「婚資金として羊200頭」:常軌を逸した婚資金、いまだやむ気配なし
2009年05月05日付 E'temad-e Melli 紙

離婚の増加に伴い、常軌を逸した婚資金の話に加え、信じがたいような離婚理由についても耳にする機会が増えている。

 63歳の夫婦が40年間の夫婦生活の末、複数の子供までもうけたにも拘わらず、「理解し合うことができなくなった」ことを理由に、家庭裁判所に離婚請求を行った。妻に支払われる婚資金は羊200頭。

 本紙記者の報告によると、婚資金の支払いを求めて家庭裁判所に訴え出たのは、63歳の女性。彼女は夫との生活に疲れ果て、夫との離縁を考えている。この女性は、夫と理解し合うことができなくなった、夫とはもう生活できないと訴えている。

 この女性が求めている婚資金は、一部の若い女性のそれと同様、驚くべきものだ。女性はある農村で結婚し、部族的な生活を営んでいたため、〔婚姻契約の際〕羊200頭を婚資金として設定した。この常軌を逸した婚資金の支払いを夫に求めるために、彼女は家庭裁判所に訴え出ているというわけだ。
〔※「部族的な生活」というのがどのようなものを指しているのか不明だが、小さな村で農業や畜産、手工芸品の製作などに従事した生活のことを指しているものと思われる〕

 彼女は家庭裁判所第268法廷のアムーザーディー裁判長に、生活の詳細について次のように述べている。
40年前、私は生まれ育った村で、隣人の男性と婚約をいたしました。ホッジャト〔=夫の名前〕は小さい頃から、私たちと家族ぐるみのつきあいをしておりました。私の父も、私がまだ小さかった頃から、将来はホッジャトと結婚するようにと、繰り返し言っていたものです。

そんなことから、23の時に、私はホッジャトと結婚し、同じ村で夫婦生活を始めることとなりました。婚約の日、婚資金を羊200頭に設定しました。私たちは部族的な生活を送っていたからです。

 この女性は、さらに次のように続けた。
最初の頃は、生活になんの問題もありませんでした。ホッジャトはよい人で、私が安寧で豊かな生活を送れるよう、全力を尽くしてくれました。ところが結婚から数年が経ち、二人の子供をもうけた頃、ホッジャトの仕事に暗雲が立ちこめました。そのため、私たちはテヘランへの移住を余儀なくされました。

テヘランに来た頃から、私とホッジャトの間には問題が生じるようになりました。私たちは毎日けんかをするようになり、いまではほんの些細なことでも口論が絶えません。私はもう、こんな生活に疲れました。別れたいと思っています。でも婚資金は、夫からしっかりと頂きます。

 女性の話が終わると、次に彼女の夫が判事に次のように申し立てた。「この女と暮らすなんて、もう我慢ができません。私も彼女と別れたいと思っています。でも彼女に婚資金を支払う力など、今の私にはありません」。

 アムーザーディー判事は問題の検討を行い、その他の離婚訴訟と同様、後日判決を下す予定だ。

 今回の女性は農村に暮らし、部族的な生活を営んでいたために、このような通常では考えられないような婚資金を自らの慣習にもとづいて設定したわけだが、いまや常軌を逸した婚資金を設定することが、テヘランの若い夫婦の間で普通のことになっている。ときには、社会の慣習や価値観に外れた婚資金が設定されることもあり、そのような婚資金は〔万が一離婚した場合に〕女性の自活に役立たないばかりか、不合理ですらある。

 アムーザーディー判事はこの問題について、次のよう指摘する。
これまでの例を見るならば、この種の婚資金、特に多額の婚資金を設定することは、夫婦生活の持続・強化を保証しないばかりか、むしろ夫婦間の緊張を生む原因となる。

例えば、婚資金として金貨1000枚を設定するケースがあるが、〔少ない〕労働賃金で生活をやりくりしている若者にとって、このような婚資金の支払いは事実上不可能である。法律では婚資金は〔離婚した妻からの〕要求があり次第支払われねばならないと規定している。そのため、女性側が婚資金の請求をした場合、約束〔の不履行〕が原因で、男性が収監されてしまうこともありうるのだ。

 アムーザーディー判事は、〔常軌を逸した婚資金の〕例として、次のような事例を紹介している。「結婚からたった半年の若い女性が、〔夫に〕婚資金として1363本のジャスミンの花を支払うよう求める訴えを、家庭裁判所に出した。この若い女性は、生年月日が1363年〔西暦1984年〕だったことにちなみ、1363本のジャスミンの花を婚資金として設定し、夫からこれを受け取ろうと家庭裁判所に訴え出たというわけだ」。

 この女性は、家庭裁判所第168法廷に入った際、アムーザーディー判事に次のように述べたという。
夫と結婚したとき、私は恋人として彼のことが好きでした。私は家族の反対を押し切り、エフサーン〔=夫の名前〕と結婚しました。ところが結婚から数ヶ月も経たないうちに、私と恋人だった頃にエフサーンが話していたことのすべてがウソだったことに、私は気がつきました。エフサーンには一度結婚したことがあったにも拘わらず、そのことを私に隠していたのです。

彼は策略を用いて、私の生活に入り込み、私をだましました。このようなわけで、私は彼を訴えます。婚資金1363本のジャスミンの支払いを要求します。この婚資金は、婚約の日にエフサーン本人の提案で設定されたものです。私は家族の反対を押し切り、これを受け容れました。

 アムーザーディー判事は、家庭裁判所には同様の訴えが〔数多く〕寄せられているとして、次のよう述べる。「このような婚資金は、金額に換算して、現金で支払われる。例えば、先述の63歳の女性は羊200頭の婚資金を請求したので、羊200頭分の金額に換算して、現金で支払われることになる」。

 アムーザーディー判事は、「常軌を逸した婚資金を設定する風潮は、やむ気配がない。残念なことに、今や常軌を逸した婚資金が設定されるばかりか、離婚の理由も耳を疑うようなものが多くなっている」とため息をつく。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
関連記事(イラン女性の婚資金の平均は金貨260枚から350枚)

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16382 )