有名歌手殺害事件で録音テープが捜査の決め手に 刑務所の不動産王は無実を主張
2008年09月05日付 Al-Ahram 紙

■ ヒシャーム・タラアト・ムスタファーは収監後、極度の鬱状態に
■ 検察、実業家と元警察将校との会話の録音テープを聞く

2008年09月05日付アル・アハラーム紙(エジプト)HP1面

【カイロ:アフマド・ムーサー、ハーリド・アブルイッズ、ドバイ:ザービト・アウワード】

実業家ヒシャーム・タラアト・ムスタファー〔訳注:エジプトの不動産大手タラアト・ムスタファー・グループの社長で諮問議会議員。レバノン人女性歌手殺害教唆の容疑で逮捕・起訴された〕はマズラア・トゥラ刑務所の特別房に収監された後、心理状態が悪化しており、極度の鬱状態に陥っている。フサーム・アブルファットゥーフやマグディー・ヤアクーブといった同じ刑務所に収監されている実業家たちとの会話も拒み、一人離れて座っている。周囲との会話を拒み、イフタール〔=断食者が日没後に取る食事〕を少し口にするだけだという。

弁護士のほか、家族の一人がこれまでに接見に訪れている。刑務所に入った初日に、現在懲役刑に服しているフサーム・アブルファットゥーフ〔訳注:BMWのエジプト代理店の元社長。カイロ銀行の金を横領した罪で有罪判決を受けた〕がヒシャーム氏を出迎え、肩を叩いて「マアレーシュ」〔訳注:ここでは「大変だったな」といったようなニュアンスの口語表現〕と言った。するとヒシャーム氏は、自分は無実であり、法廷でそれを証明できると信じている、と答えた。この著名な実業家は囚人服を着て、規則や指示に従順であるように見えたという。

 司法関係筋が本紙に明かした所によれば、検察が提出した本事件に関する証拠の中でも、元警察将校ムフスィン・アル=スッカリーが録音した実業家ヒシャーム・タラアト・ムスタファーとの電話での会話に関するものは、本件を構成する主要なポイントの1つとみなされているという。個人が所有する電話や携帯電話の録音は法廷で採用される証拠とみなされるとの破毀院〔=日本の最高裁に相当〕での判例があり、その場合には司法当局から録音の許可を得る必要はかならずしも無く、スーザン・タミーム殺害事件でもこれが適応された。検察は録音テープを解析して、通信者の氏名、電話番号、通信時刻と会話に要した時間、受信者の身元とその電話番号を特定した。

 ドバイ警察の総司令官、ダーヒー・ハルファーン中将はドバイで開かれた記者会見で、「エジプト当局側との誠実かつ清廉な協力がなかったならば、スーザン・タミームさん殺害事件は風とともに消え去ったことだろう」と述べ、「エジプトの法廷で被告人二人が裁かれることは、UAEの法廷で裁かれることに相当する。我々はエジプト司法を完全に信頼しているのだから」と指摘した。

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( 翻訳者:勝畑冬実 )
( 記事ID:14677 )