エジプトでコプト教徒とイスラーム教徒が衝突
2008年06月02日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ エジプト南部の宗教間衝突で死傷者
■ コプト教徒数百人が保護を求めてデモ

2008年06月02日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【エジプト、マッラーウィー:本紙】

 エジプト警察とコプト・キリスト教徒のデモ隊との衝突で、昨日の日曜に少なくとも7人のキリスト教徒が負傷した。この前日には上エジプトの町エル=ミニヤ近郊の村で銃撃戦が繰り広げられ、イスラーム教徒1人が死亡、4人の修道士が負傷している。原因となったのはカイロの南方280キロメートルの位置にあるエル=ミニヤ県内のアブー・ファナ修道院に近い係争地をめぐる争いだ。

 イスラーム教徒の農民、ハリール・ムハンマド(42歳)が機関銃まで使用されたこの武力衝突で撃ち殺され、修道院の修道士4人も負傷した。修道士2人の負傷は発砲によるもの。エル=ミニヤ県の歴史的な修道院で起きたこのイスラーム教徒とキリスト教徒との衝突の翌日にあたる昨日曜日、カイロから南に300キロのマッラーウィーにあるコプト正教会司教座前には300人以上のコプト・キリスト教徒が集結し、次のような抗議のシュプレヒコールを繰り返した。「飛行機乗りのムバーラク大統領よ、コプトの心は煮えたぎっている、シェヌーダ三世よ、声を上げてください、我々はあなたに従います、あなたにわが血を捧げます」〔訳注:ムバーラク大統領は元空軍パイロット。シェヌーダ三世はコプト正教会の総主教〕。

 暴動の背景にはカイロから270キロ南のアブー・ファナ修道院の修道士と近隣の村に住むイスラーム教徒たちとの間で数年前から続き、今年始めに再燃した争いがある。イスラーム教徒の住民たちは修道院が敷地の周りに塀を築くのを妨害しようとしており、その土地は国有地であるにもかかわらず、住民たちは占有によって彼らの所有地となった土地であるとみなしているのである。

 そして二ヶ月前、アブー・ファナの修道士たちは役所から塀を建設する最終的な許可を得て、数日前から建設のための掘削作業を開始していた。これが近隣住民を作業の阻止へと向かわせたのだ。修道士の一人であるドマディウス神父が語るには、およそ60人のイスラーム教徒の村人が土曜日の夜6時に、20丁以上の自動小銃と棍棒で武装して、修道院を襲撃してきたという。

(中略)

 ドマディウス神父によれば、修道院への襲撃はここ7年で18回目であり、最近では2008年1月に起きていた。「それなのに一人も逮捕されず、われわれは毎回警察に訴え出ているのだが無視される」と神父は言う。

 治安筋によれば今回の事件の捜査では8人が逮捕され、そのうち一人は修道院の塀建設を請け負ったキリスト教徒の建築業者だという。彼は衝突の際にイスラーム教徒に発砲し、一人を殺害した容疑で逮捕された。

 今回の衝突は、コプト教徒が所有する宝飾店が襲撃されるという最近の二つの事件を受けて、宗教間対立への懸念が広がる中で起きた。一つ目の事件は先週の水曜日、カイロで四人のコプト・キリスト教徒が殺されたもので、二つ目はアレキサンドリアでの強盗事件だった。

 エル・ミニヤ県のアフマド・ディヤーウッディーン県知事は今回の衝突について、宗教的な背景はなく、個人的な争いだと過小評価し、テレビ会見で「隣人同士の争いであって、宗教問題ではない」と語った。

 エジプトのコプト・キリスト教は中東最大のキリスト教宗派で、信徒の数はエジプトの人口8000万人の6から10パーセントに達する。

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( 翻訳者:小林洋子 )
( 記事ID:14035 )