Ergin Yildizogluコラム:「重要なのは変革することである」、しかし・・・
2007年05月31日付 Cumhuriyet 紙

そうだ、マルクスが強調したとおり、「これまで哲学者たちは世界をただ解説してきたにすぎない。重要なのは世界を変えることなのに」。しかし、我々が変えようと志す世界を全体として「考えることができなければ」、変革のチャンスも大きく減少する。さらには変革どころか、改めて現況の強化に貢献してしまうことがある。

重要なのは「経済」だが、しかし・・・

コルクト・ボラタウ氏が5月27日の記事で「我らが世界の現状」を赤裸々に提示している。「支配階級の課題は、資本の無限支配に対して過去に設けられた全ての制限をひとつひとつ取り払うことだ。この課題は国際資本との強い協力体制のなかでかたちづくられた。これまで与党となった諸政党も皆、この目標に対するこだわりは同じだ。前政権、ならびに現在の国民議会を代表する大政党は皆、経済・社会分野における資本計画の忠実な代弁者になった。政府は異なっても、政治は同じなのである」

この「同じ」政治が国をどんな状態に至らしめたか、チュルケル・ミニバシュ氏は、月曜日の記事で非常に暗い印象を与えるデータを使って提示している。社会の大半、特に女性や青年にひろがる貧困化、失業、生活水準の低下だ。

また同じ月曜日に別の評論家ファーイク・オズトラク氏が「国際投資家は基礎的財政黒字を達成するため、国民総生産の1%から1.5%程度の歳入増加策を話題にし始めている」と伝えた。こうして来年度、国民総生産の1.15%が国民の財布から抜き取られて国外に送金されることを我々は知ることになった。ボラタウ氏が示した課題の一部であるこのニュースは、ミニバシュ氏の予測をさらに上回ることを示している。

状況がこうであるなら、「有権者はこの状況をもたらした人たちにではなく、この現実を明らかにした人々に投票し、7月23日に新たな世界が始まるだろう・・・」しかし、知識が行動に直結するわけではないのだ!これらの現実をいくら訴えても、「何か」が民衆に自らの利益に反する行動を続けさせるのだ。問題はまさにそこにある。
これらの現実を解決することや、「民衆」が自分達の課題を自覚することを妨げるように文化的環境が形成されているのだ。

一般的な資本関係、個人的な新自由主義は経済だけではない、この経済のもとで生活している人々の個性を形成している。それはバスクン・オラン教授のように社会主義左派の議員候補になろうと目指している知識人に、社会主義左派の全歴史を否定させ、突如「占領がなければ帝国主義はありえない」と言わせるほどの文化的支配力をもっている。

トルコでは特に1990年代の後半以降、このプロセスに新たな様相が加わった:政治的イスラームだ。政治的イスラームは、新自由主義が市民社会にもたらした破壊を下敷きにして、市民社会(家庭と国家の間の領域)を占拠し始めた。そして公正発展党政権でも政府の助けを受け市民社会は分子レベルで変化し始めている。今日、民衆の課題には、経済的利益だけでなくその利益について考え、行動することをも妨害する新自由主義と政治的イスラームの文化的支配からの脱却が含まれる。

民主主義?それともクーデター?「ありがとう、結構だがいらない」

もう一つのアプローチは、もっともなことなのだが、「軍事介入」の危険性におびえている。「我々は呼吸したいのだ。忘れないで欲しい。「我々」(筆者註:中流階級を指す)が呼吸できる唯一の環境は民主主義だ。そして国が呼吸できる唯一の環境も民主主義だ。」

このアプローチは、なによりもまず、この「民主主義」というものが、近年、「民衆」の生活環境を、経済的、文化的、そして化学的(Co2やメタンガスによって)に汚染するという関係に相互理解をもたらす手段であると見ていない。

これは、平等や国家独立の原則を排除し、搾取や帝国主義的思想を拒絶し、そして市場との関係とともに「生活世界」を間接的なものにし、そしてまた公正発展党政権下で主権が国民ではなく神にあると信じ、社会にこの信仰に適した「真理の体制」を確立しようとする考え方で、政治的イスラーム政権樹立を可能にするタイプの「民主主義」なのだ。

無論、軍事的独裁がこの「民主主義」の薬ではない。しかし社会を「(この)民主主義か軍事体制か」という二項対立に陥れることは、「生活世界」を繰り返し汚染しつづける社会経済的構造や、政治的イスラームの発展に寄与する環境を擁護することを意味する。つまり別のかたちの民主主義を考え出すことを妨げている。

だからこそ、私は、「クーデターか民主主義か」という問いに対して(ジジェックが言った言葉をかりて)「ありがとう、結構だが、いらない」と答えたいと思う。

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( 翻訳者:イナン・オネル )
( 記事ID:11035 )