ナブッコ・パイプライン・プロジェクト、関係各国首脳参加のもと歴史的な調印式
2009年07月13日付 Hurriyet 紙


カスピ海の天然ガスをトルコ経由で欧州に運ぶことになる、総費用79億ユーロの「ナブッコ・プロジェクト」において最初の大きな一歩が踏み出された。アンカラで、パイプラインが通過する5ヵ国の首脳とともにプロジェクトを公式に始動させたタイイプ・エルドアン首相は、「ナブッコ・プロジェクトは欧州連合(EU)加盟プロセスに新しい息を吹き込むだろう」と話した。

7年前にトルコの国営石油ガス・パイプライン輸送公社(BOTAŞ社)がオーストリアのOMV社との共同事業として始動させたナブッコ天然ガス・パイプライン・プロジェクトは、パイプライン通過5ヵ国の首脳たちの参加により昨日(13日)アンカラで正式に調印された。タイイプ・エルドアン首相は、オーストリアのヴェルナー・ファイマン首相、ブルガリアのセルゲイ・スタニシェフ首相、ハンガリーのバイナイ・ゴルドン首相、ルーマニアのエミル・ボック首相、そしてEU委員会委員長ジョゼ・マヌエル・バローゾをアンカラに迎え、ナブッコ・プロジェクトを一部の国の参加のみによって実現するエネルギー・プロジェクトと考えるべきでないと主張した。このプロジェクトをめぐって、一部の国が「絵空事」と呼んだことについて遺憾の意を示したエルドアン首相は、同時期にバクー・トビリシ・ジェイハン・パイプラインプロジェクトも同様に批判されていたことに言及した。

■ 歴史的な調印式
エルドアン首相は、カスピ海とカフカス地域における天然ガスを、トルコ経由で欧州へ通すために計画されているナブッコ・プロジェクトの政府間協定の調印式で初めて声明をだし、これは「歴史的瞬間」であるとした。そしてこのプロジェクトがトルコのEU加盟にとって新たな息吹となると強調した。エルドアン首相の声明は以下の通り。

■ 協定はまだ始まったばかり
私たちはこの協定によってナブッコ・プロジェクトを実行に移し、プロジェクトの法的な基盤を作り上げている。プロジェクトを完成させ、ガスの供給を始めれば、この地域はあらゆる点で、プラスの意味で現在とは異なる状況になるだろうと私は考えている。ナブッコ・プロジェクトにおける協定が調印されたことによって、仕事が終わったのではない。むしろ新たに始まったのだ。今後支援国およびナブッコ・インターナショナル社による重要な取り組みが必要となるような、一つのプロセスが始まる。ナブッコ・プロジェクトの実現が他のプロジェクトを加速させることになると信じている。トルコは、再びエネルギーの架け橋としてこの使命を進める。

■ 単なるエネルギーではない
ナブッコ・プロジェクトを一部の国の参加のみで実現するエネルギー・プロジェクトだと考えるべきでない。単に私たちの都市や人々を照らし、暖め、私たちにエネルギーを供給するプロジェクトについて語っているのではない。参加国の間に存在する友好関係や協力関係は、このプロジェクトによってさらに頑強なものとなり、深まるだろう。このプロジェクトはこの地域すべての富、平和、安定の構築にも頑強な土台となるだろう。

■ 絵空事だと言った人々への喚起
周辺の一部の地域のひとたちは、ナブッコ・プロジェクトを絵空事だと今でも言っている。しかし、同時期にバクー・トビリシ・ジェイハンガスパイプも絵空事だと考えられていたことを忘れてはいけない。今日このパイプは成功を収め、始動しているにとどまらず、パイプの容量の増大に向けた取り組みも始められている。ナブッコ・プロジェクトもこの否定的な見方を覆し、成功の物語として、我らが国のために、予定された時期に事業を開始することになると私は信じている。

■ 数字で見るナブッコ・プロジェクト
プロジェクトは2010年に建設が開始され、2014年までに完成される予定。投資総額は79億ユーロになる見通し。

■ 建設段階でトルコには45億ユーロの投資と5千人から1万人もの雇用が見込まれる
ナブッコ・パイプラインは総延長3300キロメートルに達する予定で、総費用は79億ユーロと計算されている。

パイプラインはうち2000キロメートルがトルコ国内を通過する。これに関しナブッコ・プロジェクトにおいて見込まれる税収のうち約60%がトルコに入る見通し。これによりトルコに実質年間40億から45億ユーロの収入が見込まれる。

■ エルドアンの要望
タイイプ・エルドアン首相は、トルコが基本的な構想を打ち出したナブッコ・プロジェクトに対し、当初から今日まで支援を行ってきたと話し、まだこのプロジェクトに参加していない国々に対しても、次のメッセージを発した。
「プロジェクトの初めにおいて、アゼルバイジャンのガスを運搬すると予定されていた。その後の段階ではトルクメニスタン、イラク、シリア、エジプト、そして液化天然ガスについてはいわゆる油槽船による運搬方法を用いることで、カタール産の天然ガスをもこのサイクルに入れることを私たちは望んでいる。条件が許すならイラン産のガスと、おそらくロシアのガスもナブッコ・プロジェクトによって欧州に運ぶことが可能になるだろう」

