Semih Idizコラム:米トルコ関係におけるイスラエル要素
2010年10月03日付 Milliyet 紙

国連総会によって選出された47人の委員で構成される人権理事会がイスラエルを厳しい表現で非難したマーヴィ・マルマラ号の報告書が、30人の委員によって承認されたことは、アンカラ(トルコ)にとって「精神的な勝利」である。

強制力を持たないものの、理事会で出されたこの結果は、あらゆる裁判所において、トルコの、あるいは本件に関して裁判を起こす人々の戦いを後押しする要素となるものである。もちろん、問題を国際司法裁判所に持ち込むことができた場合の話であるが。

しかし、問題をトルコの「現実の政治」の観点からみると、人権理事会における投票から導き出された本質的に重要な結果は、30人の委員がこの報告書を採択したことではない。アメリカが反対の票を投じ、安全保障委員会の常任理事国であるイギリスとフランスを含む主要なEU諸国が、報告書に関する投票を棄権したことである。

アンカラでは実際、――そもそも以前から予想できたため、全く驚くに値しない――この結果への失望を隠さなかった。アンカラがこの点から不満に思っていることの主な理由は、疑いもなく、人権理事会での顛末が、国連総長によってマーヴィ・マルマラ号事件を調査するために設立されたパルマー調査団にとっての「リハーサル」であることに起因している。

より明確に言えば、調査団から出る予定の報告書は、イスラエルの観点から不快な表現が含まれることになれば、これは、安全保障理事会の常任理事国のメンバーであるアメリカによって否認されるであろうことを、今から言うことができる。同じように、常任理事国であるイギリス、フランスもアメリカが拒否した報告書について、少なくとも棄権するであろうと言うことができる。

一方、常任理事国のロシアと中国がどう行動するかは判然としない。二国は双方とも人権理事会の報告書を承認した。しかし、両国は、国連総会と安全保障理事会での票は常に一致していない。しかし、ロシアと中国が、調査団の結果を承認したとしても、報告書の拒否にはアメリカの拒否権発動で十分である。

イスラエルは、そもそもアメリカのこの力に頼って、調査団に協力することを決定した。そうでなければ、人権理事会の件と同様に、調査団の件にも乗ってくることはなかっただろう。故に、イスラエルにとっては、人権理事会から出た報告書の重要な点は、これを何カ国が支持したかということではないのである。

理事会の権限を認めないことを以前から表明していたイスラエルは、アメリカが如何なる票を投じたか、そして誰が棄権したかを観察した。(そして)この点からも満足した。要約するならば、人権理事会の報告書が採択されたことは、アンカラにとっては精神的な勝利である一方、イスラエルから見れば具体的な成果をもたらした。(イスラエルの)ネタニヤフ政権は、アメリカの、そしてEUの保護を当てにできることがわかった。他はどうでもいいのだ。

アメリカ議会で、トルコに向かって吹いてくる――そして、ギリシャ・ロビーの働きかけによって採択された北キプロス・トルコ共和国(KKTC)に関する最新の調停案が示しているように――具体的な結果を出し始めた逆風と考え合わせた場合、国連での展開は、アンカラ-ワシントン線上における「レモン色の天気」(先行きのはっきりしない空模様)を明らかに映し出している。

トルコでは「アメリカの同盟者」とみなされているあるアラブの国の外交官の表現にならえば、トルコは、これまで通り立ち位置を変えないかもしれないが、アメリカはトルコに対する立ち位置を変化させ始めたように思われる。

これらの展開に続き、しばらくするとワシントンでは「ジェノサイド法案が審議される時期」に入るため、メフメト・アリ・ビランド氏が昨日のコラムで指摘したように、アメリカとの関係は本当に「危険水域」に突入する。

要は、ものをすこしでも知っている者として我々が何カ月も前に述べたように、トルコ-イスラエル関係は、トルコ-アメリカ関係の前提条件となった。これに、対イラン関係を巡りアンカラとワシントンの間に亀裂を生じさせる「厄介な問題」も考慮に入れれば、トルコ-アメリカ関係は深刻な修復を必要としているように見受けられるのである。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:能勢美紀 )
( 記事ID:20295 )