宗教指導者ら、中国ムスリムへの弾圧に対するイラン政府の沈黙を批判(2)
2009年07月13日付 E'temad-e Melli 紙

 世界で最も人口の多い中国のムスリム居住地域で発生した今回の騒乱に対して宗教指導者たちが反発を強める中、イラン・イスラーム共和国の外交当局はこれまでのところ、中国政府に対して毅然とした対応を示していない。中国での出来事に対するイラン当局の対応からは、イラン政府が今回の問題は内政問題であるとする中国政府側の主張を、(たとえ公然とではなくとも)陰に認めているということ、そしてイスラーム国家として中国政府に対して相応の圧力をかける気がないことが分かる。

 ドイツのある裁判所で、ヘジャーブを身につけた女性が殺害された事件に対してイランが示した公式の対応と、中国によるムスリム弾圧に関するイラン当局の発言とを比較すると、第9期政権の外交当局の行動に見られるダブルスタンダードはより鮮明なものとなる。

 一方にはドイツ人人種主義者によって裁判所で襲撃され、殺害された妊娠中のエジプト人女性(彼女は殺害犯を告訴していた)がおり、他方には中国政府の支持のもと殺された数百人の中国人ムスリムがいる。

 最初のケースについて、イスラーム共和国政府関係者は事件発生後ただちに、この犯罪を非難したが、2番目の惨劇については、規模のはるかに大きな事件であるにも拘わらず、いまだ明確な立場を示していない。イラン政府は現在、この二番目のケースについて状況を調査中とのことだが、二つの事件はどちらも同じ時期に発生したもので、時間的な前後はほぼないといっていい。

 先週木曜日、テレビ第一チャンネルの21時のニュースでトップを飾ったのは、85年〔2006/7年〕冬に米軍によって拘束されたイラン人領事関係者5名がイラクのアルビールで釈放されたニュースだった。このときイラン国営放送は、ハサン・ガシュガーヴィー外務報道官に、生放送でイランの最重要外交問題について話す機会を与えたのだが、ニュース解説の司会者の質問に対する同報道官の回答の中に、〔イラン外交が抱える〕ダブルスタンダードがよく示されている。

 ガシュガーヴィー報道官はマルワ・アッシャラビーニー殺害を非難するイラン側の公式の立場について話し、外務省もこのことについて声明を発表したことを明らかにした。しかし報道官は、中国での出来事についてはこれといった立場を示すことなく、イスラーム諸国と協議をしていること、状況について検討中であることを指摘するのにとどまった。

 革命後のイラン外交当局にとって、世界中のムスリムが置かれている状況がつねに関心の中心を占めてきた。別の言い方をすれば、イラン政府は過去30年間、イスラーム諸国、及び非イスラーム諸国に住むムスリムたちを自らの影響圏内にあるものとして捉えていたのであり、またそれを通じて自らの戦略的立場を深化・拡大させようと努力してきた。

 レバノンやパレスチナ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、インドといった国々で起きた出来事について、イランは積極的かつ迅速な対応を取ってきたが、それもこのような前提から分析することができる。しかしながら、このようなマクロな外交政策にも、公然と言及されることのない、非公式的な「しばり」が存在してきたのも事実であり、イラン政府の外交政策に見られるダブルスタンダードも、このような観点から理解することができる。

 イスラーム世界、そして非イスラーム社会におけるムスリムたちの状況に対するイランの強い関心は、世界の政治地理に従属してきたのであり、その際の主な変数こそ、「イランとの政治的関係」というものに他ならない〔=つまり、欧米諸国との政治的関係は良好ではないので、ドイツでムスリム女性が殺害されれば、すぐにでもドイツ批判の声明を出すが、中国とは政治的関係が良好なので、多数のムスリムが殺害されても何も言わないということ〕。このような分析枠組みから見れば、イラン外務省のダブルスタンダードな行動は想像に難くない。実際、イラン外交における多くの曖昧さ・疑問は、この枠組みから考えるならば即座に解決してしまう。

 例えば、なぜ原理派の学生組織はドイツ大使館の前で抗議集会を開き、タマゴを投げつけたりするのに、中国大使館の前では誰もこのようなことをしようとしないのか。なぜテヘラン金曜礼拝後にマルワ・アッシャラビーニーさんの模擬葬式は行われたのに、中国人ムスリムたちの遺体を象徴する棺を目にすることはないのか。

 これらの疑問に対する答えは、中国国家主席がマフムード・アフマディーネジャードに与えた、早すぎる祝辞の中に見出すことができる。つまり中国政府は、イラン大統領選挙後の混乱はイランの内政問題であると判断したということであり、それゆえ今度はイラン政府が、中国が同国市民にいかなる対応を示そうとも、中国政府の主権として認めなければならない番になった、ということなのである。

 これと同じことが、数年前、イランのもう一つの東側同盟国、つまりロシアについても起きた。ロシアがチェチェン人ムスリムを弾圧したことに対して、イランは厳しい立場を取ろうとしなかったのである。

 このような中、今や〔イスラーム共和国を名乗る〕イラン当局よりもはるかに厳しい立場を中国に対して取っているのは、ムスリム国家ではあるが世俗主義国家であるトルコの指導者たちである。例えば、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン首相はイタリアで開かれたG8サミットのかたわらで行われた記者会見の中で、新疆自治区のウイグル人ムスリムたちへの殺戮をジェノサイドと表現し、ジェノサイドの終結と流血の惨事を招いた責任者の処罰を求めている。

 エルドアン首相は、中国政府に対して執拗に事件の責任者を特定し、処罰するよう求め、「罪なき数百人の人々が殺害され、千人以上が負傷していることに対して口を閉ざすことは、到底あり得ないことだ」と述べている。国連安全保障理事会の持ち回り議長国であるトルコのエルドアン首相はまた、同理事会でこの事件を調査するよう呼びかけ、さらに今回の衝突が今後も続くようなことになれば、ウイグル系トルコ人指導者ラビーア・カディールをトルコに招待すると宣言している。

 新疆自治区はムスリムたちが居住する地域であり、民族的には主にウイグル人が占めている。彼らの言語はトルコ語に近く、各種統計によると、新疆には約830万人のウイグル人が住んでいるという。先週発生した暴力的な衝突では、少なくとも156名が死亡している。

 中国政府は治安の回復のために、金曜日、新疆自治区のウルムチ市内のモスクを閉鎖し、ムスリムたちによる金曜礼拝が行われないようにした。中国政府はそのために、暴動鎮圧部隊を市内の各モスク周辺に配置したが、ウルムチ市のあるモスクの管理者は金曜礼拝実施を求める礼拝者たちの要請を受けて、モスクの扉を開けたという。

 新疆自治区中心部で発生した衝突は、ムスリムによるデモが発端であった。このデモは、先月、漢族系中国人との衝突で2人のムスリムが殺されたことへの抗議のために行われたもので、同地区のムスリムたちは〔2人のムスリムを殺害した〕人々の処罰を求めていた。

 他方、昨日午後イランのマヌーチェフル・モッタキー外相は中国外相と電話で会談し、イスラーム諸国及びウラマーたちの間に存在する懸念を伝えた上で、事件の詳細について中国外相から説明を受けた。モッタキー外相は中国国民の連帯と団結を強調しつつ、ムスリムの安全確保の必要性についても言及した上で、中国情勢の混乱を狙った外国人による介入は、いかなるものであれ許されないとする立場を示した。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:16969 )