閣僚候補の半数が博士号取得者:女性閣僚指名に賛否分かれる
2009年08月23日付 Iran 紙

自身、工学(交通計画)の分野で科学産業大学から博士号を取得しているマフムード・アフマディーネジャード大統領は、閣僚候補の半数を博士課程で学んだ経歴を有する人々の中から選び出した。

 イラン国営通信の報道によると、アフマディーネジャード大統領が指名した閣僚候補たちの学歴を調査した結果、指名された省に関係した分野を専門とする博士号を取得している人々が大勢を占めていることが分かった。

 教育相候補、経済財政相候補、保健相候補、協同組合相候補、農業ジハード相候補、道路運輸相候補、科学研究技術相候補、文化イスラーム指導相候補、労働社会問題相候補、石油相候補、及び商業相候補の各候補は博士号を保有している。

 教育相に指名されたスーサン・ケシャーヴァルズ候補は教育哲学の分野で博士号を、経済財政相に指名されたセイエド・シャムソッディーン・ホセイニー候補は経済学(公共部門)の博士号を取得している。保健相に指名されたマルズィーイェ・ヴァヒード=ダストジェルディー候補は女性医学博士であり、協同組合相に指名されたモハンマド・アッバースィー候補は経営学の博士号を、農業ジハード相に指名されたサーデグ・ハリーリヤーン候補は経済学(天然資源)の博士号を、道路運輸相に指名されたハミード・ベフバハーニー候補は道路・建設の分野で博士号を、科学研究技術相に指名されたカームラーン・ダーネシュジュー候補は航空工学で博士号を、文化イスラーム指導相に指名されたセイエド・モハンマド・ホセイニー候補はイスラーム法学・イスラーム法基礎の分野で博士号を、石油相に指名されたマスウード・ミールカーゼミー候補は産業工学の博士号を、そして商業相に指名されたメフディー・ガザンファリー候補も産業工学の博士号を取得している。〔※なぜか漏れてしまっているが、労働社会問題相に指名されたアブドッレザー・シェイホルエスラーミー候補は科学産業大学から開発工学で博士号を取得している〕

 さらに、福祉相に指名されたファーテメ・アージョルルー候補は博士課程で教育心理学を、国防軍需相に指名されたアフマド・ヴァヒーディー候補も同じく博士課程で戦略学を、現在それぞれ専攻している。通信技術相に指名された産業工学の技師であるレザー・タギープール候補も、現在博士課程で経営学を学んでいる。

 また、外相候補、住宅都市開発相候補、電力相候補、内相候補もそれぞれの省に関係する分野で修士号を取得している。

 外相に指名されたマヌーチェフル・モッタキー候補は国際関係論の分野で、住宅相に指名されたアリー・ニークザード候補(開発工学技師)は国家管理学で、電力相に指名されたモハンマド・アリーアーバーディー候補は建築学で、それぞれ修士号を取得している。内相に指名されたモスタファー・モハンマド・ナッジャール候補も行政学(戦略管理系)で修士号を保有している。なお、鉱工業相に指名されたアリー・アクバル・メフラービヤーン候補は、閣僚候補の中で最も若く、また学士号しか有していない唯一人の人物である。同候補は、大学では開発工学を学んでいた。

 なお、情報相と司法相に指名されたモスレヒー候補及びバフティヤーリー候補はいずれもイスラーム神学校で教育を受けた経験を有する人物で、そのうちモスレヒー候補はイスラーム法学及び法源学の上級コースで学んだ経歴を持っている。

閣僚候補は全国から

 調査の結果、第10期政権の閣僚として大統領が指名した候補たちは全国14の州の出身者であることが分かった。そのうち、テヘラン州出身者が最多で保健相候補、福祉相候補、内相候補、石油相候補の4名がテヘラン市生まれである。また、ゴレスターン州、ファールス州、エスファハーン州、及びマーザンダラーン州からもそれぞれ2名の閣僚候補が出ている。

 モハンマド・アッバースィー協同組合相候補はゴレスターン州ゴルガーン出身、マヌーチェフル・モッタキー外相候補は同州ダルギャズ出身である。

 道路運輸相に指名されたハミード・ベフバハーニー候補、及び国防軍需相に指名されたアフマド・ヴァヒーディー候補はそれぞれファールス州出身だ。モスレヒー情報相候補及びメフラービヤーン鉱工業相候補はエスファハーン州出身で、前者はシャフレザー、後者はハーンサール生まれである。

 マーザンダラーン州からは、アブドッレザー・シェイホルエスラーミー労働相候補、及びセイエド・シャムソッディーン・ホセイニー経済相候補がいる。前者はチャールース、後者はタンカーボン生まれである。

 ギーラーン州、フーゼスターン州、東アゼルバイジャン州、セムナーン州、ケルマーン州、アルダビール州、中央(マルキャズィー)州、ロレスターン州、及びホラーサーン・ラザヴィー州からはそれぞれ1名の閣僚候補が選ばれている。

