Taha Akyolコラム:オスマン史に学ぶ
2009年03月07日付 Milliyet 紙

私はエルドアン首相の権威化を重視しており、それに不安を感じている。このことは首相の個人的な気質という面もある。しかしより重要なのは、我々の政治文化における「自由な哲学」の欠如である。

このために我が国では、右派、左派、そしてケマリストという流派が、簡単に権威主義に傾く可能性がある。これは非常に重要なことだ。

しかし私は、「最後のオスマン帝国のスルタン」と書かれたプラカードがエルドアン首相に掲げられたことは重視してはいなかった。それは単独の、エキセントリックな出来事と見ていた。実際のところ、集会に来ていた公正発展党(AKP)党員の群集や関係者達も、反発を示していた。

私はこの出来事を重要だとは思わなかったが、オクタイ・エキシ氏の論説を非常に重視している。
「皆さんは、総計36人のスルタンが輩出したオスマン王朝から、征服王スルタン・メフメト、そして神の剣による征服を正当に評価するために、冷酷者セリムと、もうひとり立法者スレイマンとを別にすれば、後に残った33人のスルタンのうち誰を敬意と驚嘆、先見の明をもって思い出しますか?」(ヒュッリイェト紙、3月6日付)

■「部族から国家へ」
問題はオスマン朝を好むか好まないかではない、「歴史」におけるプロセスと役者達をどう認識するかの問題である。このためには一定の調査と研究が必要だ。我々の知識に「ない」ものが、「歴史においてもなかった」と言うことはできない。

我々の歴史において、暗黒のページはもちろんあるのだが、今日の姿の礎となった汚れなきページもまた沢山あるのだ。
歴史を正しく見ることを可能にする方法は、「歴史的な発展」という概念から理解すること、そして出来事を「時間」の中で理解することである。

西洋では封建制度から、東洋では部族制度から「先へ」進むために、「中央集権統治」は間違いなく「進歩的」な役割を果たしたはずだ!我々を部族制度から救い出し、国家、中央集権、法治という伝統や、当時の定住文明のレベルへと到達させたのは、オスマン帝国の時代であった!

オクタイ・エキシ氏と同じ世界観を持ち、法学教授の故フフズ・ヴェルデト先生も、古典期オスマン朝の法が同時代のヨーロッパの法よりも「進歩的」であったと、書いていた。
その法の制定者や執行者達を我々が知らないからといって、彼らが歴史に「いなかった」ことにはならない。

■オスマン朝の遺産
オスマン朝は、「中央集権国家」になりえたがために、それ以前のトルコ系部族国家のように1、2代で崩壊することはなかった。そして共和国に非常に貴重な遺産を遺した。それらは、法律、統治、軍、司法、教育、そして美術などの組織である。

アタテュルクとその盟友はこれらの組織を動かし、「解放」と「新たな組織作り」に成功した。
他のどんな第三世界の国もこのような遺産を持っていなかった。今日のトルコが「他と異なる」のは、オスマン朝の遺産の寄与が極めて重要なのだ。

これ以上、深くは入らないでおこう。例えば、改革主義者であったセリム3世は尊敬に値しないのか?アタテュルクの近代化モデルの、19世紀における先駆者であったマフムート2世を、エキシ氏は称賛しないのか?または法的、政治的近代化の最重要段階のひとつであるタンズィマート期のスルタンと大宰相たちは?オスマン朝史において最大の教育近代化を進めたアブデュルハミトはどうなのか?

共和国の基盤にある組織に目をむけなさい、どの組織の基盤にオスマン朝の影響がないというのか?!

もちろん、共和国の「一党支配」時代が役割を終えて歴史になったように、我々の通史においても、オスマン朝は1920年4月23日にその機能を失い、歴史になった。

我々の未来のために、過去にあったいかなる時代も、今日、そのモデルにはなれない!
ただし、「歴史的発展」という未来に光を灯す概念を持つために、我々は専門家の目でもって歴史を理解する必要がある。

何十もの、それどころか何百もの名を挙げることが可能であるのにここで私が名前に触れられない貴重な歴史家の方々にお詫びをし、各分野から数人の名前を挙げる。

オスマン総史:ハリル・イナルジュク、イルベル・オルタイル
文化史:フアト・キョプルル、アフメト・ヤシャル・オジャク
オスマン経済史:オメル・ルトフィ・バルカン、シェヴケト・パムク
近代オスマン史:ザフェル・トプラク、セリム・デリンギル
オスマン朝の科学:アドナン・アドゥヴァル、エキメレッディン・イフサンオール
外国人歴史学者:フェルナン・ブローデル、バーナード・ルイス、ドナルド・カタート、スライヤ・ファローキー

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( 翻訳者:林奈緒子 )
( 記事ID:15938 )