Ismet Berkan コラム:バイラムを喜ばしく迎えられないこと
2007年10月12日付 Radikal 紙

今日は私にとっては「シェケル・バイラム(砂糖菓子祭り)」だ。つまり、ある時期から普及した呼称「ラマザン・バイラム」ではない。じつは先日、ある友人が言った。(つまり彼の受け売りなのだが)、この祭りの本来のアラビア語名称は「シュクリュ・バイラム(感謝祭)」なのだそうだ。

おそらくラマザンのような「苦しい試練」の月のすぐ後にやってきて、神の恵みに感謝を捧げるためこのバイラムを「神に感謝する」と名付けるほうが適しているし、正しいということなのだろう、私はよく知らないが。

名称に関する議論は別にしても、二つの宗教的祭日は、呼称が「バイラム(祭り)」とされているため、喜びと興奮をもって迎えられるべきだ。しかし正直なところ、私は全く喜ぶような心境ではない。
皆さんは楽しくバイラムを迎えられていることと思いますので、ここでこのコラムを読むのを中断なさってください。というのもすこし皆さんを暗い気持ちにさせてしまう可能性があるのです。

いくつかの異なる理由で私は喜ぶような心境ではない。それらの第一は、米下院外務委員会によって一昨日(10日)承認されたジェノサイド決議に対する我々トルコ側の反応である。

我々が言っていることを要約すると、もしこの決議案が承認されれば、我々は2つのことを行う。
1)二国間の友好的関係を再検討する、
2)米国の軍事作戦に対しインジルリッキ基地を閉鎖し、アフガニスタンにおけるテロとの戦いへの支援を中止するなどの報復措置をとる。

これらはもちろん国家が互いに怒りを表明するときに行う類のことだ。「あなたにはこれまでのように協力的には振舞いませんよ」と我々は言い、ある意味、脅しているのである。まさにそこのところが私を不愉快にしているのだ。

我々は倫理的な観点に立って我々自身を弁護していない。「いいえ、それらはジェノサイドではないのです。死者数150万人というのは広く知られた間違った情報です」とは言っていない。いや言えないでいる。その代わりに、本来倫理的問題である議論を、脅迫、つまり(友好的)関係をご破算にするという脅しにすり替えているのである。

ブッシュ米大統領が姿を現し、記者会見を行った。そして「ジェノサイド」という言葉を使わずに、まず1915年に「今日のトルコの地で」150万人のアルメニア人が「集団殺害」の犠牲となったと発言し、その後には議会に次のように呼びかける。「この決議案が承認されることが無いようにお願いします。わが国にとって重要な同盟国との関係が損なわれます!」

これでよいのだろうか、トルコの外交は。「殺人者」と言うのは許しましょう、しかし「ジェノサイドを犯した者」とは言わせません。そういうことなのだろうか?


私を滅入らせる第二の問題は、昨日(11日)イスタンブルで出されたある判決である。
(2007年1月19日に)通りの真ん中で殺害されたフラント・ディンク氏は、皆さんご存知の有名な刑法第301条で有罪とされ、量刑が確定し、 「トルコ性を中傷したと記録された」最初の国民となったのだった。同様に、ディンク氏は殺害される少し前にも、ある外国の通信社に「はい、 大虐殺はありました」と述べたそうだ。この発言はほとんど全ての新聞に掲載され、それゆえ再度第301条にとわれ、捜査がはじめられたのだった。

ディンク氏が殺害されると、彼に関連する取調べは否応なく終了したが、彼の発言を報道した新聞各社のうち一社だけ、アゴス紙のアラト・ディンク編集長(フラント氏の息子)と社主のサルキス・セロプヤン氏に関する訴訟が起こされた。昨日、その訴訟が有罪で結審した。

ご存知のように、米下院外務委員会で承認された決議案の理由がまさにこれなのである。つまり、トルコで「大虐殺はあった」という発言が禁じられていることだ。
歴史をわれわれが勝手に解釈しているのだから、他者に言える言葉などあるだろうか!

そして気が滅入る第三のことは、周知の越境軍事作戦問題(対北イラク)である。目の前にある新聞、あるいはテレビのチャンネルを回すと、この問題が報道されている。私は自分の国にこれほど多くの軍事戦略家やテロ専門家がいたとは知らなかった。今回のことで学んだが。

国家の最も重要な安全保障問題が、ワイドショーネタに読みかえられ、踏みつぶされ消費されているということ、そして皆がこの軍事作戦が実行された場合、またはされなかった場合に、政治的、あるいは他の手段によっていかに利益を得るかを今から勘定に入れていることが、本当に私を滅入らせる。

こういった全ての悩みとともに、我々はバイラムを迎えているのです。

シェケル・バイラムおめでとうございます。ご家族や愛する方々とすばらしい日々をお過ごしください。

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:12138 )