 スーサン・ケシャーヴァルズ教育相候補はギーラーン州ルードバール生まれ、レザー・タギープール通信相候補は東アゼルバイジャン州マラーゲ生まれ、サーデグ・ハリーリヤーン農業ジハード相候補はフーゼスターン州アフヴァーズ生まれ、カームラーン・ダーネシュジュー科学相候補はセムナーン州ダームガーン生まれ、セイエド・モハンマド・ホセイニー文化イスラーム指導相候補はケルマーン州ラフサンジャーン生まれ、アリー・ニークザード住宅相候補はアルダビール州アルダビール生まれ、モハンマド・アリーアーバーディー電力相候補は中央州アラーク生まれ、モルタザー・バフティヤーリー司法相候補はホラーサーン・ラザヴィー州聖地マシュハド生まれ、メフディー・ガザンファリー商業相候補はロレスターン州アリーグーダルズ生まれである。

女性閣僚に対する賛否

 アフマディーネジャード大統領が3名の女性閣僚候補を指名したことで、これまで歴代の大統領らが約束しつつも果たされてこなかった公約が実現した。大統領のこの決断に対し、一部の国会議員や、イマーム・ホメイニーが運動の指導者たちと呼んだ女性たちから広く歓迎の声が上がる一方で、反対する声も聞かれた。

 このことに関し、《イマームと最高指導者の路線を支持する戦線》のスポークスマンは、アフマディーネジャード大統領が3名の女性を閣僚候補に指名したことは革新的だと評価し、次のように述べている。「われわれには、性別がどうという考え方はない。女性であろうと、男性であろうと、有能であるかどうか、専門知識があるかどうか、個人的な資質があるかどうかなど、国会が考える基準に従って、全ての閣僚候補を審査するだけだ。われわれは人間性を見るのであって、性別を見るのではない」。

 国会の保健衛生委員会の運営委員も、大臣ポストに女性がいることは極めて前向きなことだと評価した上で、「大臣になるだけの能力や経験のある人物が選ばれ、今回の経験が失敗に終わることなく、将来にわたって継続されるならば、今回の〔大統領の〕決定は前向きなものである」と語る。

 アリー・アクバル・カーイーディー議員は、国の人口の半分は女性が占めており、管理部門に女性を登用しようというスローガン(第10期政権のスローガンの一つが、女性の閣僚への登用だった)を考えるならば、女性たちがこの分野で活躍することは彼女たちの権利の一つである、との見方を示す。

 このことに関し、国会運営委員会の委員の一人であるジャハーンバフシュ・モヘッビーニヤー議員も、女性閣僚が内閣に参加することはめでたいことだと強調し、「〔女性の閣僚登用は〕今回が初めてであり、もし行政手腕が高く経験も豊富であることを理由に彼女たちが選ばれたのであれば、今後にとってよい経験となるだろう」と指摘する。

 これに対して、女性閣僚を指名したアフマディーネジャード大統領の前例のない決定に対して、一部のウラマーからは不満の声も聞かれる。

 マシュハド金曜礼拝導師のアーヤトッラー・セイエド・アフマド・アラム=アルホダーは先の金曜礼拝での説教で、女性は能力などの点で男性と何ら変わらず、女性は男性よりも能力が低いとか、男性は女性よりも有能だとかいうことはないと強調しつつ、「イスラームでは、男性と女性が担うべき家族的な義務と社会的な義務は〔性別にしたがって〕分けられている〔=男性には男性の、女性には女性の社会的・家族的義務がある〕。イスラームという明確なる宗教には、性のアパルトヘイトは存在しない」と指摘した。

 同氏はさらに、女性の能力や貢献を活用してはならないということを言いたいのではないと述べた上で、「イスラームでは女性と男性の義務の範囲は、社会的・家族的領域で明確化されている。指導者や思想家は、これらの範囲について腰を据えて考え、〔社会に対して〕示さなければならない」とも語った。

 アーヤトッラー・アラム=アルホダーはその上で、次のような論を展開する。曰く、この世では〔預言者ムハンマドの娘で初代イマーム・アリーの妻である〕ファーティマ・ザフラー閣下よりも力のある女性、知識のある女性、有能な女性、手腕のある女性は存在しない。預言者ムハンマド及びイマーム・アリーがメディナを不在にし、誰かがメディナを治めなければならなくなった時、ファーティマ閣下にそれを任せたことは一度もなかった。しかし自らの義務にしたがい、預言者ムハンマドによるイスラーム革命後の反動と対決しなければならなくなった時には、ファーティマ・ザフラー閣下は一人で〔闘いの〕場に姿を現し、〔反動に対して〕抵抗し、対決した。その結果、「アリーこそ神の友なり」を唱える人〔=シーア派信徒〕が、現在3億人を数えるようになった。これこそが、ザフラー閣下の勇気の結果であり、イスラームにおいて責任が〔性別によって〕分けられていることの賜物なのである。

 同様に、エスファハーンの最高指導者代理で金曜礼拝導師であるアーヤトッラー・セイエド・ユーソフ・タバータバーイーネジャードも金曜礼拝での説教で、教育相や保健相に女性が指名されたことを批判している。

 さらに、国会の宗教指導者クラブの会頭を務めるホッジャトルエスラーム・ヴァルモスレミーン・モハンマド・タギー・ラフバル議員も、アフマディーネジャード大統領が3名の女性閣僚候補を指名したことに対して、ゴムのウラマーやマルジャエ・タグリード〔シーア派の宗教最高権威〕たちが不満を抱いていることを明らかにしている。

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( 翻訳者:斉藤正道 )
( 記事ID:17295 )