アフマディーネジャード大統領、国会議長に「憲法上の警告」:88年度予算法案の審議をめぐって
2009年03月16日付 E'temad-e Melli 紙


マフムード・アフマディーネジャード大統領は「88年度〔2009年度〕予算案に根本的な変更を加えた」ことを理由に、国会に対して異例の「憲法上の警告」を行った。

 政府関係者によれば、この警告は国会が来年度予算案の四分の一に変更を加えた上で同法案を可決したことに対して通告されたものだという。大統領はアリー・ラーリージャーニー国会議長に宛てた書簡の中で、国会が政府提出の予算案を「無視」して、「透明性やバランス、統一性を欠いた新たな、まったく別の予算」を可決したことに対して遺憾の意を表明、国会が可決した予算は「施行不可能なものであり、諸省庁の行政に秩序を与える代わりに、国の行政・財政秩序を混乱に陥れるもの」だと断じている。

 第9政権の今回の行動は、過去4年間で国会に対して行われたものの中でもっとも辛辣なものである。昨年も、政府は国会が1387年度〔2008年度〕予算案に対して変更を加えたことに抗議していた。〔‥‥〕政府報道官は昨年、記者会見で国会を批判する発言を行ったが、しかし今年は大統領自らが国会に対して異例の「憲法上の警告」を与えた格好だ。

 昨年デイ月〔2007年12月下旬〜2008年1月下旬〕にも、マフムード・アフマディーネジャード大統領は国会が「全国の村落にガス網を拡大する際の予算不足を補うために、第四次イラン・イスラーム共和国経済・社会・文化発展計画法第4及び第8表、ならびに1386年度〔2007年度〕予算法を改正する法案」を可決したことに抗議し、国会のこのような行動は憲法第75条に反すると指摘したことがあった。なお、国会が可決した同改正法はその後、護憲評議会の承認を受けている。
〔註:憲法第75条には、予算不足が予想されるような法案を国会が提出する場合は、財源を明確化する必要があることが定められている〕

 これに対し、当時のハッダード=アーデル国会議長は次のような反応を示した。「このような書簡は、私にとって驚くべきものである。政府にとって法律の施行が困難である場合もあるかも知れないが、しかし護憲評議会ではなく大統領が国会に対して、国会の可決した法案は憲法違反だと書簡の中で表明するような事態は、これまで聞いたことがないからだ〔‥‥〕」。

 話はこれで済まなかった。ハッダード=アーデルは国会議長(当時)は最高指導者に書簡を送り、次のように訴えたからである。「大統領のこのような行動は、第58条をはじめとする憲法の諸条項にそぐわないものであると考えます。大統領の書簡を最高指導者閣下に送付いたしますので、三権の対立解消・関係正常化は最高指導者の義務・権限の一つであると定めた憲法第110条第7項にもとづき、閣下がよいと思われる方法で、政府と国会に対し最終的なご裁定を下し、ご指導賜りますようお願い申し上げます」。
〔註:憲法第58条は、国会の立法権を定めた条項で、国会によって所定の手続きに従って可決された法律は行政権ならびに司法権によって施行されなければならないことを記している〕

 この書簡を受け、最高指導者は「憲法に記述された過程を経て可決された法律は、いかなるものであれ、すべての国家機構にとって施行が義務づけられている」との立場を明示した。

 しかしこのような出来事にもかかわらず、その1年後、政府は再び〔国会の議決に対して同様の〕反応を示したのである。

 マフムード・アフマディーネジャード大統領がアリー・ラーリージャーニー国会議長に宛てた書簡の全文は以下の通りとなっている。

慈悲深く慈愛あまねきアッラーの御名において
ラーリージャーニー国会議長殿
拝啓

憲法第113条、及び1365年〔1986年〕に可決された「イラン・イスラーム共和国大統領の職務・権限・責任の範囲を定める法」第15条にもとづき、1388年予算案の審議過程で憲法の諸条項が遵守されなかったことに関し、以下の通り憲法上の警告を通知する。

