Can Dundar コラム:穏健イスラムとアメリカ②
2007年09月27日付 Milliyet 紙

こんなふうに、マレーシアについて、より正確には「穏健イスラム」についての議論の起源を解き明かそうとしていたのだった。
月曜日(ママ)のこのコラム欄で私は、アメリカの外交政策を左右する影響力をもつ組織、ランド・コーポレーションの過去のレポート群について紙面を割いた。そこでも明らかになったように、ランド・コーポレーションは1990年代の初頭以来、ワシントン[アメリカ政府]に、原理主義勢力に対しては、反米路線をとる世俗主義勢力の代わりに「穏健イスラム勢力」が組織化するのを支援するよう提言している。
彼らが自分たちの思想を広められるよう、学校や研究機関、ウェブサイトの開設を物質的に支援することを求めている。
同組織は今年もレポートを出版し、この問題について今後実施されるべき具体的なロードマップを描いてみせた。
2007年3月26日付、全217ページのこの最新レポートは、「穏健イスラム・ネットワークの構築」と題されている。
読んでみれば、誰でもマレーシアに関する議論がどこから出てきたのかより良く理解できる。

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エンジェル・ラバサ、シェリル・バーナード、ローウェル・H・シュワルツ、ピーター・スィクルの名を冠したレポートは、まず冷戦時代に関心を向けさせている。
当時の脅威は、核兵器を保有したソ連が主導する共産主義だった。
アメリカは、共産主義に対抗するため、反共の労働組合、学生団体、出版機関、そして政党に対して物質的な支援の雨を降らせた。1950-60年代には、アメリカの資金的、イデオロギー的支援によって力を蓄えたこれらの組織が、社会主義の足元を掘り崩すことに成功した。
ランドによれば、今日の脅威は「テロ行為によって西洋を攻撃するジハード運動・・・。」
レポートはここで、イスラムと西洋の間の「文明の衝突」が生じているのではなく「伝統的なワッハーブ派イスラム主義者と穏健なムスリム」との間の内紛が生じている、との分析を行っている。西洋がこの紛争に「外部の立場」で介入するのは実を結ばないであろうが、穏健なムスリムを支援することは可能であろうと明記している。
冷戦期のソ連の拡張主義に対して実施されたように、穏健なムスリムのネットワークを拡大するために「マーシャル・プラン」型の支援プログラムを実行に移すよう提言している。

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レポートでは、スーフィーとの連携の可能性について触れる際に、トルコとマレーシアの名が[差異はないものとして]一緒に言及されている。
では、支援されるべきなのはどういう人々か?
ランドのリストは、次のとおり。
①リベラルで世俗的な学者と知識人。
②若手の穏健なムスリムの学術研究者。
③社会的リーダー。
④女性運動のリーダー。
⑤穏健な新聞記者と作家。
こういった活動がイスラム諸国でではなく、西洋に暮らすムスリムの間で開始され、そののち他の国々へ広められるよう薦めている。

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レポートの中で言及されている穏健イスラムのリーダーのひとりがフェトフッラー・ギュレンである・・・。
ギュレンが「穏健で現代的なスーフィー的イスラム」を代表していることが明言され、以下のように述べられている。
「ギュレンはキリスト教徒やユダヤ教徒と対話する試みを端につかせた。[彼は]二度にわたりバルソロメオス総主教と会談した。1998年にはローマで法王を訪問し、イスラエルのラビのトップの訪問を受け入れた。」
レポートによれば、ギュレンは「国家がイスラム法に依拠することには反対している。イスラムの規定の多くが、統治よりも人間の私生活に関わるものだと主張している。ある信仰の義務を社会全体に強制することはできないだろうと主張している。」
「[ギュレンは]民主主義がイスラムと、そして共和制の思想がイスラムの「シューラー[合議]」概念と、それぞれ一致するものだと確信している。様々な思想を厳格に統制するあらゆる権威主義的体制に異を唱える。イランとサウジアラビアの体制を批判している。寛容の精神に基づき、狂信主義とは相容れない『アナトリア型イスラム』という彼の解釈は、アラブ人たちのそれとは異なっている。」
この最後の[「アナトリア型イスラム」という]特徴は、レポートの中で、同時に短所でもあると強調されている。
「ギュレンは『トルコ型イスラム』を主張しているがゆえに、トルコ人大衆の枠を超えてプロパガンダを行うことは困難な可能性がある。」

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70年代、人は、給料を誰がルーブルで貰い、誰がドルで貰うかのを気に掛けたものだった。
いまや、人は、アメリカが「穏健イスラム・ネットワーク」を構築するために物質的に支援している知識人、学術研究者、社会的リーダー、新聞記者、そして作家[が一体誰なのか]をひどく気に掛けている。

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:12029 )