イランもペット・ブーム
2009年08月06日付 E'temad-e Melli 紙

【アミール・ハーディー・アンヴァリー】犬を飼うことは、もはや護身のためでも警備のためでもない。犬を飼うことはかつて、警備上の理由であれ、ペットとしてであれ、特別な階層に限られる行為だった。しかし近年、ペット犬を飼うことは社会の一部にとって、一種の流行となっている。

 テヘラン市北部のハイウェー脇を見てみるとよい。果物箱の中に子犬がいる姿を目にすることがある。そばにいる男性は、「ウチのドーベルマンが子犬を生んだんだ。経済的な問題から売っているんだ」と主張する。しかし、こういったちっちゃなドーベルマンの子犬は6ヶ月もすると、結局野良犬となって街中をうろつくことになる。

 犬の血統など、この際どうでもよい。道ばたで子犬を売る販売業者、犬を売るペット店の増加、犬のインターネット販売の普及‥‥これらはみな、犬を買おうという需要が社会で広がりを見せている証拠だ。

ニセの血統書

 犬の販売店は、テヘラン北部やイラン北部の都市に多い。ここで「販売店」ということばを使っているが、きちんとした「店」ではない。これらの「店」はたいてい、会社としての登記番号を有しているだけで、関係機関から特別の営業許可を得ているわけではない。こうした店の店主たちは、動物の飼い方や習性などについて、経験に基づいた生半可な知識しかないまま、利益の多いこの商売に参入しているのだ。

 実際、彼らの「店」は、インターネット上にある。彼らはオンライン・ストアに広告を載せ、「全犬血統書付き」などとうたっている。血統書があれば、犬の値段は数倍にもなる。しかし「血統書」は実際には、どれだけの値打ちがあるのだろうか?どの犬種の犬も、クリニックに行って簡単な診察を受け、5〜6千トマーン〔約500〜600円〕も出せば、立派な血統書付きの犬となるというのが実態だ。そして暴利をむさぼる業者らは、この血統書によってときに、犬を数十万トマーン〔約数万円〕で売りつけるのである。

アルメニアから来た「ドイツ犬」

 インターネット販売業者の中には、直接海外から、外国の血統書付きで輸入した犬を取り扱っているとうたっているところもある。ガード犬については、ドイツから輸入したとのうたい文句が多い。しかしドイツの犬はきわめて高価であり、輸入をしても経済的に元が取れるとは到底思われない。

 犬の輸入の大半は、非正規の方法で行われている。彼らは、犬は合法的な方法で輸入されていると主張しているが、(彼らが言う)1週間以内に合法的に犬を国内に持ち込むことなどどうしてできるだろうか。

 もし善意に解釈して、販売業者が本当に公正な人々であるとしても、彼らはアルメニアやタジキスタン、ロシア、あるいはタイから犬を持ち込んでいることは間違いない。持ち込まれた子犬の一部にはニセの血統書が付き、何も知らないイラン人購入者はそのことに気が付かない。この血統書には、〔血統書を発行した〕動物クリニックの名前や住所が書き込まれているが、実体のないものばかりだ。

 イランでは犬の輸入はまだ一般的ではなく、〔イヌの血統などについて〕よく知っている人もいないため、こういった血統書が本物であるか調査することは困難だ。これはつまり、イラン北部の農村地帯で生まれた子犬が、ドイツ産の子犬として本物かどうか疑わしい血統書付きで売買されていることもある、ということでもある。

診療代3万トマーンなり

 犬を公共の場所で散歩させることは禁止されていることに加え、当局も社会の中で動物を飼うことに対してあまりよい見方をしていないこともあり、犬の診療を行う動物病院に対する監督機関も、イランにはこれといったものが存在しないのが実態だ。

 その結果、〔テヘラン北部の〕カームラーニーイェ地区にある動物病院では、一般的に3ヶ月に一回行われる犬の定期検診に3万トマーン〔約3000円〕もかかるという事態となっている。診療代が最も安いテヘラン大学診療所で、1万トマーンである。

 別の問題も起きている。診療所の中には、治療のために飼い主から預かった犬が「実験用」の動物になってしまうケースもあるのだ。他の国々では、ペット動物に対する手術は一般的なことだが、イランではまだまだ最近のことだ。手術をすることのできる動物病院は、数だけでなく、質の方も限られているのである。

 手術のなかで一般的なのは犬猫の不妊手術だが、一頭の犬に不妊手術を施すのに最低でも20万トマーン、最大で50万トマーンの出費がかかる。この手術は時に、他の国では考えられないような不衛生な状態で行われることもある。

 このような状態がきちんとした監督もなく野放しになっていることが一因となって、就職に困った医科大学の卒業生たちのなかには、非正規の診療所を開き、彼らが専門とする「人間」を診察する代わりに、動物の治療に勤しむ者もいる。

 一部の(全ての、ではない)利益第一主義のドクターは、一方で監督を行う専門機関がないことをいいことに飼い主から法外な診察代を請求し、他方で自ら薬剤やペット用具などを輸入して、サイドビジネスで巨利を貪っている。このような中、これといった監督も、営業許可もないために、彼らは事実上税金の支払いも逃れているのである。

〔後略〕

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17162 )