スーダンで「通い婚」の是非について論争、法学者は適正との判断
2009年02月07日付 al-Quds al-Arabi 紙

■ 経済危機と内戦後の未亡人増加により「通い婚」は広まるとの予測
■ 大論争に終止符を打つべくスーダン・ウラマー協会が介入、「通い婚」は適正な婚姻であり禁止は大きな害をもたらすとの声明を発表

2009年02月07日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

【ハルツーム:本紙カマール・バヒート】

 このところスーダン社会では、スーダン・ファトワ評議会が最近認めた通い婚の話題で持ちきりである。この結婚形式についてスーダン社会は賛成派と反対派に分かれており、スーダンでのオールドミス問題や莫大な出費や婚礼に伴う儀式のせいで若者たちが結婚から遠ざかっている問題への解決策であると考える人々がいる一方、このような結婚を認めれば無秩序への扉が開かれると考える人々もいる。また、欧米社会では一般的であるボーイフレンドやガールフレンドに似たようなものだと考える人々がウラマーの中にも存在する。

 スーダン・ウラマー協会は、通い婚という結婚形式が全てのウラマーによって適正と判断されたことを強調し、通い婚に関して法学者団体のウラマーたちが出すファトワに「制限事項だが認可する」あるいは「禁止事項だが許可する」との判断が含まれることはない、と説明した。

 同協会が通い婚について説明した声明では、通い婚を禁止することにより大きなデメリットが引き起こされると述べており、例えば女性側が別居を[結婚時の]夫に対する条件に入れたり、夫と一緒にいるのは休日だけにして、病気に罹った自分の母親の世話をすることを夫に対する条件とする等の可能性が出てくる、と説明している。

 スーダン・ウラマー協会ファトワ局長ハサン・アフマド・ハーミド教授が署名したファトワの説明によれば、ウラマーたちが出すファトワは条件の問題については言及しておらず、「こういった結婚形式は許される」と述べるにとどめており、これは夫婦双方の合意がある以上適正であるという点について異議を唱える学者はいないという。また、男性の同居は結婚の目的の一つであるにせよ、結婚の条件でも根本でもないとファトワは説明しており、イスラーム世界連盟法学者協会のファトワも含め、こうした婚姻を認める多くのファトワが出されていることを指摘した。

 通い婚がスーダンで広まるかどうかについて見方は様々であり、スーダン社会は保守的でこの種の婚姻とは相容れない伝統を強く固守すると見る者もいる。彼らは、通い婚によって「同居」すなわち共同生活の原則が失われることで、これを受け入れる女性たちの名誉を傷つける可能性があると主張している。

 しかし、通い婚がスーダンで広まるだろうと予測する人々は次の理由を挙げる。

(1)伝統的な婚姻はスーダンでは莫大な費用がかかり、経済危機が深まるにつれ、多くの男性が通い婚に流れる可能性がある。通い婚は同意にしたがって夫が妻の家を訪れるものであるため、夫に強制的な金銭的義務がなく、夫婦生活のために家を確保する必要もないからである。

(2)南部やダルフールなどでのスーダン内戦では未亡人が多く生まれ、彼女たちには特に子供がいる場合は、同居を必要としない通い婚の方が他の結婚形式よりも適している場合がある。また、こうした未亡人たちは国から補償金や年金などの物質的な優遇措置を得ているため、特に金銭的能力に乏しい若者たちにとっては彼女らの妻としての魅力が増している。周知のように、スーダン政府高官らは内戦の犠牲者の妻たちと結婚している。

(3)通い婚を適正とする事は、家族生活を続けることを可能にする解決策として密かに複数の妻を持たざるを得なかった多くのスーダン人男性に扉を開く。特にスーダン社会は、聖クルアーンにも述べられたイスラームの判断であることから、多妻制を以前よりも受け入れるようになっている。

 ウラマー協会のファトワが出されたにもかかわらず、今しばらくは論争が続くであろう。長老たちの多くは今もなお、通い婚は多くの場合、婚姻が適正であるために不可欠な公表の手順を欠くため、「合法化された姦通」の一種となる可能性があると主張しつづけている。

 ちなみに、エジプトを含むアラブ諸国の多くでは、通い婚はイスラームの婚姻の適正な形式のひとつとして認められている。

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( 翻訳者:森本詩子 )
( 記事ID:16235 )