中央銀行と労働省の論争、激化:経済相代行、銀行の無利子銀行と投資銀行への再編を確認
2008年05月31日付 E'temad-e Melli 紙

【経済部】ここ最近、国内の銀行システムに動揺が走っている。各銀行を無利子銀行へと再編統合する草案が作成されたとの報道がなされる一方で、第九期政権関係者はこの報道を即座に否定し、誤報であるとしている。

 政府のこのような混乱した広報はいつものことであり、ある報道が否定されては、最終的にその根幹部分が現実のものとなるといったパターンができあがっている。この種の経済運営のやり方は、〔イラン経済に〕何らかの悪影響をもたらしている。

 ところで、第九期政権が抱える根本的な困難とは、同政権がインフレ抑制を政策の軸に据えるべきか、(最大の効果をあげた場合の話だが)失業問題の解決も可能な財政拡大政策に重点を置くべきかを判断しかねていることである。第九期政権内に存在する内部論争は、同政権内の2つの対立する派閥の立場の中に見出すことができる。

 一方には、アフマディーネジャードとモハンマド・ジャフロミー(労働相)がおり、彼らが推進する財政拡大政策は事実上、インフレ率の上昇をもたらし、2008年3月には、22.5%を記録している。もう一方には現在、イラン・イスラーム共和国中央銀行がおり、彼らは自らの本来の任務、つまりインフレ抑制を掲げている。

〔中略〕

 そのような中、政権関係者、なかでもアフマディーネジャードとモハンマド・ジャフロミーは、政府は財政・租税・関税を管轄し、中央銀行は金融や通貨政策を管轄するという役割分担にまったく理解を示そうとしていない。アフマディーネジャードは中央銀行の一部門であった通貨・信用評議会を解散させ、同評議会の責任を政府経済委員会にゆだねたのも、そのような理由によるのである。

 ジャフロミーはここ数ヵ月間、ベンチャー零細企業拡大政策の責任者として、零細企業への低金利融資の推進にこだわる姿勢を見せており、大統領を味方に引き込む形で、(インフレ抑制に効果のある)中央銀行による通貨引き締め政策に反対する立場を鮮明にしている。

 昨年、マザーヘリー中央銀行総裁は大統領に書簡を出し、ベンチャー零細企業支援策が初期の目標を達成できていないことに警告を発した。これに対して、ジャフロミーも中央銀行による総合監視政策案の提出を受け、同案に反対する姿勢を見せている。このため、同案は実施されることなく、さらなる検討を行うとして政府経済委員会に送られたままとなっており、今後同案がどのような運命をたどることになるのか、現在に至るまで不明なままだ。

 ジャフロミーは、中央銀行が提出した政策案は製造業・製造業従事者を狙い打ちにしたものであるとして、同案を緊急に見直すよう要求している。アフマディーネジャードもまた、同案を政府経済委員会に早急に送って〔同案の骨抜き、ないしは廃案に追い込むことを狙って〕いる。これに対して中央銀行は、同案は〔零細企業への融資を〕あまり強く引き締めるものにはならないと主張している。

 それだけではない。ジャフロミーはさらに政府を説得して、州知事が銀行専門家に代わって、ベンチャー零細企業の事業計画を審査するよう制度変更を試みたことさえあるのだ。その結果、第九期政権は事業計画の査定権限を、銀行の取締役会から州知事に移管させることを了承している。
〔※訳注:州知事は政府・内務相が任命するため、州知事には中央政権とつながりのある人物が就任することになる。なお、プールモハンマディー前内相がアフマディーネジャード大統領によって解任されたのは、州知事人事をめぐる対立があったとされる〕

〔中略〕

 さて、経済財務省広報部は今年のホルダード月7日(2008年5月27日)、国営銀行の再編と無利子銀行の創設に関する草案が作成されたとの報道を根本から否定し、誤報であるとしたが、その一方で、まさにその1日前、ホセイン・サムサーミー〔経済財政相代行〕はゴルガーン州において、各銀行に対し無利子銀行ならびに投資銀行への特化に向けて準備を行うよう求める発言をした。

 またサムサーミーは昨日、各銀行の一部支店を4〜5年間、無利子銀行と投信銀行に試験的に分離するとの発表を行っている。

 サムサーミーは、銀行の再編統合と構造改革の目的を、現在社会に流通している貨幣を製造業へと誘導することにあるとしている。経済相代行は、銀行の再編統合は銀行の構造改革の一部であるとしているが、その一方でマザーヘリー中央銀行総裁は、銀行再編案は政権内の一人または二人の人物によって作成されたものにすぎず、このような計画が承認されるようなことがあってはならないと述べている。

 テヘラン商工会議所のヤフヤー・アーレ=エスハーグ会頭も、次のように述べている。「この種の計画案が今後、〔十分な検討を経ずに〕急ぎ足で提出されるようなことのないよう希望する。もしこのような計画の実施を認めてしまえば、われわれの金融システムがいかなる運命をたどることになるのか、分かったものではない」。

〔後略〕

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( 翻訳者:大石容子 )
( 記事ID:14137 )