Şahin Alpay コラム:対イスラエル関係における理想主義と現実主義
2009年01月06日付 Zaman 紙

イスラエルは、まず18カ月封鎖を続けることでガザを大規模な「強制収容所」に変えた。そしてその後6カ月間停戦期間をおき、その間に戦争を準備した。

イスラエルは停戦を破った。そしてついにハマスを殲滅するためと主張して戦争を開始した。世界で最も人口過密な地域に対して始まった攻撃で、徐々に増加している死者は民間人であり、女性や子どもたちである。

イスラエルのガザ攻撃が、世界中のあらゆる場所と同様、トルコでも社会の各層の人々の間に激しい憤りを噴出させたのは当然である。というのも、これは不当な戦争だからだ。この戦争の一方には、世界最強の国家であるアメリカの無制限、無条件の支援を後ろ盾にした、そしてこの地域最強の軍隊を有するイスラエルがいる。もう一方には、1948年に祖国の大部分から追放され、1967年以来占領下に置かれ、1991年にはたった5分の1の土地における独立と引き換えに、イスラエル[の存在]を認めることを受諾したにも関わらず、未だにくびきから逃れられていないパレスチナ人がいるのである。

我々が占領とくびきを一瞬見ないふりをし、イスラエルの目的がハマスの放つロケット弾に対し国民の安全を守るためだと認めたとしても、この戦争が正当なものであると見なすことはできない。なぜなら、戦争が「正当」であると見なしうる最低限の条件は、ある国がまず自国防衛のための軍事行動以外のあらゆる手段を講じ尽くしていること、報復攻撃が見合ったものであること、そして戦争目的を見出しうること、これらが必要である(原注:2008年12月30日付The Economist誌参照*)。

イスラエルのこの不当な戦争に向けられたトルコの激しい憤りが、反ユダヤ的な人種差別主義者や西洋を敵視するナショナリストによって悪用されるということは、残念ながら事実だ。しかし、この不当な戦争の責任者はユダヤ人全体でも西洋全体でもない。イスラエルにも西洋にも、この戦争に反対する非常に多くのユダヤ人と西洋人がいる。戦争反対の最大のデモ行動はテルアビブでなされた。つまり、一万人がデモ行進をしたのである。イスラエルがいつか停戦するとすれば、そのことにはイスラエルの平和運動が大きな役割を果たすことになるだろう。

ここで確かなことは、今日トルコでこの件に関する国民投票を実施するとしたら、圧倒的多数の人々がイスラエルとの外交関係を断つことに賛成票を投じるだろうということだ。しかしながら、こうしたことが起こり得るとは思えない。民主主義国のおおかたの政府と同様に、トルコ政府も国際関係において(法と倫理を擁護する)理想主義と(暴力と軍事力を擁護する)現実主義が交錯する政策を取っているからだ。この例をおそらくトルコの対イスラエル関係において最もよく見ることができる。

イスラエルが2002年4月にヨルダン川西岸に侵攻し、パレスチナのリーダー、ヤーセル・アラファトを包囲した際に、トルコの(「世俗的な」)ビュレント・エジェヴィト首相は「パレスチナ人に対する大虐殺が行われている」と述べた。イスラエルが2004年3月にガザに侵攻し、ハマスのリーダーであったヤースィーン師を殺害した際には、(「イスラーム主義者の」)タイイプ・エルドアン首相はイスラエルを「テロリスト国家」と位置付けた。そして、最近のガザへの侵攻によりイスラエルが「人道に反する罪」を犯しているとの発言を積極的に行っている。エルドアン首相は、エフード・オルメルト首相が、イスラエルとパレスチナ、イスラエルとシリア間の平和のために真摯な努力を重ねていたトルコ政府(アンカラ)を訪問してから4日も経たないうちにガザに「無慈悲な」攻撃をしたことは、「トルコへの侮辱である」と表現した。さらに踏み込んで、「残虐な行為をする者は彼ら(パレスチナ人)の涙で溺れ死ぬだろう」と述べた。

トルコの政治指導者および(イスラエルとの密接な関係を重要視している)軍の高官らを招集した国家安全保障評議会(MGK)が発表した通達で、攻撃で数多くのパレスチナ人が亡くなるとの懸念が表明された。そして、軍事行動を即時停止し、外交交渉に可能性を認め、ガザの人々に人道支援が安全な形で届くよう保障し、パレスチナ人の間で直ちに和解するよう要請した。「トルコ・イスラエル議員間友好グループ」のメンバー316名のうち136名が辞任した。

ガザ戦争によりトルコとイスラエル間の信頼関係にひびが入ることは避けられないとしても、二国間関係に決定的な影響を及ぼすとは考えられていない。何故か?次回のコラムで続ける。

*関連記事
“Gaza: the rights and wrongs” The Economist print edition, Dec 30th 2008

 

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( 翻訳者:幸加木 文 )
( 記事ID:15508 )