各界の関係者、一時婚をめぐって議論
2007年06月02日付 Iran 紙

【社会部】内相は、結婚をめぐる若者の社会的困難を解決する一つの方法として一時婚〔訳註1〕の普及を挙げ、結婚年齢及び一時婚に対する社会の捉え方を変えるべきだと主張した。

 「ヘジャーブ:イスラーム政府の責任と権限」と題されたセミナーの第一回会合でプールモハンマディー内相は、結婚は人間にとって欠かせないものであると言及した上で、「イスラームは普遍的で完全な宗教であり、あらゆる行為や要請に対して解決策を有している。、〔イスラームが認めている〕一時婚は、若者が必要としているものに対して〔イスラームが提供する〕有効な解決策のひとつである」と語った。

 同内相はまた、「一時婚は単に享楽を求め、悪用するためにあるのでなく、社会的困難を解決するために一時婚を活用することも可能なのだ」とも強調した。

 このことに関し、コムの臨時金曜礼拝同師を務めるアーヤトッラー・イブラヒーム・アミーニーも昨日の金曜礼拝の説教の中で、「国は、若い男女が配偶者を選ぶためのセンターを設置する必要がある」と語った。

 同師は、配偶者選びにおいて若者らが困難に直面していることに触れて、「国の責任者は適切な措置をとり、配偶者選びのためのセンターを設置することで、問題の解決へ向けて若者を支援すべきだ。この種のセンターの設置は社会が求めていることであり、国の責任者はさまざまな障害を取り除いた上で、この計画を国内で実行に移すべきだ」と述べた。

〔中略〕

 その一方で、社会学協会のサイード・モイードファル会長は、「一時婚についての議論を提起することは必要だが、それは若者の結婚問題の解消のためだけではなく、国内の性的行動の秩序化のためにも必要だ」と述べる。

 同氏はまた、現在若者の自立年齢が高くなっていることに懸念を表明した上で、「いずれにせよ、一時婚に対する社会的需要が存在していることは紛れもない事実だ。一時婚によって〔未婚の〕若者以上に、一部の既婚者が直面する問題を解決できるのではないか〔訳注2〕」と述べた。

〔中略〕

▼ 通常婚への障害を取り除くべき

 若者の結婚や家庭をめぐる問題は、これまでつねにさまざまな層から反響を呼ぶテーマとなってきた。

 女性社会文化評議会のマニーレ・ノウバフト会長は、若者への一時婚の普及について、一部には若者たちに一時婚を奨励すべきだとの意見があることを指摘した上で、「私の考えでは、イスラーム社会における結婚の基本的な目的とは、家庭を築くことである。つまり、結婚の結果として家庭を築き上げることが、優先されているのだ」と述べた。

 同氏は家庭を築き上げるためには、期間が限定されない永続的な通常の結婚が必要だと強調した上で、「通常の結婚に対して若者らが直面している問題を解決するための道を切り開く必要がある。そうしなければ、家庭を築こうという志向は弱くなってしまうからだ」と述べた。

 ノウバフト氏は、西洋諸国では健全な家庭の不在がもたらす害悪について啓発運動がなされていることに触れた上で、「さまざまな研究や世論調査の結果、現在若者たちは通常の結婚をして家庭をもつことを望んでいる」と述べた。

 同氏はまた、「国の責任者たちには、若者たちに対して家庭を築くための道を切り開く責務があると考える。なぜならば、一時婚への道を開くことは、長期的視野に立てば確実に有害だからだ」と語った。

▼ 一時婚は通常婚の土台

 一方、国会の文化社会委員会のセイエド・モハンマド・レザー・ミール・タージォッディーニー副委員長は、通常の結婚によって実現されている家族制度をもとに原則を築く必要がつねにあると指摘した上で、「一時婚は通常の結婚へと至るための地ならしとして考えるべきだ」と語った。

 同議員はまた、一時婚は通常婚の傍らで活用されるならば、一部の若者たちが抱える問題を解決することも可能だとし、「一部の者がこの議論を提起する際、悲観的な見方をするのは、一時婚に関するイスラーム法学の法規定が誤った方法で活用されてきた過去があるためだ」と述べた。

 ミール・タージォッディーニー議員は、法的、イスラーム法学的、社会学的、心理学的な包括的研究を行い、この問題を法制化することで、一時婚をめぐる議論につきまとう多くの混乱や悪用を防ぐことができるとも述べた。

 同議員はまた、一時婚の悪用を防ぐための規則や制限は、司法機関や教育機関によって決められるべきだと言及した上で、「この種の結婚は、実際には経済的理由などから通常の結婚ができない人のための選択肢にすぎない」と認めた。

 同議員は、時代の要請に留意してこの分野における包括的な研究を行うことが第一に必要であり、その上で規則や制限を決めて適切な施行方法を考えることが必要だとも強調した。



訳註1:一時婚(ムトア、スィーゲ)とは、期間と婚資金を明記した結婚契約の一種で、期間を限定しない通常婚と対比される。このような結婚契約はイスラーム初期の慣行となっていたが、その後第2代正統カリフのウマルが禁止する判断を下したことから、スンナ派では禁止されている。しかしシーア派法学では合法であるとされており、合法的売春であると批判する声も一部にある。

訳注2:ここで語られているのは、「一時婚」によって、既婚男性が結婚制度を脅かす「不倫」を犯すことなく、「妻」とは別の女性と合法的かつ一時的な関係を持つことができる、ということを示唆していると思われる。イスラームでは4人まで妻を娶ることが認められているので、「一時婚」を活用すれば、理論的には男性は結婚制度の枠内で、「妻」以外の女性との一時的な性的関係を「婚姻関係」として持つことが可能である。

Tweet
シェア


現地の新聞はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:中根敦 )
( 記事ID:11071 )