Ali Bulac コラム:国民主義者よ、イスラーム世界に対する「了解」を破るな!
2008年05月12日付 Zaman 紙

トルコ軍は国内の平穏を保つことだけで満足し、必要なときに戦ってこなかったと主張する人々がいる。この主張が正しくないことを、我々は1974年にキプロスに向けて行われた2度の進軍から知っている。共和国の建国後、トルコ軍は韓国で戦争に参加し、キプロスでも戦った。

だが、話がイラクやイランの順番に及ぶと、(トルコ軍は戦うことを)望んでいないことを明確にしたことを我々は知っている。この理由としては、前回のコラムで私が説明しようと努めた理由により、トルコにはアラブ人やイスラーム世界に対し、激しい戦闘に突入しないなどというような明文化されていない了解があることである。

先に挙げた了解を最初に破ろうとしたのはトゥルグト・オザル(元大統領)だった;オザルは(1991年の)第1次湾岸戦争でトルコがアメリカとともにイラクに侵攻することを望んだのだ。アメリカと文民側が(イラク侵攻を)強固に主張すると、軍にできることは1つしかなかった;責任ある地位にある最も高位の軍人の辞職であった。事実そのようになった。参謀総長のネジプ・トルムタイ陸軍大将は、躊躇することなく辞職した。トルムタイは、1994年に出版した回想録においてこの事件の顛末を明らかにした。次いでタンスー・チルレル(元首相)がしばらくの間、トルコはイランに空から攻撃することができるという趣旨のほのめかしを行っていたが、このときも将軍たちはこのような計画にはかかわらないという考えを暗に示した。3月1日書簡は、トゥルグト・オザルの誤りを繰り返す企てであったが、幸いにも全トルコが立ち上がり、オスマン朝から割って出た共和国の建国以来懸命に守ってきた了解が破られなかったことを示すこととなった。一番最近の例は、NATOがアフガニスタンへ戦闘要員の兵士(の派兵)を要請したとき、ヤシャル・ビュユクアヌト参謀総長がほとんど反射的に「我々にはアフガニスタンに戦闘要員として送る兵士は1人もいない」と言ったことである。

これら全ての出来事は我々に次のことを示している:
トルコは、西洋同盟の1メンバーであり、EUへの加盟プロセスの途上にあり、西洋世界と有機的な関わりを有しており、もしかしたら同盟の最も忠実なメンバーであるかもしれない。しかし、同盟と西洋世界に対しどのような約束事を実現させようとも、イスラーム世界と実際に戦闘状態に入ることを要請されることになるのなら、これを決して認めはしないはずだ。これは、(全トルコ国民)7000万人の了解である。なぜならトルコは、いずれ中東、あるいはイスラーム世界の方に戻るつもりなら ―というのもグローバルな要請と地域的な条件が徐々にこのことを必要としている状態なのだが― これを軍事的な占領によってでなく、「柔らかい力」によって行うだろう;家族の成員や親類縁者を時代の精神に適する方法と道具によって集結させるはずだ。トルコは占領者にもならないし、他国のための傭兵にもならない。何事にも相応しい時というものがあるのだ。

もしグローバルシステムが、(中東)地域に和平や平和、秩序を構築することを望むのなら、ガラス製品の店ほど値打ちのある地域に象のように飛び込むことはできないことを理解しているはずだ。パレスチナ、レバノン、イラク、それにアフガニスタンの経験が皆にこの真理を分からせている必要がある。アメリカは、トルコを主体性のある一同盟国として認識し、トルコにその考えを問い、無理強いすることなしに(トルコが)地域の内なるダイナミズムを重視しながら調整することに同意しなければならない。この現実をまずアメリカ、次いで公正発展党(AKP)とその外交政策の立案者、そして最後に「国民主義者(※1)陣営」が理解しなければならない。

「国民主義者」に注意しておかねばならない。どれほどAKPに対する政敵を装っていても、彼らが望んでいることはアメリカのお気に入りになることであり、3月1日書簡によってアメリカが成し遂げられなかったことをアメリカと結託して行うことである。その証拠は、国民主義者の長老がアメリカに送ったメッセージであり、確実に国民主義者を熱心に擁護しており、エルドアン首相に「ファシストのリーダー」を宣告したマイケル・ルービン(※2)の尽きることのない扇動である。「イスラモファシスト(※3)」という概念の生みの親であるルービンは、4月27日のe-通達を支持し、ネオコンたちによる(中東)地域に関わる作戦に十分な答えを出すことのできないAKPを転覆させ、代わりに国民主義者を連れて来て、トルコを地域に対する軍事力というポジションに追いやろうとしたがっている。ネオコンたちの目標の中に、12月の選挙の前にイランに打撃を与え、アフガニスタンを直接統治することがあり、これをトルコの軍事力を利用しながら実現させることを望んでいる。願わくば、ボスフォラス海峡の水の流れのように上からは急進的なアンチアメリカ至上主義者に見える我が国の国民主義者よ、水面下でアメリカ至上主義を展開してこの長い歴史を持つ了解を破ろうとしないでほしい。


(※1)原語は「ulusalcı」。通常、世俗的共和国の維持を最重要視する共和人民党(CHP)とその支持層のことを指す。
(※2)中東専門家。1971年アメリカ生まれ。American Enterprise Instituteレジデントスカラー。
(※3)関連記事:Türker Alkanコラム:アメリカの新造語「イスラモファシズム」(2006年8月5日 Radikal紙)

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:13803 )