ジブラルタル海峡での不法移民船の犠牲者、この20年で1万8000人に
2008年11月03日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ ジブラルタル海峡で1万8000人の犠牲者
■ ナージーの物語は犠牲者全員を代弁する
■ “死のボート”現象は今年で20年目に
■ 犠牲者は数字にすぎない

2008年11月03日付クドゥス・アラビー(イギリス)HP1面

【マドリード:フセイン・マジドゥービー本紙記者】

 ジブラルタル海峡で不法移民の「死のボート」現象が出現してから、今月で20年になる。不法移民船は社会的・政治的現象となり、そこから様々な国際問題・危機が生じてきた。しかしヨーロッパという楽園を夢見た若者が溺死するという実際の悲劇は、自身を要塞化し、アフリカ人を阻む砦に変えようとするヨーロッパの試みの前では、副次的 な問題に後退してしまったように思える。

 (溺死者や行方不明者の割合の高さからその名が付けられた)「死のボート」現象は、公式には1988年11月1日に、ジブラルタル海峡北岸のタリーファの海岸に現れ始めた。その日、スペインに渡ろうとしていたモロッコ人青年23人が乗ったボートが沈没したと発表されたのだ。これに先立ってスペイン政府は、自国に入国するモロッコ人に対し、厳しい措置を実施していた。

 ボートは夜明けに沈没し、不法移民の遺体が打ち上げられた。その後数日の間にさらに10体が打ち上げられ、7人が行方不明とされた。救助された5人は、モロッコ北部の町カスル・サギールから、〔イベリア半島征服を任じられたウマイヤ朝の指揮官〕ターリク・ブン・ジヤードの先兵として最初にスペインの地を踏んだタリーフ司令官の名にちなんで命名された町タリーファまでの、死の旅の経験を世界に向けて語ったのだった。

(中略)

 たとえば昨日の日曜日、この現象についてのただひとつのニュースは、この20年間での溺死者が1万8000人に達したというものだった。これはモロッコと西アフリカからスペインに向かった人だけの数で、地中海の東でも数百人、もしかしたら数千人が溺死したことだろう。2009年11月には、これまでのリストに新たな犠牲者がさらに付け加えられることになるだろう。モロッコからエジプトにいたる我々の国々において、政治的・社会的状況が現在と同じである限り、新たな犠牲者が生まれることは確実である。状況は2009年になっても変わりそうにない。

 せめて不法移民の犠牲者たちに神の慈悲を祈ろうではないか 。世界の良心が眠り込んでいる時に、この悲劇に対して我々にできるのはそれくらいしかない。神の慈悲を願ってコーラン開扉の章を読もうではないか。

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( 翻訳者:小林洋子 )
( 記事ID:15103 )