ラマダーン月のエジプトで、エアコン付きモスクに居座る人々が問題化

■　ラマダーン月の間、エジプトのエアコン付きモスクは暑さから逃れる「断食者たちのホテル」と化す
■　礼拝する人よりも多い、モスクで寝ている人々

2009年08月25日付クドゥス・アラビー紙（エジプト）HPコラム面

【カイロ：本紙フサーム・アブーターリブ】

　気温が摂氏40度近い炎天下で、エジプト人は断食時間が1日に18時間〔訳注：おそらく“12時間”の誤り〕を越えるという難関となった今年のラマダーン・シーズンを迎えた。

　殺人的な熱気に直面した断食者たちは、特に首都カイロの高級地域に広がり始めた多くのエアコン付きモスクに、目指すべき場所を発見した。そこでは礼拝者たちが、特にラマダーン月の間、礼拝に理想的な状態を提供するために設置されたエアコンの恩恵を受けることができるため、タラーウィーフの礼拝〔訳注：ラマダーン期間中に行われる夜間の礼拝〕をする礼拝者で溢れ返っている。

　しかしながら、断食者の中でも貧しい人々は特に、これらのモスクを「安全なシェルター」とみなして日中、イフタールの号砲〔訳注：日没後に最初にとる食事の合図として鳴らされる号砲のこと〕があるまで居座っている。政府が断食者を支援するために、国庫負担の一切ない無償の試みとして、時計を一時間進めたために〔訳注：サマータイムの導入のことか〕、イフタールの号砲がなるのは午後6時半となった。

　それにしても、その大半がサダカ〔喜捨〕で建設された私設のエアコン付きモスクの管理者たちは、これらのモスクが日中エアコンの風を求める人々にとってホテル同然になるであろうとは予想もしなかったろう。大勢の断食者や夏の暑さでヘトヘトになった人々が押し寄せた結果、モスクの用務員たちと、高いびきをかいて礼拝が終わるごとにモスクを占領する国民との間に喧嘩が起きている。特に午後の礼拝のアザーンの前に、眠っている人々を起こすために、甚大な努力が払われている。

　エアコン付きモスクは、モハンデシーン、ザマーレク、ナスル・シティー、ヘリオポリス地区に集中しており、数は限られているが庶民街にも存在している。冷たい風を楽しむために、たくさんの人々がエアコン付きモスクを探して遠くからやってくる。

　カイロ中心部ドッキ地区のスライマーン・ゴウハル通りにあるモスクは、そうした中のひとつだ。小規模なモスクであるにもかかわらず、最近多くのエアコン装置が取り付けられたために、断食者たちのキブラ〔訳注：ムスリムが礼拝の際に向くメッカの方角を示す施設。目指す目的地の比喩〕となった。

　そのモスクでは用務員と住民との綱引きが繰り広げられている。眠っている人々の多くが、穏やかな雰囲気の中で神聖な礼拝を行う機会を礼拝者たちに与えられるために起こされるのを嫌がるためだ。

　モハンデシーン地区には多くのエアコン付きモスクがあるが、そこではエアコンを手に入れられないカイロの貧しい人々による“侵略”が日々繰り広げられている。シハーブ通りにあるモスクでは、管理者たちが問題に直面している。イフタールの合図があるまで涼しい空気を吸おうと、近接する貧しいブーラーク地区から来る数百人もの貧しい人々で混雑するためだ。

　ラマダーン以外の月には礼拝終了後のモスクの開放は禁じられているのに対し、〔ラマダーンの間は〕一日中モスクを開放することを当局が許可したことが、一日中居座る人たちの数を増やしている。

　モスクの管理者たちの中には居眠りする人数を減らすために軍のように厳しい命令を出す者もいるし、礼拝やコーランの読誦、聴講のために居残る者を例外として、礼拝が終ったら出て行くよう強制するために、エアコンを切ってしまう者もいる。たとえば眠っている人にいびきを禁じ、睡眠中にいかなる音を発しても追い出すという命令もある。しかしそれでもすべての貧しい家族に、心地よい風を楽しむためにエアコン付きモスクを頻繁に訪れることをやめさせることはできなかった。

　以前には見かけられなかったような現象も起きている。市民がエアコンを楽しもうと家族を同伴し、女性たちは女性専用席に座り、父親たちは子どもをそばに座らせるといったことが起きているのだ。
　
ウラマーの中にはモスクは礼拝の場であって、眠る目的のためにあるわけではないとして、礼拝所での睡眠を禁じる者いるが、エジプトのほとんどのモスク、特に庶民街に散らばるモスクは、狭い家に大家族で住む人たちにとっては、いくばくかの憩いを得ようとする時に目指す先となっている。

　1980年代以降、当局が礼拝の時間以外のモスクの開放を禁じてきたことは、一般庶民、中でも出来るだけ長くモスクにいようとする人たちの不満の種となってきた。当局は宗教的暴力組織への対策の一環として、そのような決定を行ったのであり、それは治安当局の言い分によれば、そうした組織はモスクをアジトにしているためであった。

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（翻訳者:香取千晴）
（記事ID:17350 )