Taha Akyol コラム:経済発展とエスニック・ナショナリズム
2007年11月09日付 Milliyet 紙

前参謀総長のヒルミ・オズキョク陸軍大将は、本紙コラムニストのフィクレト・ビラと行った対談でエスニック・ナショナリズム(※)について、「軍事的な思考で全ての側面を見ることはできない」と語った。
これは(前参謀総長の)科学的な物の見方を反映した言葉である。現代において、「何でも知っている」知識人たちの時代は過ぎ去った。専門性が極めて重要である。軍人であれ文民であれ「全てを」知ることは不可能だ。
専門知識を結集させることで「学際的」アプローチをとることは可能であり、また必須である。
エスニック・ナショナリズム、あるいは何らかの社会的プロセスを軍事的視点からのみ、また経済的視点や政治的視点からのみ見てはならない... 一番よくないのは、専門知識を全く持たずに物事を粗暴な感情と紋切り型の視点で見ることである。

■経済発展の性質が問題

経済成長はエスニック・ナショナリズムを終結させるだろうという、世間に広まった1つの考えがある。(ところが)ヒルミ・オズキョク陸軍大将は、経済成長がインドで分離主義運動を強化したことを取り上げ、これを正しい事柄と位置づけた。
実際、民族主義であれ、他の政治的運動であれ、それらは一定の経済成長により生じるものだ。常にパンの悩みを抱えた社会は、優先順位をパンに置くだろう!
このため、政治的運動を先導する人々は全て、一定の教育水準や社会的地位を持つ人々だ。
さらに(スペインの)バスク地方の例に見られるように、高度な経済成長は「自信」を生み、エスニック・ナショナリズムを盛んにするほどだ!
カナダでフランス系の(住民が多数を占める)ケベック州はとても豊かであり、この(豊かさから生まれた)大きな自信により、わずか1、2パーセントの票差でかろうじてカナダに留まっている!
重要なのは、経済発展の性質である。バスク地方は、スペイン全体と貿易をしながらではなく、アメリカ大陸との貿易により成長した。北アイルランドとケベック州では、宗教の違い、学校の違い、さらに経済構造の違いといった要素が統合を妨げてきた。

■2つの正反対の流れ

トルコではと言えば、南東部の経済成長が(南東部と)国全体との商業的、社会的、人間的な関係を緊密にしている。私有財産や人口は互いを横断している。クルド系の中流階級はトルコの各地で財産を所有しており、彼らの大半は西部の県で生活している。この物質的な統合は歴史的一体性、宗教的一体性、親密な民族間関係といった精神的要素を強化している。
PKK系の政党が我が国のクルド系同胞の大半から票を得られないのはまさにこうした理由によるものだ。
しかし同時に、それとは別の系譜のものとして、クルド民族主義もまた根を下ろした。この運動を先導する高学歴の人々も、弁護士や医師のようなその運動の受け手もまた、クルド人であり、かつ(職業柄)トルコ全体との経済的、人間的関係の少ない社会階層である。
(クルド民族主義の担い手は)アンタリヤに別荘を買い、イスタンブルで働き、ディヤルバクルの総合産業地区に銀行からの融資で工場を立てたりフランチャイズを買うクルド人実業家を裏切り者と非難している。「クルド人の預言者は(ゾロアスター教の開祖)ザラスシュトラだ」というプロパガンダによって宗教を共にする絆を壊そうとしている。
つまり、問題はテロとの武力闘争で成り立っている訳ではない。これは「国家的統合」のダイナミズムと「分離主義による国家形成」との長きにわたる争いなのだ...
市場経済、民主主義、社会的活力、宗教、アイデンティティの尊重、党派の結束、集合住宅、協同組合、会社... こうした繋がりが極めて重要である。
だからこの問題を解決するには昔取った杵柄(きねづか)では十分でない。一からの、幅広い地平線を持つアプローチが必要である。


※エスニック・ナショナリズム(エスノ・ナショナリズム):多民族国家において各民族がそれぞれ民族自決権を有するとし、国家として独立することを主張する動き、またはそれを支えるイデオロギー。参考:ウィキペディア日本語版

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12421 )