社説:エジプトのニカーブ問題をめぐって
2010年01月26日付 al-Quds al-Arabi 紙

■エジプトにおけるニカーブとその罰則化

2010年01月26日付クドゥス・アラビー紙(イギリス)HP1面

 ニカーブ[=目以外をすっぽりと覆うタイプのベール]着用をめぐる問題が特にエジプトと、フランスを筆頭とするヨーロッパ諸国で、法的・社会的論争の種になっている。エジプトとフランスは、ニカーブ着用という現象を禁じる法をいかに制定するかという前提を共有しているのだ。

 先日、[エジプトの]最高行政裁判所は、本人確認を担当する大学の委員会で顔を露わにすることを受け入れる限り、ニカーブを着用する女子学生が試験を受けることを認めるとの判決を出した。これによって多くの人々が、この問題に最終的な解決がもたらされるものと考えた。

 ところが国家要人に扇動された政府代表の一部が上告し、判決の執行を遅らせると決め、この判決を見直すよう申し立てを行ったのである。これはかつてエジプトの天然ガスをイスラエルに輸出することを禁じた判決を破棄させるために使われたのと同じ手法である。この判決(つまり禁輸)の背後にいたのは、よく知られたエジプトの愛国者、イブラヒーム・ユスリー外交官であった。

 ニカーブ着用という現象に反対するというエジプトの公式政策があることは明らかだ。ニカーブを着用する女性たちに試験を受けることを禁じ、国家の多くの役職からはじき出すなど、あらゆる手段で彼女たちに嫌がらせをする方針だ。

 エジプトや多くの西洋諸国では、ニカーブ問題をめぐって二つの意見がせめぎ合っており、それが新聞・雑誌の多くの記事やテレビの討論番組などに反映されている。

 第一の意見の持ち主たちは、ニカーブ着用は宗教的義務ではなく、外から持ち込まれた社会的慣習にすぎないと主張し、コーランやスンナ[預言者ムハンマドの慣行]の中にニカーブ着用の義務を明言している法的証拠はないと言う。それどころか彼らは、一部の女性のみならず男性もニカーブを着用することによって、ある種の犯罪がいとも簡単に行われるとまで口にする。

 それに対しもう一方の意見の持ち主たちは、ニカーブ着用は人間の個人的自由の核心から来ている問題であり、ニカーブは体を覆い、徳を守り、誘惑を退けて女性とその尊厳を守れというイスラームの教えを順守していることの証しなのだと考える。

 本紙は上記の二つの意見をどちらも尊重しつつ、ニカーブを義務付け、イスラーム教徒の女性にその着用を求めるようなイスラーム法の文言は存在しないと説く見解により賛同する。しかし同時に、一部の人がニカーブを着用しようとすることは、個人の自由にかかわる問題であり、イスラーム法に則った信仰上の努力の実践であると認めるものである。この個人の自由が一般の法律や社会の慣習に反しない限り、それは合法的で受け入れられるべき自由である。

 ニカーブの着用は慣れ親しんだ、一般的な規範であり、着用しないことの方が異常だとみなすイスラーム社会は多々存在する。サウジアラビア王国しかり、イエメン北部の一部の都市、特にサヌアしかり。それにニカーブ着用が犯罪増加につながることを確証する研究など聞いたこともない。

 この問題については背教者だとか無神論者だとかいう非難から離れた、科学的で穏やかな文明的論争が求められる。この問題に決着をつけるには、知識と経験に長け、尊敬される地位にある宗教者たちがそうした議論に加わることが必要だ。

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( 翻訳者:山本薫 )
( 記事ID:18354 )