Sahin Alpay コラム:宗教・信仰心と政党選好
2007年12月01日付 Zaman 紙

英オクスフォード大学によって出版されているハンドブック(Oxford Handbooks of Political Science)は、政治学に関わる人々の重要な情報の参照元の1つである。

今年出版されたシリーズ最新刊は「政治行動(Political Behavior)」についてである。最新刊には、ユルマズ・エスメルとスウェーデン人政治学者のトーリーフ・パターソンの共著による「宗教と信仰心(敬けんさ)の有権者の行動に対する影響」というタイトルの論文も掲載された。トルコ人有権者の価値観と傾向に関する研究で知られるバフチェシェヒル大学のユルマズ・エスメル教授は、私の知る限り、オクスフォード大学のハンドブックシリーズに貢献した初のトルコ人政治学者である。

論文のもしかすると最も重要な側面は、次の問いを取り上げたことである:農業社会から産業社会へ、農村社会から都市社会へ、伝統に依拠した権威から法的権威へ、宗教に依拠した教育から科学に依拠した教育への移行、進行する専門化、広がる政治参加などといった意味での近代化と、宗教の影響を排除することとして定義することができるかもしれない世俗化との間の関係について、我々は何を知っているだろうか?1970年代に入るまで社会科学者の間で広く受け入れられていた見解は、世俗化を近代化の不可分な一部とみなしていた。今日広まっている見解はといえば、2つのプロセスの間には複雑な関係があるというものだ。近代化はある状態や場所においては世俗化を、またある状態においては宗教の影響の強化を導く。エスメルとパターソンは、近年理論において生じている発展を非常に熟達した形で明らかにしている。この文脈で、宗教機関の国家や社会に対する影響の減退、また宗教的信仰の人に対する影響の減退という意味での、世俗化の3つの異なる側面を検討している。

論文が本来取り上げた問いは、(1991年に行われた)世界価値観調査や他の研究によって得られたデータに基づく、宗教的信仰の有権者の政党選好における役割(の分析)である。この文脈で行われた重要な区別は、独立変数として「宗教グループ」と「信仰心」を分けたことである。(例えばトルコでは「宗教グループ」としてのアレヴィー信徒が広く共和人民党(CHP)に投票していること、またスンナ派信徒の中で信仰心の度合いが高まるほど公正発展党(AKP)や至福党(SP)の獲得する票が多くなることを我々は知っている)。論文で指摘された一般的な傾向は、宗教も信仰心も、東アジアとスカンジナヴィアを除いて世界の多くの地域で有権者の行動に影響を与え続けていること、すなわち、例外はあるにせよ、一般的な法則として、信仰心の度合いが高まると、右派政党へ投票をする傾向が強まるということだ。

論文の中で、私が賛同しない2つの主張がある。そのうちの1つは、イスラーム諸国においてごくたまに自由選挙が行われた際、イスラーム主義、さらには過激なイスラーム主義のグループが大きな成功を収めてきたということだ。この例として、イラン、パレスチナ、そしてトルコが挙げられている。この主張に対して次のように言うことが可能だ:イランで自由選挙が行われるとしたら、誰が勝者となるかは分からない。(現に)いわゆるリベラル派のハタミ師は、大統領選に勝利した。創設時にあまり多くの支持者のいなかった(パレスチナの)ハマスの伸張は、「世俗派」ファタハの不成功の結果である。トルコでAKPが選挙に勝利したことは、何よりも「世俗主義」政党が深刻な不振に陥ったのと同様、AKPが「イスラーム主義を放棄した」と表明することにより特に経済と民主主義の領域で良好なパフォーマンスを示したことと関連している。エスメルの行った2007年選挙の研究の分析結果でもこのことが指摘されている。

イスラーム教が変化や近代化に抵抗しているという主張については:イスラーム教徒が大半を占める国々で、世界の多くの地域と比較して近代化が依然進んでいないことは、これらの国々の植民地支配の歴史やもっと後になって築かれ(いまだに多くが支配的な)世俗的-民族主義的権威体制、また「石油の裏切り」のような他の要素に目を向けずして説明することはできない。他方で自由主義的、民主主義的価値が、例えば東ヨーロッパ諸国と比べイスラーム教徒が多くを占める社会においてより強固であることは、エスメルも責任者に名を連ねている世界価値観調査の主要な調査結果である。

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:12582 )