、バグダッドの中央政府に「クルド人の大統領」がいることや、イラクを対外的に代表している高官の中にクルド人がいること、つまりクルド人がバグダッドにおける権力の分配においていい「割」を占めていること、また北(イラク)で「自治政府」を持っていることにメリットを見出すべきであり、支持すべきである。クルド人が「連邦国家イラク」に「統合」されることは、トルコにとって理にかなった、自国の利益に資する最適な結論である。

イラクにおいて水面下であれ「演じ手(=実際に手足となって行動する人)」を持たずして、いかなる国も中東での「影響力の持ち主」にはなれない。トルコをイラク経由で中東での「影響力の持ち主」にする役目を、スンナ派のアラブ人には任せられない。なぜなら彼らは「イラクという等式」において数の上で弱小で、「テロと暴力行為の担い手」としては強力な勢力だからだ。その上、彼らは原理主義政党や「アラブ民族主義」の監督下にある。シーア派のアラブ人はといえば、大部分が「イランの影響」にさらされており、トルコの「政治文化」からはかなり遠い場所にいる。

トルコが、イラクで何をすべきで何をすべきでないかは明らかである。(為政者たちの)目を盲目にしている棒と、頭の中に何十年とたまった、自国民をも信用しない旧態依然の考えを取り払えば...

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:10675 )