洞穴に46年間暮らし続けた男、人々の前に姿を現す
2007年12月15日付 Iran 紙


【事件部:イラン紙特派員モハンマド・ガムハール】46年前、失恋が原因で森へと姿を消し、それ以来洞穴に暮らし続ける男。彼は、村の家で人々と共に暮らすことよりも、いまだ暗い洞穴での生活を続けている。

 彼は当時、20歳に満たない青年だった。愛する少女を一目見ようと、毎日彼女の通り道に座っていた。彼女を見かけなかった日は、次の日まで眠れなかった。彼は何度か彼女にプロポーズしたが、そのたびに少女ネガールの家族に断わられるのであった。

 青年アズィーズはその少女を見ると心臓の鼓動が早くなり、歩くこともできずに立ちつくすのであった。そんなある日のこと、彼はいくら待っても彼女の姿を見かけることができなかった。日没とともに、彼は打ちひしがれて家へと帰り、翌朝日が昇るや否や急いで彼女の家の近くに行った。数時間が経ったが、またもやネガールの姿を見かけることはなかった。不安が絶えず彼につきまとった。彼は彼女を村中探し回った。しかし、誰もアズィーズに真実を告げる勇気はなかった。皆、そのことについては知らないふりをしていた。青年は日に日に気落ちし、引きこもるようになっていった。

 アズィーズのある友人が、彼の悲しみや無駄な期待を見るに耐えず、ついに真実を彼に告げた。「アズィーズちゃん、君の愛する少女は馬から落ちて死んだんだよ!」 彼にはそのことが信じられなかった。数日後の午後、愛する少女の死が確かだと分かると、かれは狂ったように動揺して森へと姿を消した。すぐさまこの多感な若者を見つけるために捜索が始められたが、何の手がかりも得られなかった。

 恋に狂った若者が姿を消すと、誰もが彼のことを噂した。ある者はアズィーズは失恋のために自殺したと言い、またある者は獣に喰い殺されたのだと言った。そして年月が過ぎ、少しずつ、消えた「恋する男」の事は忘れられていった。

 しかし、しばらく前の春のある日、〔ギーラーン州〕フーマンの《ジールデフ》という村の住民たちが日々の仕事に勤しんでいると、ふと一人の男を見かけた。彼は長くボサボサの髪をし、ボロボロに破れた服を着て、村に入ってきたのだった。この「異邦人」は村の住民や家々を、驚いた様子で見つめていた。子どもたちは彼を見ると、あるいは怖がって家へ走って帰り、あるいは親の側へ逃げて行った。この異邦人は本や映画に出てくるターザンのようだった。彼は木陰に座ると、突然詩を読み始めた。住民の一人が彼に食事を持ってきたが、彼はパンとヨーグルトをいくらか食べただけだった。食事をとった後、彼は何も話すことなく森へと姿を消した。その日からこの「ジャングルの男」は数日に一度村へやってきては、村人からパンとヨーグルトをもらうようになった。

 メフル月〔9月下旬~10月下旬〕のある日、ついに彼は沈黙を破って、自らの辛い人生について語りはじめた。彼はアズィーズであった。20歳で失恋のために家や家族を捨てて森へと姿を消した、あの若者だったのだ。アズィーズはいま、人生で66度目の秋を過ごし、〔ギーラーン州〕フーマンの《アーリヤーン》郷ジールデフ村の密林の中の洞穴で暮らしている。

 彼の友人の一人が、アズィーズが200メートルの洞穴の中でまだ生きていると知ると、彼のために木の小屋を建ててやった。しかし彼は村での暮らしを好まず、いまだ小さな洞穴での生活に執着している。アズィーズは写真を取られることを大変好んでいるが、数分間一つの場所にじっとしていることが出来ない。昼間は森や村をうろついているが、どこにいても日没とともに洞穴へ帰る。

 彼は次のように話している。「洞穴に住んで46年になる。もうあの場所に慣れてしまって、暗い洞穴を捨てることなどできないね。一人でいるのが好きなんだ。人と暮らすのは苦痛だよ。この46年間、温かい食事を取ることはなかった。昼、水を飲んで、森の果物や草を食べて過ごしているうちに、夜になるのさ」。

〔後略〕

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( 翻訳者:佐藤成実 )
( 記事ID:12693 )