Şahin Alpay コラム:圧力と差別の根源
2008年12月30日付 Zaman 紙

バフチェシェヒル大学政治学科長であるビンナズ・トプラク教授が、ボアズィチ大学から支援を受けて公刊した「トルコで(多数派と)異なること:宗教と保守主義の軸線から他者となった人々」という題名の研究調査は、アナトリアで多数派とは異なる信仰、アイデンティティ、意見を持つ人々がさらされている圧力と差別をテーマとしている。

この調査は、「イスラーム」層がさらされている圧力と差別については十分に調査・把握されており、さらに公正発展党政権下ではこの問題に関する不満が減少したという理由で、「世俗的なアイデンティティを有する人々」の問題に関心を傾けている。そしてアナトリアの12都市で「有意抽出法」によって選ばれた401名に行われた詳細なインタヴューに基づいている。被験者は、世俗的アイデンティティを持つ人々が集まっていると想定される組織に所属する人々から構成されている。全ての都市で同じような不満が析出されたから、この調査が「仮説を証明するために選ばれた」被験者に対して行なわれた無効な調査であるという結論には至らないとされている。

ビンナズ・トプラク教授が非の打ちどころのない、正直な社会科学者であることを私は微塵も疑ってはいない。調査が部分的にオープン・ソサエティ研究所の支援を受けたことは、その研究価値にいささかの影も落としてはいない。オープン・ソサエティ研究所は、我々の知識を豊かにする数多くの重要な調査を支援してきた。報告書に記載された一部のクルド人やアレヴィー信徒、ロマや非ムスリムの人々、そして非敬虔な若者や女性がさらされている圧力と差別に関するストーリーは少なくともその大半が人々の現実を反映したものであることは確かである。この調査のおかげで、我々はアナトリアで直面している圧力や差別がどの程度広がっているのかについてではないが、幾つかの種類のことについて自分の考えをまとめられるのである。トルコでは、不寛容に端を発する圧力や差別が非常に深刻な問題であることは確かなのだ。

しかしながら、この調査には詰問され批判されるべき多くの側面がある。まず、最も重要であるのが次の点だ。
もし調査が、「差別や疎外が法的な決定や行政的措置を通じて解消されるために」、何がなされるべきなのかについて提案を検討するという目的(報告書7ページ)を含んでいるのであれば、状況について単に一部だけではなく、全体を対象とすることが必要であり、不寛容の相互に連関しているすべての要因を検討する必要があるのではなかろうか?トルコでは、不寛容はおそらく社会ではなく国家に原因がある。そして宗教や保守主義だけではなく、世俗主義やナショナリズムの凝り固まった解釈からも醸成されていることを看過することはできない。

この問題は、調査が公表された同じ週になされた別の議論にはっきりと現れた。高学歴で、世界を見たことがあり、超世俗的な120人を超える元大使たちは、「我々の兄弟であるアルメニア人に謝罪します」という声明に署名をした人々を、「裏切り者」と言い放つことに躊躇しなかった。
超世俗的な共和人民党の、超世俗的で医者でもある女性議員は、人種差別的な思想を披露することにいかなる不都合も感じなかった。アブドゥッラー・ギュル大統領を、そしてトルコが誰であっても自分の意見を公にできる開かれた社会であるという発言を、大統領の母方がアルメニア人であることに関連づけた。そしてそうではないと証明されるためには、DNAテストが必要だと述べた(註1)。この発言の一方で、やはり超世俗的で、無所属の議員が出てきて、言われたことに耳を傾けない人たちには「額に銃弾を撃ち込むしかない」と語ったのだ(註2)。

もしトルコで異なるアイデンティティに圧力や差別があるのであれば、この筆頭に来る責任者は、トルコ共和国建国期以来、執拗に続けられてきた(そしてごく近年になって、生き伸びることが難しくなり見直しの必要が生じた)、「平等な国民」ではなく「均質な社会」を目標とするアイデンティティ政策と世俗主義政策である。
この政策により、近年までクルド人とアレヴィー信徒は存在しないものと見なされていた。そして、非ムスリムは未だに国民的な社会全体の外にあると見なされ、人々は未だに暴力を含まない思想のために罪に問われている。異なる人々に対する圧力と差別を止めるためには、何よりもまず、国家がアイデンティティと世俗主義の政策を根本から刷新し、教育を教条化するのではなく、多様性を尊重する倫理観を根付かせることに尽力することが必要だ。


註1:イズミル出身の共和人民党議員ジャナン・アルトマンの発言

註2:トゥンジェリ出身の独立系議員であるカメル・ゲンチの発言


Tweet
シェア


この記事の原文はこちら

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:15473 )