投降PKKのメッセージ―9項目
2009年10月19日付 Milliyet 紙

■ メッセージを公開
クルド労働者党(PKK)からトルコに投降したグループが持参したメッセージは、大統領府とトルコ大国民議会に対して用意されたもので、全9項目からなる。メッセージには主に(クルドの)言語、文化、そしてアイデンティティーに関する要求が書かれていた。カンディル・キャンプから来た8人のPKK党員のグループのスポークスマンであるシェリフ・ゲンチダー氏は、「情状酌量法」[訳者注]は適用されないだろうと話した。PKK党員のグループの投降者が持参した「親愛なるトルコ共和国の代表者たち、トルコ国民、そして民主的なみなさまへ」という書き出しの手紙の文面は次の通り。

トルコは、大変重大で重要なプロセスに入っている。3月29日の地方選以降展開された民主的融和策の議論は、重要なレベルに達している。指導者アブドゥッラー・オジャランが整え、提唱してきた「道筋」が考慮されなかったとしても、それが生み出した議論の軸と、政府代表者らによるいくつかの積極的な意思表示が、平和で民主的な解決の希望を力づけてきた。

広範な勢力が、限定的ではあるとしても、議論の場に参加しているということは、国家や社会を通して、トルコには真の民主化、和解、そして一人一人の権利を尊重する必要性があるということを示している。クルド解放運動が大きな自己犠牲をもって一方的な硬直的状況を続けるという中で、進められてきた議論によって、トルコ社会はクルド社会の実態や問題に向き合う段階に入ったのである。こうした展開は、トルコの民主化を、そしてクルド問題の平和的、民主的解決を、議論すべき最も重要な問題としたのであった。トルコおよびクルド社会における諸問題が、厳しい現状のもとでは解決されえないという考えはかなり支配的となり、こうした問題の解決手段として民主的政治が機能することの重要性がさかんに注目されてきた。

私たちの中には、クルド問題が解決されないため、そして進められてきた誤った政策が導きだした重大な結果を、すぐに受け入れた「鈍感」ともいえる人々もいる。90年代、私たちの村は当時のトルコ軍による空爆や砲撃の結果、焼き尽くされた。これらの攻撃から身を守るため、生まれ育った土地を離れて移住せざるをえず、彼らには何年もの間厳しい環境での生活苦を強いてしまった。私たちの多くの近しい者たちは、適用されたこの誤った政治の結果、多くの命を失った。また一方では、多くのひとが当時の国家権力者たちによって「迷宮入り事件」という形で殺害された。私たちは、こうした近しい者たちがどのように殺され、遺体がどこにあるのかも未だ知らない。また、何千人もが障害を負うこととなった。さらに、何百人ものひとびとは、今でも刑務所に入れられている。これまでのプロセスのすべての辛さや困難を経験してきた「鈍感な者」として、こうした理由により、私たちほど自分たちのアイデンティティーを確立し自由に、そして平和に生きていくことを心から願うものはないだろう。

また、私たちの中には、クルド問題が未解決であることで生じた不当さや不公平さをなくし、クルド問題が民主的に解決され、そして国民の間における平等、自由、友愛の生活を実現するため、何年ものあいだ山で、過酷な状況のなかで重い対価を払いながら、プライドを持って自らのアイデンティティーと自由を得るための闘いを続けてきた者もいるのだ。これが私たちの存在理由となった。すべての闘いのプロセスは、対話、和解、平和的な解決でなければいけない。問題が互いに理解され、解決策の話し合いが始められた後は、闘いを敵対的に行うのではなく、対話的そして平和的な解決を実現するための模索の方が、より倫理的で本質的であると考える。私たちは平和、かつ平和への信条が実現すると信じている。同様の闘いのプロセスを経験したほかの社会が、問題を話し合いという道によって解決したとするなら、私たちも独自性のなかで、そして我々の間にあるこの問題をより文明的な方法によって解決することができる。まさにこの理由により、私たちは深刻な障害があったとしても、開始された新たなプロセスという現状において存在するこう着状態を打破することが、重要な任務だと考えている。こうした責任を意識し、新たなプロセスが進められていくために、我々は、我々のリーダーシップの必要性に、私たちクルドの平和の願いに、そして自由に共に生きるためにどうしたらいいかその模索に答えを出すことを望んでいる。

■ 対価を払う覚悟はできている
私たちのこの一歩により、クルド問題について平和的で民主的な政治的解決への道が開かれ、民主政治が実行されることを求めている。以前の同様の経験ではネガティヴなアプローチであったが、今回私たちが踏み出したこの一歩によって、クルドの人々とその指導者が、平和的で民主的な解決に、いかに決意が固く、十分に意識し、確固たる意志をもっていることを再度示している。関連して、平和主義者の中には、私たちが踏み出したこの平和的な一歩にしかるべき評価を与え、意味を見出し、プライドを伴う平和的アプローチを支持してくれる人がいると信じている。そして、我々がこのことを信じているということの一つの結果としてこの自己犠牲を示す。これについて必要となる対価がどれだけのものになろうとも、私たちには支払う覚悟があることも明言したい。

私たちは、トルコの政府代表者たちそしてすべての平和主義者たちが、私たちの踏み出したこの一歩に対し、なすべき責任をもって行動をおこしてくれると信じている。私たちがここで端的に示したこれらのメッセージが実行に移され、共生の環境が整っていくために、我々が真っ先になす要求は、以下のとおりである。

・アブドゥッラー・オジャランによる、クルド問題の平和的・民主的な政治的解決のための道筋について、トルコ側当事者各位に周知し、社会全体に提示すること。
・軍事的、政治的施設に向けられた作戦を停止すること。そして、クルド問題が、平和的・民主的に政治解決されるための道を開き、この解決が、トルコの真の意味での民主化につながるものとして、クルド人の自由な意思をくみ取った上での対話および話し合いによる手段で実現されること。
・トルコ民主国家の一部として、クルド人が自らのアイデンティティーに基づき、そして憲法の保障のもとに、自由で平和的に共生できること。
・私たちの母語であるクルド語を、いかなる場所でも自由に話し、学び、発展させられること。そして、我々の歴史の価値、文化、地理を、母語によって維持すること。
・私たちの子供にクルド語の名前をつけ、クルド語で教育し、育てること。
・クルド人として自分たちの歴史、文化、芸術、文学に自由に触れ、発展させ、守っていくこと。
・自分のアイデンティティーをもって民主主義的な組織をつくることができ、民主主義的な政治を行い、自由に発言できること。
・クルディスタンの村、町、市街から、特別部隊や警官による弾圧や不当な行為をなくし、十分に可能性のある、そして安全な暮らしができること。
・トルコの民主化と、そのための文民的―民主的な憲法が整備されること

以上を望んでいる。
こうした要求の核心として、我々はクルド問題の民主的な解決を、トルコにおける平和と民主主義的を望むすべての人とともに話し合い、ともに取り組むために、この一歩を踏み出した。私たちはこの一歩により新たな歴史を刻もうとしている。私たちはこの一歩が成功を収めることと信じている。そして、これに基づき、すべての平和主義者に心から挨拶を行いたいと思う。

[訳者注]
情状酌量法(Pişmanlık Yasası)
テロ組織のメンバーについて、直接その動きに関与せず、武力を放棄して降参し、当該機関により罪として適用が免除された場合、刑罰を免れるという法律。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:萩原絵理香 )
( 記事ID:17693 )