「名誉殺人」を主張した被告にキサース刑
2009年05月03日付 E'temad-e Melli 紙


男性を共謀して殺害した罪に問われている男2人女1人に対する裁判が、テヘラン刑事裁判所第71法廷で開かれた。主犯格の男(歌手)は、殺害された男性によって妻が暴行を受けたことを理由に犯罪計画を立て、被害者と面会後、弟及び妻と共謀して被害男性の頭部にナイフで切りつけ、殺害した罪に問われている。

 今回の殺人事件では、その他の類似の事件と同様、「〔家族の〕名誉=貞節の防衛」が主張された。この手の事件では通常、女性の側の裏切り行為が取り沙汰されるが、今回の被告らの主張は「殺害された男性は妻をストーキングし、暴行した。そのため名誉=貞節を守るために、男性を殺害した」という点に集約される。

 事件は86年〔西暦2007年〕に起こった。同年アーザル月28日〔2007年12月19日〕夜、血痕のついた銀色のプライド車〔※韓国KIA社の自動車〕がガズヴィーン州アーブイェクの路上に放置されているのが発見された。これを受け、警察が血痕のついた車のナゾを捜査したところ、その数時間後、足の部分が地面からはみ出た状態の若い男性の遺体が近くの谷で発見された。遺体は、深さ1メートル45センチの穴の中に埋められていた。

 捜査の結果、男性は25歳で、別の場所で殺害された後、穴の中に遺体が埋められたことが分かった。捜査官らが被害男性の家族を特定し、彼らから事情を聴取したところ、事件の手がかりとなるものが見つかった。

 事件当日の正午まで被害男性と一緒にいた男性の友人は、「事件当日、ある女性からモスタファー〔=被害男性の名前〕に連絡があり、面会することになった」と証言、被害男性の最近の通話記録を調べた結果、間もなくアーレズーという女が逮捕された。

 逮捕された女は自供を余儀なくされ、夫と夫の弟が殺害を犯したことを認めた。女の自供を受け、モハンマド(アーレズーの夫)と彼の弟が逮捕された。モハンマドは殺害の動機を、名誉=貞節を守るためだったと主張した。

 こうして、三人の被告をめぐる裁判はテヘラン州刑事裁判所第71法廷の裁判官らの手に委ねられ、昨日朝、同法廷で公判が開かれた。アズィーズ・モハンマディー裁判長と四名の判事補によって開かれた公判の冒頭、検察代表のシャーダービー検事は起訴状を朗読、三名の被告に対して法的な処罰を要求した。

 被害者遺族の弁護士がキサース刑〔同害報復刑〕を要求した後、主犯格の被告は裁判官らに対して次のように述べた。
アーレズーは殺された男性にしばらく前からストーカー行為を受けていたことを、私に訴えていました。事件の二日前、モスタファーは私の妻を暴行しました。そこで私はアーレズーに、モスタファーに連絡して、面会の約束を取り付けるよう言いました。私は当初、彼を殺すつもりはありませんでした。ただ彼と会いたかっただけだったのです。

 同被告はさらに、次のように続けた。
私はいつも、ナイフを携行していました。被害男性は約束通りに来ました。私とファルハード〔=主犯格の男モハンマドの弟〕を見るや、彼は逃げようとしましたが、そうはさせじと彼の行く手を阻みました。すると彼は、車の座席の下から斧を取り出しました。弟は彼の手から斧を取り上げ、私はもっていたナイフで彼を刺しました。

私たちはモスタファーを病院に連れて行こうとしました。その道中、真相が明らかとなりました。なんと彼は、私たちの生活をメチャクチャにするために、アーレズーの父方の伯父の妻であるゾフレおばさんにカネで雇われていた、というのです。

私は自制心を失い、彼に〔ナイフで〕切りつけてしまいました。モスタファーは死に、私と弟は怖くなって、遺体を隠すほかないと考えました。結局、遺体を谷に運んで、穴の中に埋めました。しかし信じて下さい。弟は殺害には何ら関わっていません。彼は傍観していただけなのです。

 続けて、共犯格のファルハード〔=弟〕が被告人席に立ち、兄の話を認める発言を行った。ファルハードは、殺害にはまったく関わっていない、車を運転していたので、兄が被害者を殴ったのだとばかり思っていた、と語った。

 その後アーレズー〔=妻〕が裁判官の前に立った。
モスタファーは子度を学校に連れて行く道すがら、私にストーカー行為を繰り返していました。モスタファーはいつも、私たちの家に電話をかけてきては、『夫を殺せ、俺と結婚しろ』と迫り、私を脅してきました。このことは夫にもいつも言っていました。

ある日、私が自宅に一人でいると、この男は私の所に押し入り、私を乱暴しました。その夜、このことを夫に打ち明けました。その結果、男を人気のない場所に呼び込み、モハンマドと弟のファルハードが彼に会うことになりました。

 被告らの陳述と弁護士による弁論が終わると、裁判官らは合議に入った。その結果、裁判官は主犯格の男にキサース刑を、共犯格の弟には最長禁固刑、すなわち禁固15年を言い渡した。アーレズーは殺人幇助の罪で、禁固10年が言い渡された。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:16375 )