Murat Yetkin コラム:迅速な進展が期待されるエルゲネコン捜査
2008年03月22日付 Radikal 紙

イスタンブル警察は、83歳のイルハン・セルチュクの家に朝4時半に突入して逮捕しなければ、朝一番の飛行機で国外へ逃亡し、犯罪の証拠を闇に葬るとでも思ったのだろうか?セルチュクは、警察によってここしばらく行われている「エルゲネコン」捜査の一環で、労働者党のドウ・ペリンチェク党首、元イスタンブル大学学長のケマル・アレムダルオールと同じく昨日逮捕された。

逮捕は、エルゲネコンと名付けられた捜査を行ったイスタンブル共和国検事のゼケリヤ・オズの指令により実行されたものと見られている。オズは、地下組織対策のようなトルコがひどく必要としている領域で職務を遂行するとき、疑わしい人物を逮捕し、尋問する権利を持つ。殊セルチュクに関して、2つの問題がある。その1つは、このコラムの初めに書いたように、逮捕の形式である。問題なのはセルチュクの年齢ではない。「47パーセントの票を獲得した政党は与党だから法的手続きはできない」ということと、「83歳になった人物だからできない」ということはほとんど同じことだ。法の前に人物と組織は平等であるとの立場に立てば、行政裁判所共和国検事のアブドゥッラフマーン・ヤルチュンカヤがAKPについて法律書に記された手続きを行うことと、ゼケリヤ・オズ検事がイルハン・セルチュクについて法律書に記された手続きを行うことは同じと考えられる。もう一度繰り返す必要があるなら、第1の問題はセルチュクの年齢ではなく、彼の健康に対する憂慮を引き起こす、納得し難い逮捕の形式である。

第2の問題は、ちょうどAKPについて起こされた裁判が社会の幅広い階層で(そう)認識されているように、イルハン・セルチュクの自宅が早朝からあわただしく家宅捜索を受け、逮捕されたことも社会の幅広い階層で政治的攻撃の一手として認識されたことだ。メフメト・アリ・シャーヒン法相は、もしかしたらこうした認識に気付いているために、「手続きは政治的ではない」と発表せざるを得なかったのかもしれなかった。

昨日、政府が野党を法的制限という方法で封じ込めを始めたのではないかという問いが浮上した。これはよい兆候ではない。共和人民党(CHP)のデニズ・バイカル党首は、警察組織内部の宗教を軸としたグループ化を暗に指し示しながら、AKP政府は自分の深層国家を作り始めたと非難した。「こんなことは許されない」と述べた。
これに対し、タイイプ・エルドアン首相は昨日バイカル党首をやり玉に挙げ、バイカルがAKP解党訴訟の訴状(の内容)を事前に知っていたとほのめかした。この暗示は、従って主席検事の行動が少なくともCHPや他のどこかに知られていたということを連想させることを目的としていたのだろうか?エルドアンは以前にも昨日も、自分たちについてどのような仕返しが行われるかについて知っていると語っていた。やはりエルドアンは、セルチュクを含む逮捕に対する反発を、地下組織との闘いやエルゲネコン捜査に不快感を持つ勢力の存在と関連付けた。

エルゲネコン捜査は奇妙だ。ある一面ではフラント・ディンク殺人事件や、行政裁判所メンバーのムスタファ・オズビルギン殺人事件、ジュムフリイェト紙の爆破を、ある一面ではススルルク・スキャンダルによってトルコ世論の注目を集めた退役陸軍准将ヴェリ・キュチュクを初めとする何人かの軍人・文民官僚(の事件)を根拠としている。逮捕された、あるいは身柄を拘束されている人々は、トルコで政府クーデターの更なる下地を築くために扇動活動を行ったという理由で罪に問われるだろうと言われている。

もちろんこの重い罪での訴追が公に裁判に反映するかどうか、またどのように反映するかはまだ分からない。なぜならこの間の期間にもかかわらず、いまだに訴状は明らかになっていない。
訴状がないということは、何か月も世間を席巻したソースのはっきりしないニュースが正しいものとして認識されるという結果をもたらした。訴状が明るみに出るのが遅れれば遅れるほど、捜査が勢いを失えば失うほど、地下組織捜査に関する社会の支持に影を落とすことをオズ検事も、エルドアンも理解しなければならない。
特にイルハン・セルチュクの逮捕のような事例が増えるなら、この影は大きく、濃くなる。

政府が内を向いて争っている一方で、グローバルな経済危機は深刻になっている。経済的なバランスが、トルコがコントロールできない外部の出来事の展開のために短期間で悪化すれば、このことが政治的バランスにおいても、トルコの地域における国益において大きな影響をもたらすことに注意を払わなければならない。アメリカのディック・チェイニー副大統領は、アフガニスタンから戻って月曜日にアンカラのこのもやのかかった天気(=政治状況)の中で、エルドアン、ビュユクアヌト、ギュルと会談する予定だ。読者諸兄なら、チェイニーはよく晴れたアンカラの天気と、もやがかったアンカラの天気のどちらが気に入ると思いますか?

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:13415 )