Fikret Bila コラム:テロとの戦いを民族紛争にしてはならない
2008年10月04日付 Milliyet 紙

テロは、トルコの最も重要な問題である。テロとテロとの戦いは25年間続いている。参謀総長のイルケル・バシュブー陸軍大将は、新聞記者との懇談会の席上、(テロとの戦いによる)殉職者の数と無力化させたテロリストの数を明らかにした。クルド労働者党(PKK)によって殺された人の人数は、一般市民を含め、総数は3万5千人に上る。
この過程が生み出した状況は、政治領域にも影響を与えた。PKKと系譜を同じくする民主市民党(DTP)は、トルコ大国民議会に議席を有している。その前身の党同様、DTPについても解党訴訟が続いている。
トルコにとってまだましなのは、この過程が社会的紛争に転化していないことである。市民の良識のおかげで、テロとテロとの戦いは民族紛争化しなかった;出来事を安全保障の問題としてとらえることに成功した。
様々な民族グループや、多様な言語、文化が1つの「国民」という理解の中で共存できていることは、トルコの最大の強みであり、(有している)最も大きなチャンスである。
トルコは、この理解を維持することに、必ず成功しなければならない。さもなければ、国が直面するかもしれない最も大きな危機となる。

■先ごろの事例

この危機の存在を示す多くの兆候がこれまでにも見られた。しかし、拡大せずに鎮められた。市民の良識が勝利した。つい先ごろ、(エーゲ海沿いに位置する)バルケスィル県アルトゥンオヴァ町で起こった事件(注1)からも同様の危機の存在が明らかになった。町で起こった言い争いがけんかに変わり、2人の人物の命が失われた後に生じた事態から、関係者は教訓を得なければならない。
(犠牲者の)葬儀とそののちに東部出身の同胞の職場が破壊されたことは、事件が民族紛争に転化する傾向があることを示しているという点で深慮の必要な反応である。
これは単に政府や地方の指導者だけでなく、DTPにも責任ある行動を求める出来事の一例である。この火花が火事になる前に鎮火されねばならない。
民族的性質を伴う社会的紛争(を引き起こすこと)はテロ組織の基本的な目的の1つである。
トルコはこのわなに落ちてはならない。指導者が、政府が、そして政党が国民の手本となるような良識ある態度を示すことが必須である。互いを非難することはこの火花に油を注ぎ、火事に変えてしまうことを意味する。

■移民を受ける地域

トルコのあらゆる場所からやって来た、様々な民族的出自を持つ同胞が平和裏に共存している。同じ職場で働き、子どもたちを同じ学校に通わせ、同じ医療サービスを受けている。
このことは、トルコ共和国の建国哲学を強化する出来事である。この状況が壊されることは、トルコの秩序の混乱を意味する。
トルコ西部の各県、特に海岸沿いの県や郡は東部や南東部からの移民を継続して受けている。こうした(移民の送り手の)地方からやって来た同胞は会社を興し、職場を開き、労働者として働いている。
移民を受けている地方では、(移民が)どの県から来ようとも、全ての同胞が理解し合いながら生活することが基礎とならなければならない。居住する地域が民族的出自ごとに分かれ、いくつものゲットーが形成され、地下組織化の傾向が見られることは、社会的安定の観点からリスクを伴う現象である。こうした地域で生活する同胞の挑発に注意し、安全保障の問題を治安機関と司法に任せておくことが最も正しい道である。


注1:2008年9月30日、カーステレオの音量をめぐるドライバーと東部系移民との口論を発端に地元住民によって東部系移民の住居や職場、車などが破壊された事件。参考

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( 翻訳者:穐山 昌弘 )
( 記事ID:14830 )