アーシューラーの殉教劇タアズィーイェ、イラン国民遺産に登録
2009年02月16日付 Iran 紙


【社会部】タアズィーイェ及びアーシューラーの諸儀礼〔※1〕が、国民遺産の無形遺産リストに第10番目の遺産として登録された。

 ISNA(イラン学生通信)の報道によると、政府報道官ゴラームホセイン・エルハーム氏は、〔テヘラン北部に位置する〕「首脳会議ホール」で行われたタアズィーイェ及びアーシューラーの諸儀礼の国民遺産登録式で、アーシューラーを様々な価値を秘めた一つの象徴と位置付け、次のように話した。「アーシューラーは公正の希求や真理の探求、理想の追求、圧制への抵抗、自己犠牲、献身、愛、そして美といった価値が秘められた象徴である。歴史を通して、人間の情熱や能力、才能の全てはこのような美や完全性が現れる高らかな場において発現してきたのである」。

 同報道官は次のように付け加えた。「全ての芸術は、アーシューラーの到来とともに花開いた。それは、こうした特性が人間の天性に由来するものであり、アーシューラーはこの領域における人間の芸術的な創造力や深遠なる才能の数々が発現した場であるためだ。実に、アーシューラーの芸術は最も美しく華やかな芸術である。そのため、アーシューラーの象徴の数々を永遠のものとし、全ての芸術のなかにアーシューラーの文化を永続化させる人々に、私は敬意を表する」。

 エスファンディヤール・ラヒーム=マシャーイー文化遺産観光庁長官はこの式典で、「我々は現在、イスラーム革命40周年に向かって進んでいる。40という数字は、一つの運動が成熟する区切りの数字である〔※2〕」と述べた上で、次のように話した。「アーシューラーが〔無形国民遺産として〕登録されたことは進歩と理性、知性へと向かう運動なのであり、我々はそれを一つのパッケージとして世界の人々に提示していかなければならない」。

 同長官は次のように付け加えた。「我々全員にとって絶対的に重要なのは、アーシューラーが約千年の時を経た今日、歴史上最も精彩を放っているという事実である。歴史上、アーシューラーの文化と儀礼がこれほどにも精彩を放ち、熱烈であった時代を、我々は知らない」。

 さらに文化遺産観光庁次官も、この式典で次のように話した。「タアズィーイェは無形遺産として登録された他の様々な儀礼や表徴と同様、ある根源的文化が儀礼という衣装をまとって具現化した形である。精神的な儀礼の〔国民遺産としての〕登録が開始された今年〔2008年度〕、我々は数々の特別な機会に、それにちなんだ儀礼を登録すべく努力してきた。それはノウルーズ〔※3〕の登録に始まり、ラマダーン〔断食月〕の諸儀礼、《エルサレムの日》〔※4〕、シャベ・ヤルダー〔※5〕、ザンジャーン州におけるムハッラム月8日目の夜の儀式〔※6〕、パフラヴァーンとズール・ハーネの習俗〔※7〕、モアゼンザーデ・アルダビーリー師のアザーン〔※8〕と続いている。我々は今日もまた、タアズィーイェを、シーア派の理念を最も明確に表す儀礼の一つとして登録した」。



訳注
※1:アーシューラーは、預言者ムハンマドの孫である第3代イマーム・ホセインとその一族郎党がカルバラーの地でウマイヤ朝のカリフ・ヤズィードの軍隊によって虐殺されたことを悼む、シーア派にとってもっとも重要な宗教行事。アーシューラーではホセインの殉教を再現した殉教劇タアズィーイェをはじめ様々な儀礼が行われる。

※2:「40日」で喪が明けるなど、40(アルバイーン)という数字はイスラームでは聖なる数字とされる。

※3:ノウルーズは、春分の日に始まるイランの正月。ハフト・スィーンという正月飾りを飾る、エイディと呼ばれるお年玉を渡すなどの風習がある。

※4:イスラーム世界の連帯を呼びかける目的で、ホメイニーは1979年にラマダーン月最終金曜日を《エルサレムの日》に制定。以来、《エルサレムの日》にはイラン全国で大規模な反イスラエル・デモが開催される。

※5:シャベ・ヤルダー(冬至の夜)には、健康を祈って赤い果物を持ち寄って食べる、詩人ハーフェズの詩を用いて占いをするといった風習がある。

※6:イラン北西部に位置するザンジャーン州ザンジャーン市で行われる、アーシューラーの儀式の一つ。

※7:ズール・ハーネ(力の家)は、古典詩のリズムに乗せた古式体操で身体を鍛え、仁侠の精神を養うイランの伝統的な道場である。鍛錬を続け、屈強な肉体と優れた仁侠の精神を持つようになった者はパフラヴァーン(英雄)と呼ばれる。

※8:モアゼンザーデ・アルダビーリー(1925/26 - 2005)は、イランの有名なアザーン(礼拝の呼びかけ)唱者。

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( 翻訳者:佐藤成実 )
( 記事ID:15820 )