オルハン・パムクのトルコ社会分析、「二つの対立軸」
2009年12月29日付 Hurriyet 紙


アメリカのテレビ番組で発言したノーベル賞作家のオルハン・パムク氏は、トルコには二つの主要な「対立軸」が存在すると述べた。パムク氏は、一つ目の対立がクルド人と中央政府との間に、二つ目の対立が世俗主義者とイスラーム主義者との間に存在すると述べた。

ノーベル賞作家のオルハン・パムク氏は、政府が「クルド問題に関して柔軟で自由な態度を取っていく代わりに、厳しい態度を取り続けた」ことを明らかにしつつ、「(政府が)問題に柔軟な姿勢でどのようにアプローチすればいいかを理解しなければ、問題は残念ながら続くだろう」と述べた。

アメリカのPBSテレビの「チャーリー・ローズ・ショー」という番組に出演したパムク氏は、トルコにおける「主要な対立軸」は何かと質問され、トルコには二つの「対立軸」があると述べ、これらのうち一つは「さらなる文化的、言語的、政治的権利を要望するクルド人と、これを恐れて実際この問題をより自由で柔軟な姿勢でどのように扱えばいいか分からない中央政府との対立」であると述べた。

パムク氏は「ここにおける問題は、中央の従来型の政府が、柔軟で自由な態度をとる代わりに、厳しい態度を取り続けたことである」と指摘し、「トルコにおける問題の一つはこれであり、政府がこの問題に対して柔軟な姿勢でどのようにアプローチすればいいかを理解しなければ、問題は残念ながら続くだろう」と述べた。

■ 世俗主義者とイスラーム主義者との対立
作家のパムク氏は、「もう一つの対立は、『世俗主義者』と『イスラーム主義者』との対立である」と指摘し、「これはトルコでここ200年の間続いてきた対立だ。トルコが西欧化政策を推進し始めると、この問題も起こった」と語った。

パムク氏は「トルコは、アタテュルクの時代に比べてより世俗的であるか、それとも世俗的ではないか」との質問に対して、「これはあなたの世俗主義理解による。私の考えではトルコは絶対的に世俗的な国だ。その指導者が10年前に自身を『イスラーム主義者』と定義したある政党が、今日政権与党となっていることも、この構図をそれほどは変えない」と答えた。

■ 民主主義を恐れている
パムク氏は「アタテュルクの世俗主義政策が機能してきたこと」を指摘しながら、「機能していないのは、民主主義、人権、表現の自由、これらが問題だ」と述べた。

作家のパムク氏は、「あなた方もこの重責を感じている。なのになぜこれらは機能しないのか」との問いに答えて「政治的問題のせいでこのような状況になっているとは、私は実際思っていない。これは、軍隊や官僚の中の保守的で権威主義的な一部のエリートのせいである」と述べた。

「彼らは何を恐れているか」との質問にパムク氏は、「残念ながら民主主義を恐れている」と答え、「民主主義が宗教国家に転換するのを恐れているのか」との問いには、「違う、彼らはこのように言っているが私は違うと考えている…」と述べた。この際彼の言葉は遮られ、「実際にはこれを恐れてはいないが、これを利用しているだけか」と問われたパムク氏は「そうだ」と答えた。その上で司会者の「『イスラーム主義者が台頭している、彼らを止めなければならない』と彼らは言っているのか」との問いについては次のように答えた。
「そうだ、思うにこれは言い訳だ。残念なことにトルコの官僚や軍隊の一部は、手にしている特権を失いたくないと思っている。この一部の人間は、EUとの交渉を良く思っていない。なぜならこの結果特権の一部を失う可能性があるからだ。」

パムク氏はある問いに関して、トルコがEUに加わるために、明確な変化がなされる必要があるが、軍隊や官僚、司法エリートの一部がこのプロセスに抵抗していると述べた。

オルハン・パムク氏は、「文化的に私は彼らに近いと思う。しかしより西欧化した人々は、自分たちの権威主義的状況、不寛容さ、表現の自由を重視しない、さらにはトルコでの国民投票を尊重しないといった問題を抱えている。トルコのもう一つの国内問題は、世俗主義者の多くが良い人々であるが、民主主義、国民投票や人権をそれほど尊重しないということだ」と述べた。

パムク氏は、政治的な小説を書くことを望んでいるかどうかとの問いに、「実際には望んでいるが控えている。過去に『雪』という小説を書いた。議論を呼ぶ作家にはなりたくない」と述べた。

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( 翻訳者:三上真人 )
( 記事ID:18168 )