Haluk Ozdalga 解説:新たな時代においてトルコを待ち受ける諸危機(2)
2007年08月21日付 Zaman 紙

昨日の記事において、7/22総選挙の結果がトルコに真の意味で、ある時代に跳ぶ機会を示し、:今後焦点を当てることが必要な3つの点がインフレの抑制、教育の努力、そしてEU加盟の目標が確かであることを示した。

 しかし、来たるべき時代において、上手く制御されねばならない危機もある。内部から生じる危機はより政治的に生じることが言える。軍、高等教育協議会、高等裁判所、といった官僚機構が異なった政治的政策に対し抵抗することが、この時代に完全に終息することを期待するのはおそらく現実的ではない。政権がとるべき最善の道は、民主主義そして法に基づいて行動することである。最大の懸念はクルド問題と直接、または間接的に関係するテーマから生じる。危機的な時代において議会内の野党勢力がどの程度民主主義と結びついているか、民族主義を扇動するか否かも重要になるだろう。クルド問題改善に向け一歩を踏み出す一方、和解に向けた方向性も守られねばならない。

 一部の真剣な解説者達は、公正発展党(AKP)の基盤の大部分が「ミッリー・ギョルシュ」
に結びついており、その基盤から生じうる反発のため、党執行部が考える程度で改革のためのプログラムを採用できないだろうということを述べている。この主張が暗示する結果は、党は示したプログラムを実行できないであろうこと、そして深刻な分裂が起こることである。しかし、実際、そのような危機があるとは言えない。何故なら第1に、件の解説者達の仮説は真の観察に基づいていないように思われるのだ。AKPの支持基盤は今日大部分が保守層である;しかしかなりヘテロ的であり、非常に様々な政治的路線からやって来た、そして地域毎に非常に異なる特性を有している。これら全ては古典的な大衆政党の性質である。第2に、7/22総選挙の結果により党首は今や大変な力を持つ時代を生きており、彼が正しいと考えるプログラムを実行するにあたって内部から障害が来る可能性は殆どない。現代において深刻な危機は失業問題から生じるであろう。失業率の低下は単に社会正義や国民経済に留まらず、政治的安定のためにも重要である。高い失業率は、民族主義、大衆迎合そして大胆なことを言う政党や、政治的不安定を生み出す最も強力な栄養源の1つである。そのため、来るべき時代において配慮する目標の1つは失業率の低下である。雇用の増加の最も基本的で永続的な方法は、やはり昨日述べた2つのテーマから生じる:インフレを下げ、安定や投資を呼ぶ雰囲気が保証されることと共に、あらゆるレベルにおける教育の重要性。しかしこれらに加えて、積極的に労働力市場向けの政策を取ることやKOBI(註)への支援も含め、なしうる他のことも沢山ある。

■最も深刻な危機は対外関係から生じる…
 来るべき時代において安定を破壊する最大の危機は対外関係から生じると言えよう。トルコに影響を及ぼしうる海外の深刻な経済危機がいつ、そしてどのように起こるかを予測することは不可能である。しかし予期される、更に、先週始まったように見られる重要な発展、地球規模での投資の可能性を追い求めた資本総量(流動性)の縮少。
 これの重要な理由は、第二次大戦の後、西洋で見られた高出生率の時代に生まれた人々が退職すること、そして基金に蓄えられた資金が引き出され始めるであろうことだ。予想では、このために起こる証券等の現金化の流れは2010年頃起こると考えられる。起こりうる危機の程度やトルコにどの程度影響するのかを予測するのは難しいが、この資金の緊縮は大きい可能性がある。トルコがこの問題にきちんと対処する方法は、やはりインフレを抑えて安定を保証し、西洋資本に留まらず、成長著しいロシア、アラブ、中国、インド資本がトルコの市場で増えることである。

 対外関係は恐らくトルコにとって最大の危険を抱えており、そのため、制御されることが必要である。合理的な分析は、米国とトルコがユーラシアの地理上において非常に多くの共通の利益をもっていることを示している。このため、1990年代に生じた近い関係は指摘される。しかし、新保守(ネオコン)と称される極右傾向がワシントンの外交政策に影響を及ぼすと共に、トルコ―米国関係において問題が見うけられ始めた。そして、この影響が続く以上この状況は続くように思われる。極右の最大の関心の場である中東においては今日イラク、イラン、レバノン、ガザ、パレスチナ―イスラエル紛争、も含め、いかなる問題においても米国とトルコ間で強力な協調関係にあるとは言えない。トルコの観点からは異なった規模で重要性を持つこれらの問題のうちの一部は、近い将来において深刻な問題を生じうる。これを口実に、AKPが世俗主義体制に結びついていることを疑問視する外国からの批判の大部分が、米国の件の極右勢力から生じていることは注意を引く。しかし、それらの勢力がトルコや他の地域における世俗体制や民主主義に関して本心から疑っているわけではないのを我々は知っている。そのため、この種の批判の多くは、アンカラの外交政策、特に独自の中東政策に起因する不満の結果であり、それを政治に影響させる努力として見ることが出来る。

