タラバーニー・イラク大統領、PKK批判―叶わぬ夢を追う意味はない
2010年10月20日付 Hurriyet 紙

イラクのジャラール・タラバーニー大統領は、「テロ組織クルド労働者党(PKK)の最大の過ちは、トルコの民主主義の価値を理解していないことであり、現実とはなりえない夢を追いかける意味はない」と発言した。

トルコ・ラジオ・テレビ協会(TRT)の中でアラビア語放送を行っているチャンネル、アル・ツゥルキーイエで放映されている番組「アル・ツゥルキーイエへの客人」に出演したタラバーニー大統領は、テロ組織がなぜカンディル(北イラクのPKK拠点)から撲滅されないのかという質問に対し次のように答えた。「この問題には2つの解決法がある。軍事的か政治的だ。軍事的な方法は試した、トルコ軍は何度も北イラクへ侵攻し、イラクの2大クルド政党はトルコ軍と協力関係を築いた。しかしこの行動や計画は成功しなかった。ということは、問題の解決方法は軍事ではなく政治的な方法によるものとなる。」

タラバーニー大統領は他の質問に対しても、テロ組織のリーダーであるオジャランが組織内のテロリストたちに影響力をもっていると述べた。同大統領は武力による方法はすでに有効ではなくなっており、政治的かつ文化的闘いが重要であるとし、「メディア、議会、社会組織が重要だ。我々も山岳地帯にいるPKKのテロリストに武器を捨て、政治参加するよう勧めた」と語った。

■テロ組織最大の過ち

タラバーニー大統領は、トルコが行っている(クルド問題の)民主的解決の試みを肯定的に受け止めることが必要であるとのべ、「トルコの一部クルド人が私と連絡を取り、オジャランのメッセージを持ってきて私の見解を尋ねた」と、初めて明かした。大統領は、「私も口頭で次のことを(オジャランに)伝えるよう彼らに言った。(テロ組織の)最大の過ちは、『トルコにおける民主主義の重要性を理解していないことである』と。」タラバーニー大統領は、トルコで政府が始めた(クルド問題の)民主的解決の試みと新憲法制定の試みは、多くの可能性を秘めていたのに、しかし「この格好の機会は十分に活用されなかった」と語った。

トルコでのクルド人国家樹立は不可能であり、夢は実現し得るものでなくてならないと述べたタラバーニー大統領は、北イラクにはクルド人による議会があることを例にとり、「明日、このクルド議会が独立を宣言したとしよう。イラク、トルコ、イラン、シリアは戦争を宣言せず、ただ国境を閉ざし関係を断ったとする。するとこの国家はどうやって生きるのだろうか?どのようにして輸入、輸出を行うのだろう。往来はどうすればよいだろうか」と述べた。

■イラクで政権樹立運動

タラバーニー大統領は、イラクで選挙から7ヶ月が経つにも関わらず新政権が樹立されていないことに向けられた批判にも触れ、この批判に賛同していないとし、「この間、新政権樹立に向けてのみ活動が行われていたわけではない。なぜなら最初の3ヶ月は当選した議員の憲法裁判所による承認で過ぎたのだ」と述べた。

タラバーニー大統領は、新政権が樹立されないのには2つの根本的な問題があるとし、1つ目は新内閣設立の手続きが憲法に沿っていないことが影響しているとし、次のように述べた。「憲法によれば、まず議長が選ばれ、その後大統領が選ばれることになっている。議会で最も多く議席を獲得した政党またはグループが政権を樹立し、大統領を任命しなければならなかった。しかしこの手続は無視され、イラクの首相はシーア派の流れを汲む者でなければならないという状況が明らかとなった。シーア派連合が内部で候補者を一本化できないと、政治の流れは凍結した。」

タラバーニー大統領は、現在問題は解決され、イラク国民同盟の大多数がヌリ・マーリキーを首相候補に推しているとのべた。イラクでのシーア派はイランの影響を受けていると言われているが、7ヶ月間イランはシーア派を候補者調整で説得できず、そのことは世界中が見ていたとし、「首相候補者のことですら説得できないようでは、イランの影響力はどこにあるのだろう?イラクでは内部要因の方がより重要である」と述べた。

タラバーニー大統領は、キルクークのような未だに合意に至っていない地域に関する質問には、「我々は現在イラクのすべての問題を解決するため憲法に頼らなければならない。問題は憲法により解決することができる。キルクーク問題や合意に至っていない地域は憲法により解決しうるのだ。例えば、いくつかの県の境界線変更という問題がある。なぜならキルクーク、アルビル、スレイマニエ、モースルといった県の以外でも地理的な境界線問題があるからだ」と語った。

タラバーニー大統領は、これらの件でトルコと非公式の会談が行われるとも述べた。

■「オザルは流血を嫌っていた」

タラバーニー大統領は、第8代大統領トゥルグト・オザルは暗殺されたといううわさにも触れ、「故オザル氏と私の間には良き思い出がある。(オザルは)民主的でオープンな視野を持った人だった。困難や人々の気持ちを理解していた。とてもオープンな見解を持っていた。オジャランの件に関しても対話(による解決)を推進し、流血を防ぎたがっていた」と述べた。

タラバーニー大統領は、自身は弁護士であり、証拠なくしていかなる者をも告発することはできないとし、「しかしながらいくつかの問題があるために世間の注意を引いている。(オザル氏の)家族にも捜査要求の権利がある」と語った。大統領はトルコに関する意見を述べる際、「トルコは私にとって、(外交の相手であると)同時に、大きな文明や文化だ。私はイスタンブルをとても愛している。イスタンブルは文化的で美しい都市だ。引退した後、回想録をイスタンブルで綴りたいと思っている」と述べた。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:釘田遼香 )
( 記事ID:20449 )