犠牲祭を前に西岸とガザのパレスチナ住民間に深刻な経済格差
2007年12月18日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 西岸地区では犠牲祭の羊の購入が進む一方、ガザ地区住民は冷凍肉で代用

2007年12月18日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HPアラブ・世界面

【ラーマッラー:本紙ワリード・アワド記者】

 ここ数日、多くのパレスチナ人はイスラームの犠牲祭用の羊を購入するのに懸命になっている。特にヨルダン川西岸地区では、ハマースがガザ地区を制圧した後にサラーム・ファイヤード政権が発足して以来、経済的好況が訪れている。政府職員の給与が保障されるようになったうえ、2006年にハニーヤ首相が組織したハマース政権が国際的な経済制裁を課されて支払えなくなっていた未払い給与の一部も支払われたためである。

 10万人を超える政府職員の給与が行き渡るようになったことに加え、イスラエルが数万のパレスチナ人にイスラエル国内への出稼ぎを認めたこともあり、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ住民の多くが、今年は祭り用の犠牲獣を買えるようになっている。

 ベツレヘムの東に位置するザアタル村に住むアフマド・フサインさんは、去年の犠牲祭では子ども達に鶏一羽も買ってやれなかったが、今年は羊を買えたと語る。犠牲用の羊の値段は200~300米ドルと高騰しているにもかかわらず、西岸地区の住民の多くが今年は羊を購入し、犠牲に供される日まで“賓客”として大事に育てている。

 犠牲獣の購入だけでなく、ヨルダン川西岸地区の各市場は活況を呈している。ラーマッラーで衣料品店を営むウマル・アル=フルーブさんは市民の消費は目覚しいと指摘し、昨年は政府機関の給与が支払われなかったために商品が売れず、店に山積みされていたと語った。

 西岸地区の市場を生き返らせた要因の一つに、48年占領地(訳注:イスラエル国内のこと)に住むパレスチナ人たちが、治安が若干改善され、自治区へのイスラエル当局による入国制限が緩んだために、西岸地区を訪れるようになったことが挙げられる。彼らから見ると西岸地区の市場はイスラエル国内に比べて格安なため、イスラエル国内からやってくるこうしたパレスチナ人に対し、西岸地区の商売人たちが商品の値段を吊り上げる事態も起きている。そのためジェニーン県のカッドゥーラ・ムーサー知事は昨日、県内の商人たちに対し、買い物と親戚訪問を目的に入国を許されたイスラエル在住同胞たちに出来る限り手厚い措置を与えるよう訴えた。(中略)

 こうした一方、ハマース支配下のガザ地区住民はきわめて厳しい経済状況にある。ガザ地区に住むムーサー・アル=ミスリーさんは本紙に対し、犠牲獣どころかパンすら買えないと語る。ムーサーさんは本紙の電話取材に対し、ガザ地区の経済状況と、品不足から来る「狂気の沙汰」のような犠牲獣の値段高騰を訴えた。ガザ地区の出入り口が封鎖されたために市場に商品が入らず、ガザ地区の僅かな「金持ち連中」の需要にも応えられないほどだという。経済封鎖と貧困のため、ガザ地区住民は、冷凍肉で代用するしかない状況に追い込まれている。(中略)

 イスラエルがガザ地区の出入り口を全てコントロール下に置いているため、ガザ地区は慢性的な不況に喘いでいる。さらに今年6月にハマースがガザ地区を制圧してからは、政府の諸機関と商業活動が麻痺し、失業率も跳ね上がったため、住民は経済危機をより一層重く感じるようになっている。パレスチナ側の公式の数字によれば、ガザ地区住民の半数以上が貧困ライン以下の暮らしをしており、労働人口の少なくとも45パーセントが失業中だという。貧困の増加と制裁の強化を前にしてガザ地区の各慈善団体は、自分達もまた制裁に苦しめられているため支援の手立てが限られており、救援を求める住民の要望に押しつぶされそうだと訴えている。

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:12690 )