また、エルドアン首相は、ナブッコ・プロジェクトによって、初めて(ロシアに頼らない)代替ルートを通ってカスピ海天然ガスが欧州に運ばれると指摘し、次のように述べた。
「イラクがこのプロジェクトにおいて示した支援と貢献はトルコにとって大きな力となった。今後の段階において、ナブッコ・インターナショナル社は、賛同するすべての国とともにプロジェクトへの支援協定の取り組みを開始し、これらについても半年以内に完了させようと考えている」

■ アゼルバイジャンはナブッコ・プロジェクトについて最も意欲的な国のひとつ
アゼルバイジャンのナティク・アアリエフ・産業エネルギー大臣は、アゼルバイジャンがナブッコ・プロジェクト開発に関して大変意欲的な国のひとつだと話し、東西エネルギー回廊となるカスピ海ルートと地中海ルートが重要だと考えていると述べた。そして、「私たちは天然ガス・パイプラインに関してあらゆる面について支持する。プロジェクトを実現するためには柔軟性が必要である。商業的な観点から収益性が重要となり、同時に安定したエネルギー市場を我々は必要としている」と話した。アゼルバイジャンが石油についてもガスについても生産国であることに触れたアリエフ大臣は、バクー・スプサ・ライン、バクー・トリビシ・ジェイハン・ラインそしてバクー・トリビシ・エルズルム・ラインといったプロジェクトによって、ガスについても石油についても生産を増大させることを考えていると述べた。

■ パイプラインにガスを供給したい
イラク首相のヌーリー・アル・マーリキーは、トルコと他の参加国に対しナブッコ・プロジェクトの成功を祝い、次のように述べた。「イラクとしては経済的繁栄に参加することが重要であると考えている。メソポタミアの大地の豊かさをほかの地域に分け与えることができて嬉しく思う」。マーリキー首相は、この豊かさが近年の戦争と独裁者らによって浪費されていると指摘し、このプロジェクトに対しイラクも協力し、そしてまたガスの量も増量できるだろうと話した。

■ 6ヶ月以内に始動
賛同国が調印をした政府間ナブッコ協定の原文によれば、6ヶ月以内に、ナブッコ・インターナショナル社と「プロジェクト支援協定」を締結し終えるために必要なすべてのプロセスを開始する見通し。賛同国は、協定が最短のプロセスで実行されるため、それぞれの国内法に関し必要な事項を実行する予定。

■ 330人の取材陣が注目
ナブッコ・プロジェクトの調印式を取材するため、総勢100ヶ国、約330人の取材陣が集まった。記者らは(調印式の会場である)ホテルの入り口で、首相府警備官によるセキュリティーチェックがなされるや、長い列をつくった。婦人警官がその場にいなかったため、女性記者らが大騒ぎをした。

ホテルの中につくられたプレス・センターでは、調印式が始まるや、別の問題がおこった。調印式についてプレス・センターからの取材のみが許可されたためだった。

しかし、この間にマイクのトラブルが起きた。エルドアン首相のスピーチが始まるや、プレス・センターに音が入らなくなってしまった。また、マイクのトラブルに続いて、同時通訳が不能になるトラブルが起きた。

■ 「経済危機からどのように脱するか」ということの象徴
ハンガリー首相ゴルドン・バイナイ氏は、長期にわたり空前の世界的経済危機の真っただ中にいることに触れ、こうした危機においては一般に国内の(経済的)保護主義に偏り、各国の協力体制が崩れるが、しかし、ナブッコ・プロジェクトの始動により、こうした傾向とはまったく逆のことを証明したと話した。バイナイ首相は、EUがこれまで前例のないプロジェクトを取り上げていると指摘し、次のように話した。

「プロジェクトは私たちのような国が経済危機をどのように打開するかについて、世界に与えることになる最も重要なメッセージとなるだろう。そして自らの国民のために、協力、連動、統合によって危機を脱することになるというメッセージを、ベストな形で示すつもりだ。このプロジェクトはこれらすべてを象徴し、出発点での目標をはるかに超えている。一刻も早く「プロジェクト支援協定」が調印され、各国で最高のナブッコ・プロジェクト運営委員会が発足することを願っている。プロジェクトの完成には、最高レベルでの配慮をプロジェクトに向ける必要がある」

バイナイ首相は、プロジェクトの重要性が単により多くのガス調達を可能にするためという点にあるのではなく、プロジェクトがすべての国民に影響力を持つことになる、政治的、経済的、そして社会的な重要性を持っているということを述べ、ナブッコ・天然ガス・パイプラインの影響力は、パイプラインが通過する国々にとどまらないであろうと話した。