〔中略〕

残念なことに、憲法第52条に反して、予算案の審議は政府法案を無視する形で進められ、透明性やバランス、統一性を欠いた新たな、まったく別の予算が可決されてしまった。このような予算法は施行不可能なものであり、諸省庁の行政に秩序を与える代わりに、国の行政・財政秩序を混乱に陥れるものである。この点に関し、憲法のさまざまな条項が明らかに侵犯された例を以下に挙げる。
〔※憲法第52条は、毎年の予算法案は政府が提出し、国会によって審議・可決されなければならず、予算法を変更する場合は所定の法律の規定に則って行わなければならないとしている〕

1.ご存知の通り、1384年3月17日〔2005年6月7日〕付の護憲評議会憲法解釈通達(第287号)の中で述べられているように、憲法第52条に則り、毎年の予算案及び同補足・改正案は政府提出法案という形で、政府によって提出されねばならず、議会提出法案という形でそれを可決してはならないとしている。

ところが、政府が提出した予算法案と国会が可決したそれとを比較すればよく分かるように、可決された法案は政府提出法案ではなく、国会議員らによる議会提出法案であり、政府提出法案と入れ替わってしまっている。例えば、〔政府提出時には〕12の条項から構成されていた予算法案は〔可決された頃には〕約6倍(70条項)に増え、歳出・開発予算・保有資産・歳入などに大幅な変更が加えられている。

〔中略〕

国会は〔自らが可決した予算の中で〕歳出を増加させているが、歳出を増加させていると言っていつも政府を非難しているのは、国会の方である。

以上指摘してきた事例は、予算の全体像から浮かび上がってきた国会による変更点についてである。これら以外にも、さまざまな部門で極めて多くの変更が予算案に加えられている。財源や歳出に加えられた変更点は実現不可能なものばかりであり、以下に詳述する、1388年度に実施されなければならない基本的な政策の多くが、事実上実施不可能となるだろう。

2.国会の内規を遵守していないにもかかわらず、つまり国会内規第223条に規定された〔第四次五カ年〕計画の改正に必要な賛成票(出席議員の3分の2の票)を確保していないにもかかわらず、国会は「補助金の目的化」の〔予算案からの〕削除を可決したと見なしている。しかしこれは、以上の理由から憲法第65条に抵触する行為〔であり、「可決」したとはいえないもの〕だ。
〔※憲法第65条は、国会による法案の可決は国会内規に則らねばならないとし、国会内規を変更するには出席議員の3分の2の票が必要だとしている〕

補助金の目的化は第四次開発計画で義務化されている(例えば第四次計画法第33条B項及び第95条)。88年度予算は、第四次五カ年計画の最終年に当たる予算であり、88年度予算に補助金の目的化が盛り込まれないことは、予算法による五カ年計画の修正を意味する。

〔中略〕

補助金の目的化によって生まれるはずだった20兆トマーン〔約2兆円〕の歳入が予算から削除されたことで、政府は事実上、17兆5千億トマーンの予算不足に直面した。政府が見込んでいた歳入の一部は、政府提出予算で予定されていた8.5兆トマーンの歳出削減に、また別の一部は今年度までエネルギー関連の補助金予算として計上されていた歳出(9兆トマーン)の削減によるものである。

それゆえ、「補助金の目的化」を予算から削除することは、第四次計画に矛盾するものであるがゆえに、〔ハーメネイー最高指導者が定めた長期目標である〕イラン20年ビジョンに反しており、また国会内規を無視するものであるがゆえに、憲法第65条に反しており、さらに予算案で提示された数字に大幅な変更を加えるものであるがゆえに、憲法第52条に反しており、かつ歳入の減少を補って支出をまかなうための方法を何ら提示していないという点で、憲法第75条にも抵触するものである。

〔後略〕



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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:16089 )