 イラク戦争がどのように終結するのかは誰も分からない。しかし、いずれにせよ、北イラクの大地がトルコを襲う者達にとって、ある背後の基地、象徴的な支援基地として使われることは絶対に認められない。トルコはいかなる方法を用いても、この状態に終止符を打たねばならない。PKKのこの地域における存在に終止符を打つことについて米国の示す明白な無関心や継続的になされる様々な言い訳は、結果として大きな危機をもたらしうる。中東問題に関してトルコを指導し、交渉の駒として使う意図は米国が、PKKのこの地域における存在を認めることとなるだろう。もしそのようなことになれば、トルコにとっても、また米国にとっても非常に危険な状況である。

 トルコにとって別の危険性を孕んだ問題はイランの問題である。近頃、米国の中東政策のかなりの部分がイラン問題に関して実施されていると言える。現ワシントンの政権がイランの核関連施設に対し空爆を仕掛けるのであれば、それは大統領選挙が公式に始まる2008年2月以前である必要がある。このような変化はトルコ―米国関係の改善にプラスとならないように、害をなしうる不安定そして混沌の状態を生むことは確実である。これのみならず、別の危機の蓋然性は米国のあらゆる外交上のそして可能な軍事作戦にも関わらず、イランが核兵器を保持するのに成功することである。もしこの可能性が現実のものとなったら、米国は件の武器が誤った手に渡り、誤った使い方をされることには大きな代償が必要となることを強調して、イランと妥協する可能性がある。テヘランの変化と柔軟性に関連して、こうした妥協は非常に多くの予想外の出来事をも引き起こしうる。イランに対する防衛を保障するものとして、米国によるトルコの核武装が提案されるかもしれない。トルコはこの申し出を受け入れぬならば、戦略的にこの地域から消されるだろう。受け入れれば、米国の地域における戦略的担保になってしまう。どちらにせよ、トルコを待ち受ける重大な結果はありうる。もしくは、トルコが自ら核兵器を保持せざるを得なくなるかだろう。どちらにしてもリスクの高い2つの選択肢以外の可能性は、トルコのEU加盟国である。こうなったときに獲得される政治的保障は、トルコが自ら核開発する必要性を与えないだろう。

■AKPは長期間政権に留まれるだろう
 上で見た機会が上手く評価され、リスクが上手く制御されることは、AKPがこの先しばらく政権に留まる結果を生むだろう。この点に関して、AKPのチャンスを増やす幾つかの追加要素も示すことが出来る。第1に、野党の弱体化と苦境。第1野党である共和人民党(CHP)が指導者及びイデオロギー的問題を抱え、近い将来にこれを乗り越えることは奇跡がない限り困難である。何故ならCHPの諸問題は当初考えられたよりもずっと深く、複雑だ。MHPが政権担当の選択肢となるためには、かなり包括的な政治的プログラム及び構造的旋回が必要である。しかし、これは全く容易ではない。何故なら、MHPの指導者はこのような政治的旋回を試したいと思ったとしても、一部の人々がAKPを指して言った「地区の圧力」問題が、まさにその状況で出現する可能性がある。党内及び基盤において影響力のある理想主義者―民族主義者のグループの反発は、大きな障害となろう。

 AKPにとっての第二の有益な要素は、世俗主義体制に反対するイスラーム主義者の政党であるという批判がもはや説得力を失ったことである。この進歩は党により幅広い潜在的な支持層を獲得させた。これに関連して最近ますます頻繁に言及される主張は、AKPはトルコを徐々に「穏健なイスラーム国家」にすることを望んでいる。この言葉はしばしば良い意図と共にある知性の混乱を、しかし、より意識的な形で曖昧さを生み出し政治的利益を得る望みの結果である。トルコは元々イスラーム国だ。同時に古く、そして穏健なイスラームの伝統の上にある。その意味では単に今日に留まらず、1000年にわたって「穏健なイスラーム国家」だ。しかし、もし暗示されるトルコにおいて国家や政治的秩序がイスラームの穏健な解釈より生じて規則に拠るのであれば、これにはいかなる兆候も証拠もない。世俗体制の健全さの上にある;即時の変化も、ゆるやかな変化も有り得ない!

 AKPにとっての第三の有益さは、昨日述べたように、3~4%の水準でインフレ率を抑える目標が実現していることであり、この結果が明らかになることだ。インフレの抑制は大量の、そして安価なローンの重要な要素の1つだ。会社の投資のため、家族は住居や消費のため、以前は見られなかった量のローンが使用されるだろう。債務を負った、ローンを使って長期間投資を行い、そして失うこのグループはもはや限られた層ではなく、社会の幅広い参加となりうる。ますます増えるであろうこの層は安定が破壊されることを望まない、破壊する人々に罪を宣告する、安定及び民主主義の保険となるだろう。政治はもはやこの層の要求にも耳を貸す必要があろう。この変化は、おそらくそれを最も上手く指導したAKPの利益となるだろう。安定の恩恵が広い層に広がること、単に一部の人々にとどまらず、教育した結果が皆の上にもたらすだろう。政権が無責任な決定をすること、野党が緊張状態や危機をもたらすこと、大胆な政治屋達が大衆迎合的な政策で票を集めること、軍が書簡により政治介入すること、これらがますます困難になるだろう。

AKP国会議員(アンカラ選出)

(註)KOBI…小及び中規模の経営の総称。250人以下の労働者を雇用し、年間の純売り上げ高もしくは財務のバランスシートが2500万YTLを越えないものを指す。(トルコ語版ウィキペディアより)

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( 翻訳者:関口陽子 )
( 記事ID:11706 )