■ 挑戦ではなく、協力が問われるプロジェクト
各国首脳が行ったスピーチによりこのプロジェクトの重要性が強調される一方で、パイプラインのもう一つの出発点となるオーストリア首相ヴェルナー・ファイマンは、「これは挑戦ではない。協力が問われるプロジェクトだ」と話した。
ナブッコ・プロジェクトは、エネルギーを供給する国と消費する国の間での事業協力という観点で、重要であると指摘するファイマン首相は、次のように語った。

「欧州の政策の基本にはエネルギー供給の安全保障がある。ナブッコ・プロジェクトは欧州のエネルギー政策にとってとても大きな助けとなるだろう。『ともかく私たちにはガスがある』という時代はすでに終わった。ナブッコ・プロジェクトの目的はEUにとってもトルコにとっても、供給源の多様化である。今後新たなエネルギー供給国と追加のルートも協議されうる」

欧州にとって天然ガスの需要は今後継続して増加するだろうと指摘するファイマン首相は、「天然ガスは石油よりも埋蔵量が多く、エネルギーの多様性という点で鍵を握る。今後10年でEUのエネルギー総需要の3分の1を賄うようになるだろう。EUは、アメリカに続く2番目に大きなエネルギー消費国だ。今後20年間でエネルギー資源の90%を必要とするようになる」と話した。そして、彼らにとって重要なのは、さまざまなエネルギーが環境に配慮したものであること、そして需要が最も効果的に賄えるエネルギー資源を持っていることであるとし、世界的経済危機には、この問題で、どんな形でもイニシアチブを取らせないと話した。

■ EUによるプロジェクトへの支援は投資者へのメッセージだ
ルーマニアのエミル・ボック首相は、EUがナブッコ・プロジェクトに関わり、支援していることが、投資者たちに対し重要なメッセージを与えているとし、トルコはEUと欧州のエネルギー供給安全保障にとって重要な仲間であると述べた。ボック首相は、プロジェクトがエネルギー安全保障と経済的実用性という2つの点で重要であるとし、「エネルギーの安全保障という点では、いくつかの対策がとられ、戦略が示されることが必要である。この点でナブッコ・プロジェクトはエネルギー源とルートの多様性という観点から重要だ」と話した。ボック首相は、ナブッコ・プロジェクトは経済面で実用性があり、投資者の立場から見ても魅力的だと話し、「このプロジェクトは特定のひとや地域に対抗してのものではない。この地域にとって大変意義のあるプロジェクトだ」と述べた。欧州が今年初めからエネルギー危機に面していることに触れた首相は、この点からもエネルギーに関する話題はとても重大であると語った。そして、「このプロジェクトは特定のひとや地域に対抗してのものではない。あらゆる地域にとって重要なプロジェクトだ」と話した。

■ プロジェクトにより、かのシルクロードが復活する
グルジアのミへイル・サーカシヴィリ大統領は、トルコに対しその貢献に感謝の意を述べ、ナブッコ・プロジェクトが単なるエネルギー・プロジェクトに留まらず、同時に各国の協力体制の発展に向けた協定となっていると述べた。サーカシヴィリ大統領は、「今日、このパイプラインによって、これまでの常識が覆された」と話し、「ナブッコ・プロジェクトによりかのシルクロードが復活した。そしてシルクロードのように重要な役割を果たすと信じている」と述べた。EU委員会委員長ジョゼ・マヌエル・バローゾによる貢献がなければこのプロジェクトは実現できないだろうと指摘するサーカシヴィリ大統領は、「このプロジェクトは当初だれもが絵空事だと思っていた。ナブッコ・プロジェクトは前例のないプロジェクトだ。こんなにも大きな規模でのプロジェクトはこれまで考えられなかった」と話した。そして、エネルギー源の多様性は大変重要であり、この点でナブッコ・プロジェクトはとても意義があると語った。

■ 協力体制に疑いの目をもっていたひともいた
ブルガリア首相セルゲイ・スタニシェフは、各国が調印した政府間協定はプロジェクトにとって重要な節目に当たると述べ、次のように話した。「ナブッコ・プロジェクトに関する最初の構想が生まれてから、どれくらいの時間が経ったであろうか。政府間協定に調印がされたこの日まで、長い時間が過ぎた。ヨーロッパ復興開発銀行とヨーロッパ投資銀行に多大な感謝を述べたい。このプロジェクトは最先端を行くものであり、意義のあるモデルだ。公共事業と民間事業の事業協力がこんなにも大きな規模で実現されようとしている」。そしてナブッコ・プロジェクトに対し疑問視しているひとたちがいることに触れ、「同時期にバクー・トリビシ・ジェイハン・パイプライン・プロジェクトへも同様に疑いの目が見られた。今日調印した協定が、プロジェクトの成功にとって重要なしるしとなる」と述べた。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:萩原絵理香 )
( 記事ID:16936 )