Ismet Berkan コラム:オバマの教訓
2008年11月08日付 Radikal 紙

あまりおおげさにしたいとは思わないが、「バラク・オバマ物語」の基本的な部分については看過されるべきものではない。
私はオバマが救世主や「スーパーマン」、改革者であるなどとは考えていない。結局のところ彼はアメリカの政治家である。鋭く厳しいあるいは改革者としての側面は、一時期あったとしても、十分に鈍らせられずして、また十分に折り合いをつけられずして、オバマが今日たどり着いた地点に到達することは不可能なことなのである。
しかし、私にとってこの「鈍らせること」ということは、思うほど悪いことではない。それどころか「切れ味鋭いナイフ」であるために多くの潜在的有権者を排除してしまうより、むしろ広範な連立を代表することへと向かうことは、民主主義の持つ「折り合いをつけさせる」という本質にもかなうことなのである。

みなさんに短い引用を:
「政治的立場に最初に立候補した時、私は35歳で、法学部を卒業して4年が経っていた。その頃に結婚し、人生の全てに対しこらえ性がなかった。イリノイ州議会で一議席が空席となり、多くの友人たちは、私の人権派弁護士としての業績と市民団体のオーガナイザーとして働く中で培った人脈をみて、望ましい候補者だと考え、立候補を薦めてくれた。
この件を妻と話し合った後に選挙に打って出た。初めて選挙に出る人なら誰でもやることを、私もやった。つまり耳を傾けてくれる人ならだれとでも語りあった。人々が集まるあらゆる集会に出向き、美容院や床屋を回った。もし街角で2人が立ち止まっていたら、彼らに選挙用パンフレットを配るために道を渡った」

これがオバマの「政治始まり物語」だ。通りから通りへ、店から店を回り、彼が関心をもっていることを分かってもらおうと努力し、長い苦難の道をとおって、一方で選挙キャンペーンのための資金を集め、一方で政治を説明する…。
我々において、独断的な主張をする人のうち、誰一人として政治をこのようなものだとは理解していない。彼らによれば2回ヒュッリイェト紙の見出しになり、3回テレビ番組の論者として招かれることで、「リーダー」となるに十分であるという。しかしながら、草の根的な部分から、直接有権者と接触を始めることが政治にとっては必要なのだ。あなた方が有権者となにか話をしていると、ともかくメディアが後ろから近づいてきてあなた方を映し始めるし、あなた方が有権者となにか話をしていると、キャンペーンに資金も集まる。

オバマのキャンペーンは、政治史上最高額の寄付を集め、今日までなされた最も高額なキャンペーンになった。そうではあるが、この資金は何百万ものアメリカ人によって10、20、50ドル単位で寄付されたものだ。誰も何百万ドルもの寄付はしていない、この種の寄付は認められなかったのだ。つまり、キャンペーンの資金集め自体が、実は政治キャンペーンだった。オバマは最高額の資金を、インターネットによる寄付で集めたのだ。

もう少し引用を:
「…私はより金持ちや権力のある人々に常に味方する政治に怒りを感じており、全ての人に機会の門戸を開くことが国家の重要な役割であると強く考えています。私は進化を信じ、学術研究に信頼を置いているし、また地球温暖化を認めている。政治的に正誤があるとしても表現の自由を信じているし、国家が、誰かの宗教的信仰を-私自身の信仰を含めて-、それを信じない人々に押し付けるために使うことを望まない。(…)人種、性別、あるいは性的指向だけでなく、一般に差別に基づく政策を拒否しています」

***
あなた方のまわりがどのようであるか知らないが、私は少なくともここ10年でしばしば「政党でも作ってこの国を救うことができれば・・・」と言う人々に出会う。
「ああ、かわりのものがないから」という言葉はここ6年で最もよく聞いたぼやきの言葉である。
このコラムの読者は、政権に就く気がないとして共和人民党(CHP)を私が非難したことや、共和人民党がある種の敗北者の政党であること、そしてさらに悪いことには、こうした状況にほとんど不平を言わないと私が書いたことを知っている。私は共和人民党には全く期待しない。というのもこの政党は使命を終え、寿命を迎えた政治組織であると考えているからだ。
そして私は、オバマの成功物語は単に選挙戦略という観点から見たとしても、代わりの政治体制をつくりたい望む人々に希望を与えるに違いないと考える。なぜならオバマは35歳で入った政治の世界において47歳でアメリカの大統領に選出された。
つまり、なせば成るのである!

(原注:オバマの引用は、バラク・オバマ『勇敢なる希望』という本からとった。ペガサス出版)
(訳注:原書はThe Audacity of Hope: Thoughts on Reclaiming the American Dream、邦訳は『合衆国再生―大いなる希望を抱いて』)

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:15091 )