Fikret Bila コラム:イラク問題で衝突するトルコとアメリカの国益
2007年10月26日付 Milliyet 紙

レジェプ・タイイプ・エルドアン首相は、トルコの干渉を望まないアメリカに、ブカレストで強硬姿勢を示した。
エルドアンは、「越境軍事作戦の決定を下すのは我々だ」と発言した後、「アメリカがイラクに何の用事があるのだ」と問い掛けた。エルドアン首相は、「テロと戦っている」と言ってイラクを占領しているアメリカが、テロ組織に向けたトルコの軍事作戦に反対することの矛盾を突いたことになる。(首相は)これだけでは満足せず、「戦略的パートナー」として「アメリカは我々とともに行動しているからだ。我々はアフガニスタンで一緒に行動している」と付け加えた。
アメリカが、国連を含めた誰の言うことも聞き入れず、(イラクへの)軍事作戦を行うときにも誰からも「許可」を得なかったのはその通りだ。このことはアメリカが唯一の超大国であることに基づいている。アメリカの行動は法に従っているといえば従っているし、従っていないといえば従っていない。または法の方がアメリカの行動の後にそれに合うように修正されている。力とはまさにこれなのだ...

■戦略的パートナーシップ

トルコの直面している状況に触れる前に、エルドアン首相が言及した「戦略的パートナーシップ」関係について見てみよう。
トルコとアメリカが戦略的パートナーであることは折に触れて語られるところだ。2国の間では少し前に、戦略的パートナーシップビジョン文書という名の下に覚書も締結されていた。
しかし、次の現実を忘れてはならないのだが、トルコとアメリカの間に戦略的パートナーシップは存在しないのだ。戦略的パートナーシップは、相互の国益が1対1、あるい1対1に近い形でオーバーラップする国の間でのみ考慮の対象となる。実際、アメリカの戦略的パートナーはイギリスとイスラエルであり、トルコはパートナーではない。
北イラクについて言えば、アメリカとトルコがイスラエルの「戦略的パートナー」になることは不可能だ。
北イラク問題で、アメリカとトルコの国益が互いに重なっている、あるいは接近しているというのはさておき、その逆に、衝突している状態にある。国益の衝突している両国が戦略的パートナーシップを構築する、あるいはパートナーとして行動することは論外である。実際、アメリカとトルコは、北イラク問題で大きく異なった立場をとり続けている。この(立場の)相違から出発して戦略的パートナーのような態度にたどり着くことは非常に困難だ。
トルコ政府が今日直面している困難とエルドアン首相の徐々に強硬さを増す発言もまた、この事実の表れである。

■クルド労働者党(PKK)へのまなざし

イラク・北イラク問題に対するアメリカとトルコの異なったまなざしは、今に始まったものではない。この(異なる)まなざしはアメリカがイラクの占領を準備した2002年と、占領した2003年にもあった。今日でも両国のまなざしは異なっている。
アメリカにとっての問題とその標的はイラク政府であり、サッダーム政権であった;トルコにはこのような問題や標的はなかった。トルコにとっての脅威は北イラクだった。
アメリカがイラクを占領し、サッダームを転覆させるための最も重要な味方は北イラクのクルド人グループだった。トルコはといえば、標的は北イラクのPKKとそれを支援するクルド人グループであり、(トルコが)支援を受けていたのがイラク政府だった。
この利害の衝突を回避することは不可能だった。実際、この衝突は(2003年)3月1日決議の際にすっかり表面化した。
3月1日決議がトルコ大国民議会によって否決されてからは、アメリカのクルド人に対する軍事的・政治的支援も顕著となった。アメリカは今日、バルザーニ(クルド自治政府首相)とタラバーニー(イラク大統領)を支援するに留まらず、PKKとそれから発展した組織をも利用している。他方で将来必要になる、という考えで行動している。
アメリカが当初からトルコ軍が北イラクへ侵攻することに反対し続けてきたこともまた忘れてはならない。3月1日決議の承認のためだけの限定的なパートナー関係の構築に同意し、決議が否決されるとこの態度も放棄した。
アメリカはトルコとPKKのどちらをとるか選択を迫られている一方で、天秤のPKKの皿の上にはバルザーニにもいると考えている。
こうした状況の下で、(アメリカが)トルコの怒りを鎮めるいくつかの小さな軍事作戦に許可を与えるか、トルコの血圧を抑えるいくつかの行動に出ることは重要であるかもしれないが、これらは問題の解決にもトルコ政府を満足させることにもならない。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12262 )