Mehfi Egilmez コラム: 加熱する「1ドル=1新トルコリラ」議論に「待った」
2007年10月02日付 Radikal 紙

先週は、1ドル=1新トルコリラについて様々に議論されたのだった。[そのような議論では]この[1ドル=1新トルコリラで]等価になるという可能性について最初に言い出した人間としての私の発言が、時に正確に、時に誤って引用されていた。まずは、2006年の頭と2007年の半ばに、私が述べていたことが何であったのかをこの場で改めて要約し、その上で、現時点での私の見解を明らかにしたい。

2006年1月31日付の『ラディカル』紙に掲載されたコラム「新トルコリラ高にはなるものの」で、私は次のように書いた。「『ヴァタン』紙のオウズ・カラムクは一群のエコノミストに一連のアンケートを送付して、今年の見通しについて尋ねた。私もその流れにしたがって、様々な問題について自らの見解を明らかにする一方、幾つかの根拠に基づいて、年末には1新トルコリラ=1.2ドル【ママ 「1ドル=1.2新トルコリラ」の校閲漏れと思われる:訳者】あたりに(多少の誤差はあるものの)なると予測される、と表明した。そして、この見解が日曜日の『ヴァタン』紙のヘッドラインになった。実際には私の見解の詳細の幾つかは記事のなかに載っていたのだが、題名だけを読んでその下にある本文を読まない方々が誤解しないように、ここで、改めて私の意図するところを明確にしておきたい。まず、より新トルコリラ高が進むだろう、との私の見解の根底にある仮説について列記しておこう。①世界、特にアメリカで経済危機が発生しない。②原油価格がこれ以上上昇しない。③中東地域で新たな危機が発生しない。④トルコで危機が発生しない。」当時、私が書いたのは上の通りである。為替レートは2006年の5月初めの時点で1ドル=1.3新トルコリラの水準にあった。

そう言っているうちに、6月から7月にかけて世界規模の危機が発生し、この危機はトルコにも影響を及ぼした。つまり、仮説にズレが生じたのである。[結果]1ドル=1.4新トルコリラの為替水準で2006年は暮れた。仮に危機が起こらなければ、新トルコリラ高は進み、1ドル=1.2新トルコリラの水準になる可能性は大であった。

2007年7月24日付けの『ラディカル紙』に掲載されたコラム「1ドル=1新トルコリラ」でも、私はこんなふうに書いたのだった。「目下、公正発展党は大統領選挙の問題を抱えている。先に中央銀行総裁の選出と、[所期の]結果を得られなかった大統領選挙双方のケースで示されたのとは別のアプローチによって、公正発展党が今度の[大統領]選挙をうまく乗り切ることができた場合には、短期間のうちに、経済のスーパー・ストラクチャー(上部構造)に生じる急速な変化を我々は目の当たりにすることになる、と思われる。この変化の前兆は、実のところ、[総]選挙前から現れはじめていた。選挙結果がこのような形になるだろうとの予測の上に立った投資家たちは、単独政権に投資する構えをあらわにした。今後、新トルコリラ高になると予測することは決して難しいことではない。もしも大統領選挙が問題なく終わり、国外でも危機が発生しないとすれば、今年中に1ドル=1新トルコリラの為替水準になるのを我々は目にできるかもしれない。[そのような展開になれば]株式市場も様々な新記録に向かって一目散に進むだろう。」このコラムでの仮説も外れた。このコラムの後の8月には世界的な危機が発生し、大統領選挙はといえば、上のコラムで私が意図していたような意味で「問題なく」過ぎた訳でもなかった。にもかかわらず、新トルコリラ高の傾向は続き、2006年時点の予測をほぼ9ヶ月遅れで現実のものとした。

エコノミストの様々な予測は、彼が立てた様々な仮説を含めて理解されるべきだ。どんな経済学モデルも一連の仮説に支えられて構築されるものである。仮説抜きの予測は、経済学的予測ではなく、占い稼業である。仮説が外れればモデルにはズレが生じるだろう。私の予測は外れ、私が立てた仮説とはズレてしまった。最初の年に私が予測を公にしてから5ヶ月後には危機が発生した。危機の前には新トルコリラ高が進んでいたが、危機の後には新トルコリラ安に進み始め、1ドル=1.2新トルコリラではなく1.4新トルコリラになったのだった。2年目も、私が予測を明らかにしてから1ヵ月後に危機が起こった。現段階では1ドル=1.2新トルコリラの水準にある。仮に危機が起こらないとすれば、かなりの可能性で為替水準は一層のリラ高になるであろうし、年末になれば、私の予測した水準に近づくはずである。

1ドル=1新トルコリラになる可能性はあるだろうか?世界で新たな危機が起こらず、トルコにおいて政治的緊張が増大しない場合には、あり得ることだ。外国投資家の持ち込んだ資本を2年半で倍増させるだけの利率と為替環境が存在するこの国では、こんなことは、ごく当たり前だ。つまり、トルコへの通貨流入はいま暫く続く。

1ドル=1新トルコリラで等価になる、というのは予測しているのであって、[そうなると]アドバイスしている訳ではない。つまり、アドバイスしているのだと受け取って、それを頼りに各々の資産形成をしようとなさる方々は、全くもって各々の選択に従って行動されますように。なぜなら、私は短期的にはこのような為替見通しを立てているものの、同時に、中長期的には世界的な危機が続くであろうし、この為替水準を当てにして中長期的な行動に出るのは大間違いだと考えておりますので。

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:12063 )