エイズ汚染血液を輸血された少年に、記録的保障―欧州人権裁判所決定をうけ
2010年03月23日付 Radikal 紙

出生日に赤新月社によりHIVウイルス汚染血液を輸血されたイズミルの少年Y・O君の家族がトルコ政府に対して起こした訴訟で、AIHM(欧州人権裁判所)は歴史的な決定を下した。


保健省が公正な裁判を受ける権利を侵害し、効率的で効果のある調査を行わなかったとして訴訟を起こしたO家に、38万1千ユーロ(約79万7千リラ=約4千800万円)の賠償金が支払われる判決が下された。一家はこの判決により喜びと悲しみとを味わう中、一家の弁護士を務めたエミン・ケレシュ氏は「一家はこの結果に満足しているが、Y・O君の身にこのようなことが初めから起こらなければよかったのにという気持ちも抱いている」と話している。
さらにケレシュ氏は、今回の賠償金がAIHMでトルコ関係の個人訴訟により得られた過去最高の金額であることをつけ加えた。
AIHM第2法廷は原告であるY・O君の家族にトルコ政府の返答を伝え、意見を求めた。カレシュ法律事務所から家族の意見を伝えられたAIHMは判決を23日に発表した。判決では欧州人権条約の生命、公正な裁判を受ける権利、および実効的な救済を受ける権利に関連する条項に反しているとして 、家族に対し物質的賠償金として30万ユーロ、精神的賠償金として7万8千ユーロ、さらに裁判経費として3千ユーロ、合計38万1千ユーロの支払いを決定した。


■家族は悲喜こもごも
判決はO家に喜びと悲しみをもたらしたと伝えられた。一家は24日に判決について記者会見を開き心境を伝えるという。また一家の弁護士を務めたメフメト・エミン・ケレシュ氏は以下のように話している。
「1997年から現在まで、Y・O君と家族は生きるために闘い、また司法とも闘ってきました。 裁判所へ起こした訴訟は7年で結果が出ました。相手は保健省でした。保健省について起こした訴訟は、7カ月で結果が出ました。行政訴訟に関しては10年でした。我々はAIHMにこの件について訴えました。残念でしたが、外になす術がなかったのです。賠償金が十分な額ではなかったことをAIHMに伝えました。一家は今回の結果に満足しています。ただ、Y・O君の身にこのようなことが初めから起こらなければよかったのという気持ちも抱いています。なぜならY・O君は生涯この苦労と闘い続けるのですから」
さらにカレシュ氏は今回の賠償金がAIHMでのトルコ関連の個人訴訟で得られた過去最高額であることを付け加え、「これから先トルコ政府は裁判所の定める3カ月の期間内にこの賠償金を支払うことになります」と述べた。

■現在までの経緯
イズミルに住むナズィフ・Oさんとネシェさん夫妻のもと1996年に生まれた息子Y・O君は、出生後間もなく赤新月社より送られ病院で輸血された血液が原因でエイズに感染した。タクシー運転手の父ナズィフさんと妻のネシェさんは息子を生きさせようと努めながら、一方では裁判所に出向いて補償を受ける権利を模索し始めた。一家は1997年にイズミル地方赤新月社本部と保健省に対しそれぞれ3万リラの賠償金を要求する裁判を開いた。
イズミル第3簡易裁判所の裁判官は、2000年に出された判決により赤新月社に対し利息含め7万5千リラ(約450万円)の賠償金を支払うよう命令した。保健省に対して起こした3万リラ(約180万円)の精神的賠償を求める裁判は、当該裁判所の管轄外であるとして却下された。その後イズミル第4行政裁判所に起こした訴訟は12年間解決しないままだった。2008年に下された判決により保健省は15万9千リラ(約1千万円)の賠償金支払いを命じられた。

子供が生まれた日から続いていた裁判が2008年に終了したことは、Y・O君の家族の反発を呼んだ。ナズィフさんとネシェさん夫妻は担当弁護士のメフメト・エミン・ケレシュ氏とメフリギュル・ケレシュ氏の仲介でAIHMに訴訟を起こし、 理に適った期間で裁判を行わず、また被害を軽減する思想において非常に遅れているトルコ政府を相手に6年前に裁判を開いた。AIHMは夫妻の340万リラ(約2億4千万円)の賠償金を求める訴訟を受理し、トルコ共和国政府に対し訴訟を起こした国民の主張への抗弁を要求した。 トルコ共和国政府に代わって抗弁を行った法律家たちは、Y・O君の被害に関して政府と裁判所は必要な配慮を示しており、その最良の証拠は起こした訴訟において政府組織が賠償金支払いを命じられていることであると述べた。

抗弁において法律家たちは、賠償金に加えてY・O君に対し赤新月社から定期的な奨学金が支払われていることにも触れた。刑罰についても必要な刑事訴追と捜査が行われ、ただし個人が負うべき刑事責任の原則により、赤新月社会長および保健相については不起訴処分となったことが明らかにされた。また、病院スタッフについて行われている捜査の一環として設けられた「監察委員会」の報告書によれば、通常のテストにおいてHIVウィルスが検出されたかどうかを断定することは不可能で、スタッフのミスや職務不履行を発見することも不可能であることが明らかにされており、そのため刑事訴訟は中止されたと法律家たちは述べた。なおAIHMからの4つの質問について、トルコ政府に代わって抗弁を行った法律家たちは「この裁判における行政訴訟の過程は、人権条約の第6条第1項に示される『理に適った期間』の規定に反しているのか」という質問には回答することが出来なかったという。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:川原田喜子 )
( 記事ID:18781 )