Ismet Berkan コラム:軍事的安定と文民的解決
2008年03月03日付 Radikal 紙

もう随分と言い古されたことで、また、口に出すうちにその内容が失われてしまったことも中にはあるのだけれど、それでもやはりいくらかの主要なポイントについて繰り返しておくのがいいだろう。

①北イラクの対トルコ国境地域において、時計の針は1999年以前まで巻き戻った。同地域は、PKKによる[勢力]確立の企てのたびに、トルコ軍の軍事作戦展開の舞台となった。
②トルコ軍が、長年の空白期間にもかかわらず、季節や気象条件、状況を問わず、PKKに打撃を加えられるだけの、[PKKの]組織に深刻な損害を加えられるだけの潜在能力を、依然として維持していることが示された。
③かつても、トルコ国外でトルコ軍が「面的制圧」を行うことはなかった。今後も行わないであろうが、しかし[今回は]同地域でPKKが生き延びることは相当に困難である。
④それでも、PKKが軍事行動をとることは可能であろう。但しそれは90年代後半に駆使した戦術、すなわち、3-5名のグループに分割される限りにおいてである。PKKにとってのこの戦術最大の障害は、PKKから離脱するメンバーを統制するのがより難しくなってしまうことである。
⑤直近の軍事作戦によってトルコ軍は、PKKをカンディルまで撤退させた。空軍がカンディルまで出撃したのかどうか、無人偵察機やアメリカの衛星を通じて収集されるリアルタイムの諜報活動が同地域まで及んでいるのかどうか、といったことは、我々には知る由もないが、たとえ同地域まで及んでいたとしても、驚くにはあたらない。

***

これらは、私が考えうる限りの主要なポイントであり、トルコが分離主義的テロ組織に対して手に入れた軍事的成果である。これらの軍事的成果は安い買い物ではなかったが、それでもこれらの成果によって、一時なりとも、実質的な安定状況が確立された。
さて、このような安定状況は、「文民的解決」と呼ばれながら、しかしそれが一体どういうものかが十分に示されていない一群の解決の前途を開き、実施の機運を高めるような時機であることを我々に示している。
示してはいるのだけれども、昨日から『ラディカル』に掲載され始めたアンケート調査をお読みになった目聡い方にはお判りのように、意思を表明したトルコ人とクルド人との間に類似性が見られなかったことは言うに及ばず、クルド人同士の間や、ましてや同じ政党で職務を共にするクルド人同士の間でさえ、意見の一致や合意は見られないのである。
もちろん、[調査を通じて]表面化してきた要素というのは幾つかある。たとえば「平等な市民権」については決まってアンダーラインが引かれていること[→強調されていること]や、不平等の原因となっている幾つかの要素の廃止要求といったものである。たとえば、クルド語語禁止の撤廃や教育におけるクルド語の使用といった事柄である。
しかし、各派首脳たちが口にするこのような見解は、政治的局面において深刻な抵抗に遭っている。首相がディヤルバクルで語った「独り者が妻を離縁するのはたやすい(→事情を知らなければ問題は簡単に見える)」という一文に反映される感覚は、現時点の政権の問題の捉え方をも端的に示している。
とはいえ、おそらくこの問題にトルコが全力を傾けるべき時に、出口へと繋がる共通の道を、つまり、誰しもにとって少なくともその原則のところで合意できるような計画を明示できる可能性がある時に、そして、議会がこの問題について主導的な役割を担うべき時に、いま我々は生きているのである。
以前にも書いたが、まさにトルコの政治家たちがその手を岩の下に差し入れて危険を買って出る時機がやって来たのに、いま過ぎ去ろうとしている。
トルコの右派―保守派の政治家たちは、クルド問題に取り組むことと引き換えに、「西」では得票を失うだろうと信じ込んでいる。しかし、この問題が解決されることで、「西」での得票はより一層増えるはずだと私には思われるのである。


○ふたつの「西」Bati(バトゥ)
訳文で「西」と訳したのは原文では小文字ではなく大文字のBatiです。
ここには・・・
①トルコ「西」部=右派・保守系政党の票田
②「西」洋(ヨーロッパ)=EUの存在
という2重の意味を込めたコラムニストの意向を読み取ることができるように思われます。
(文責:長岡大輔)

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( 翻訳者:長岡大輔 )
( 記事ID:13289 )