Ertuğrul ÖZKÖK コラム:エヴレン元大統領との談話、「裁判なら、自殺を選ぶ」
2009年06月26日付 Hurriyet 紙

朝早い時間に、第7代大統領ケナン・エヴレンが電話してきた。いつもの生き生きとした元気な声はなく、年齢を思わせる印象が格段に増した声が聞こえてきた。

私はまず、「お体、お大事に」と言った。
私は、あの年齢での肺炎がどれほど危険なものかを知っている。
肺炎に続いて、心臓の血栓が診断されると、彼はバイパス手術を受けたらしい。
彼はイズミルの自宅から、ヤルカヴァクにある夏の別荘に行く準備をしていた。
もちろん、私たちは、共和人民党党首デニズ・バイカルが、1980年の9.12クーデター首謀者の裁判のために起した最近の動きについて話した。

彼は「私は92歳になった。もはや長生きし過ぎた」と語り始め、次のように続けた:

「彼らは1980年体制期の責任者らを裁判にかけという話を頻繁にもちだしている。私を裁判にかけようという者に、国の当時の状態を思い出させたい。1日に20人から25人の人が殺されていたのだ。カルス発のバスはエルズルムを、エルズルム発のバスはトゥンジェルを通過することができなかった。町の各地区は分断されていた。警察は、多数の地区に入ることもできなかった。つまり、我々は何もないので、この仕事にとりかかったとでも言うのだろうか。」

エヴレンは、裁判の法的な問題にも触れた。

「私を裁判にかけようというなら、次の点も覚えておいてもらいたい。トルコ国軍の国内任務法には、次の条項がある。ある命令が法に反し、それが犯罪であるなら、命令を下したものだけでなく、それを実施するものにも責任がある。9月12日の行動は、トルコ国軍の全ての構成員が行った。全員を罰するとでもいうのか。」

彼は続けた:

「我々は当時、憲法を整えた。1982年憲法を国民の投票にかけた。92パーセントという、世界でも稀な多数でもって承認されたのだ。国民が認めたこの憲法には、臨時の項目があった。それも認められた。それらの項目は何か?それらの中には、9.12(クーデター)の責任者らが裁判にかけられないと定めた項目もあった。」

エヴレンは、今後、かなりの反響を呼ぶだろう次の言葉で、話を締めくくった:

「今日、ミッリエト紙のあなたの同業者とも話した。彼にも言ったのだが、私を裁判にかけたいのか?どうぞ、行って人々に問うといい。国民投票をしてくれ。エヴレン将軍は裁判にかけられるべきか、と問いなさい。もし、人々が「裁判にかけるべきだ」と言うならば、私は私の国民の前で、みなに約束する。私は裁判という手間などとらせない。自殺する。」

彼は自分の言葉にどれほど本気であるかを示すためだろう、もう一度繰り返す:

「そう、はっきりと言う。私は自殺する。なぜなら、このような汚点をもって生きてはいられないからだ。」

***

この言葉は、1980年体制を作った側の、最高位から発せられたものだ。私は昨日、1980年体制の標的となった人たちの一人とも話をした。

9月12日クーデター以前、民族主義者行動党(MHP)の代表的理論家で、後年、文化観光大臣を務めたアーギャフ・オクタイ・ギュネルが電話してきた。

「こんにちは、兄弟。ご苦労さま」と彼は始めた。

「私は9.12クーデターの後、12ヶ月、刑務所に入りました。つまり実際のところ、9.12クーデターによりひどい目にあった政治家の一人です。しかし、君にこれを言っておきたい。この記事をかいた君を祝福するよ。もしも9月12日以前に、エジェヴィトとテュルケシュがイエスと言っていたなら、そして総選挙をやっていれば、9.12クーデターは起こらなかったはずだ。」

アーギャフ・オクタイ・ギュネル氏は、9月12日以前、自宅前で襲撃を受け、武器により怪我を負った:

「肩にまだ弾丸が残っています。もし摘出しようとすれば、少しでも敗したら腕が動かなくなるせいです。9.12クーデターのあと、刑務所内でエルバカンと遭遇しました。『バイラムの2日目に、我々を刑務所の中に閉じ込めた』と言って、彼は泣いていた。私は、彼に『先生、あなたはバイラムの初日に外に出られたんですか』と言った。皆、外に出られなかったのです。だから言うのですが、そう、9.12クーデターによりたしかに我々は政治から遠ざけられた、しかし、国は救われたのです。」

***

このコラムで、多くの人から批判されるのは承知の上だ。
私はクーデター主義でもなければ、軍にへつらうこともしない。
私はただ、ある時代の事実を書いている。
当時を経験したものは、そもそも知っている。
経験しなかったにも説明したかった。
これがすべてだ。
トルコでは最早、軍事クーデターなどは起こりえない。
なぜなら、我々の過去にはとても大きな痛みがあるからだ。

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( 翻訳者:林奈緒子 )
( 記事ID:16801 )