バーナード・ルイス「あと10年でトルコはイランになる」
2010年05月12日付 Milliyet 紙

ウォール・ストリート・ジャーナル記者のブレット・スティーブンス氏は、中東史の権威であるバーナード・ルイス教授が、トルコはあと10年でイランに近づくかもしれないとの予測を行ったと報じた。

アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラミスト、ブレット・スティーブンス氏は、「トルコはどこに向かうのか」の見出しの分析記事で、「トルコは豊かになるつれ、逆説的に、その西洋的性質の一部を脱ぎ捨てている」と述べた。毎週火曜日に外交に関する「グローバル・ヴュー」というコラムを載せているスティーブンス氏は、今週の記事で次のように述べた:

「先週バーナード・ルイス教授にトルコはどこに向かうと思うか尋ねた。中東史の権威であるルイス教授は、イランが世俗主義国家に向かっている一方で、ムスタファ・ケマル・アタテュルクによって作られた世俗主義国家のトルコは10年のうちにイラン・イスラム共和国により近づくことになるかもしれないといった。トルコについてのニュースをそれなりに読んでいる身としては、ルイス教授が何を言いたいかを理解するのは簡単である。なぜなら、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相率いる公正発展党は、2002年に与党となって以来、トルコの外交方針を著しく変化させているからである。」

スティーブンス氏は、トルコがイスラエルとアメリカ合衆国から遠ざかり、シリヤとイランに近づいていると述べ、次のように続けた:
「長い間トルコで世俗主義の支えとなってきた軍は、いま、エルドアン首相のイスラム的な政権による攻撃を受けている。政府は最近、何十人もの将校をクーデター計画の容疑で逮捕した。トルコ議会は先週、政府が、世俗主義のもうひとつの支えである同国の上級裁判所に、自陣営の人員を送り込むことを可能にする国民投票を施行するため、憲法改正案への投票を行った。昨年、数億ドルほどの高額な税金を課されたドアン・メディア・グループも攻撃を受けている。」

■イランに近づいている

スティーブンス氏は、トルコ人でアメリカに対する好印象を持っている人の割合は、イラクでのアブグレイブ刑務所でのスキャンダルが明らかになった時期に比べても、さらに低い水準にとどまっているとし、「このことは、ルイス教授の警告を証明するばかりか、それ以上の証拠となっている」と述べた。スティーブンス氏は、「では、世俗主義者や古典的自由主義者も含む多くのトルコ人は、どうして、エルドアン首相がもたらした変化を不愉快に思っていないのだろうか?」と自問し、このことの答えのひとつは、こうした人たちが「騙されている」可能性があると述べる。スティーブンス氏は、「イラン革命でも自由主義は前面にたち、その後、ホメイニにより情け容赦なく切り捨てられた。ただこれをトルコのケースにあてはめても、あまり説得力がない。公正発展党が自由経済政策をとっていた時代に実現したトルコの経済的な変容の方が、その原因として、より説得的である。」スティーブンス氏は、記事の最後に、「本来最も深刻な問題は、(トルコのイスラム化が)どこまでゆくのかだ」と述べ、エルドアン首相が内政で示しているいくつかの手法は次第にロシアのウラジミール・プーチン首相の手法と似てきていると主張した。

■どこまで続くのか?

スティーブンス氏の記事の最後はこのように結んだ:「一番重要なことは、イスラムに関するエルドアンの手法が、社会的・政治的な要求に対して二次的なものとして扱われる、穏健なままで留まるのか、あるいは、積極的・急進的なものになるのか、である。この質問の答えを知っているように振る舞うのは間違いのもとである。しかし、この可能性について憂慮しないというのも愚かなことである。」

■「1915年にアルメニア人の身に起きたことは大量虐殺ではない」という発言に対し1フランの罰金

イギリス生まれのアメリカの歴史家バーナード・ルイス教授は、現在アメリカの名門校のプリンストン大学で中東研究の学科で教授を務めている。ルイス教授は1993年にル・モンド紙に掲載した記事で1915年にアルメニア人の身に起きたことが「大量虐殺」はなく、「戦争の負の産物のひとつ」であると述べた。フランスの裁判所は、このことを「アルメニア人大量虐殺の否定」と判断し、この歴史家に象徴的な金額として1フランの罰金を課した。

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( 翻訳者:小幡あい )
( 記事ID:19105 )