エルジエス大学に「アルメニア言語文学学科」、初年度2名入学
2010年10月09日付 Zaman 紙


各大学では毎年新しい学部が開設されている。エルジエス大学に今年開設されたアルメニア言語文学学科も、このうちのひとつだ。

トルコ・アルメニア関係が議題に上っているこの時期に、同学部をなぜ創設し、また誰がこの学部へ進学を決めたのか、気になるところだ。アルメニア言語文学学部の創設者であるメティン・ヒュラギュ教授及びこの学科を選択した2名の学生に、話を聞いた。

多くの若者が大学に入学する緊張と興奮を味わっている今日この頃、「エルジエス大学に今年創設のアルメニア言語文学学科へ、4名入学」という記事に我々は興味を抱いた。この4名に会うために、カイセリへと出発した。トルコ・アルメニア関係が常に議題に上っている今日、アルメニア言語文学学科創設を誰が考えたのか。この学部に入学することを決めた4名の学生とは誰なのか。こんなことを考えているうちに、あっと言う間にカイセリに着いてしまった。すぐにエルジエス大学へ向かった。

今年開設されたアルメニア言語文学学科に、4名の学生が入学を決めた。しかし、入学手続きを行ったのは3名だけであった。そのうち1人は、後に休学を決めた。残る2人の学生は、緊張と興奮をもって授業を受けている。ひとりはチセ・バルタジュさん、アナドル高校の出身だ。クルシェヒル出身だが、今は家族と共にカイセリに住んでいる。高校では理系だったが、日本語や韓国語などの言語学科で学びたかったことから、大学入試試験を分野外で受けた。しかし、それらの学科に入るためには点数が足りず、他の選択肢を探した。新設のアルメニア言語文学学科に、こうして入学することになったようだ。

この学科を選択した理由は、ただ(他の学科では)点数が足りなかったからということだけではない。チセさんは、「私は、アルメニア言語文学学科を選択する際、トルコ・アルメニア関係が常に議題に上っていること、また、この分野において自らを育成することによって自分の将来が開かれることを考えました。日本語を学びたい思いの次に、これらが頭の中にありました。トルコは発展しており、世界に対してもっと開かれるべきです。アルメニア言語文学学科や日本言語文学科などの学科の卒業生は、将来的にトルコを代表する人間になれると思います」という風に、自分の状況について語った。

イズミル出身のギュヴェン・カラキョセさんの考えも、バルダジュさんと似ている。歴史上トルコと関係がある国について学ぼうと考え、ロシア言語文学学科を選択しようとしたが、最終的にはアルメニア言語文学学科を選んだ。「今やトルコは、ヨーロッパ以外の国々とも外交を行っています。そのため、それらの国々の言葉や文化に精通する者を育成する必要があります。そして、私たちがそれにあたるのです」と言っている。

我々が2人の学生に対して問うたような質問を、他にも問うた人がいたようだ。隣人、親戚、高校や大学の友人…。「あなたはアルメニア人ですか」と聞いた人がいたことは言うまでもない。なぜならば、この2人が出会った人の中には、彼らがアルメニア人だからアルメニア言語文学学科を選んだと思った者もいたらしい。だが、チセさんもギュヴェンさんもトルコ人である。問題がこれだけならまだいい。大学と言えば、確立した体系、教授、准教授や研究者によって構成される学科、クラスやクラスメイトといったものが思い浮かぶ。しかし、エルジエス大学アルメニア言語文学学科は新設であることから、そのような体制がまだ整っていない。他の学科に所属していてアルメニア語に堪能なある教授が、今のところ授業を行っている。しかし、学生たちはこの状況を不満に思っていない。「まあ仕方ないですよ。卒業したら私たちが教師になります」と言う。

この学科をなぜ創設したのか、使命と目標についての質問には、創設者であり副学長であるメティン・ヒュラギュ教授がお答えくださった。メティン教授は近現代史を研究しており、長年に渡ってアルメニア問題に携わってきた。同分野において研究者や研究が不十分であることを良くご存知である。メティン教授はまた、学問的な観点から次のようにお考えだ。「我々歴史研究者としては、アメリカとエレバンにおける文書資料が詳細に調査される必要があると考えています。しかし、学問的な意味においてアルメニア地域と言語に熟知する人がいません。この問題は、トルコと関りの薄い全ての国及び地域にも共通です。そのため、私たちの目的は、あらゆる国の言語、文化、歴史を学んだ専門家を育成し、トルコが必要とする社会科学者を世に送り出すことである。トルコでアルメニア問題が常に議題に上っていること、また、アルメニアはトルコに地理的にも近いことから、アルメニア言語文学学科が先述のプロジェクトの先駆けとなりました」と話された。

■学科の創設において困難に直面した

学科の開設段階で起きたことについても、少し触れておこう。メティン・ヒュラギュ教授は、学科が公式に開設される前に、教員体制を整えるため取り組んだ。アルメニア在住の、アルメニア語の語源や文法に熟知した教授2名と契約を取り交わしていた。しかし、教員体制に関する許可が財務省から下りるのが遅く、アルメニアの教授2名はトルコに来るのをやめてしまった。メティン教授はこれらのことを予想しており、エルジエス大学のほかの学科で教鞭をとる、アルメニア語にも学問的な意味で精通しているセヴィンチ・ウチギュル講師に助けを求めた。「ありがたいことに、セヴィンチ先生は助けになってくれました。教員体制が整うまで、アルメニア言語文学学科の教育については彼女が仕切ることになります。学生たちの能力を伸ばしてくれると思っています」と、ほっとした様子だ。

■卒業後、自動的に教員に

アルメニア言語文学学科について最も関心の高い要素は、卒業生がどのようなところに就職できるか、ということである。アルメニア言語文学学科卒業生の将来は開けている。トルコにおいてアルメニア分野に精通する第一人者となれる可能性がある。更には、大学の様々な学科で研究者として働くこともできる。また、大使館勤務も考えられる。アルメニア語がわかる人材を求める会社に勤めることも可能だろう。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:津久井優 )
( 記事ID:20349 )