Fikret Bila コラム:スカーフにおける法的、政治的境界線
2010年10月22日付 Milliyet 紙

アブドゥッラフマーン・ヤルチュンカヤ最高裁判所共和国主席検事が、スカーフ問題における「法的境界線」について言及した。スカーフ問題でその境界をこえる変更は、憲法やこれまでの判決に反するものになると強調した。ヤルチュンカヤ氏は、さらにこうした憲法違反の責任は政党にあると警告した。共和人民党(CHP)のケマル・クルチダルオール党首の「我々がスカーフ問題を解決しよう」という発言の後に始まった議論において法的側面は軽視されてきた。議論は、政党や党首の間で、政治的なものとして進んできた。

■法的境界線

法を制定するのは、もちろん立法府である。民主的な法治国家では政治家の立法権はもちろん無限ではない。司法による監督や三権分立の原則もこれを示している。政府は、現行法が改正されない限り、それに従わなくてはならない。裁判所の決定が立法機関と執行機関活動を規定するのは、この面においてである。立法機関は、普遍的法則や民主的法治国家の原則に合致した形で法を改正できる。この視点から見てみると、最高裁判所共和国主席検事が言及した憲法裁判所と行政裁判所の決定は、今日も拘束力のある決定である。これらが変更されない限り、予定されている変更が憲法や上級裁判所の決定に適合したものになることは難しいだろう。

スカーフ問題を解決するための妥協案を模索し続けている政党は、この問題の法的側面を第一に検討し、上級裁判所の決定に適合した解決策を見つけることが必要である。裁判所の決定など知らないという態度では、立法機関や執行機関が、妥当で恒久的な解決策を案出することはできない。この点に関し、私が昨日紹介したCHPのケマル・クルチダルオール党首の7つの条件のなかの「法律家たちが共通の道を見つけること」という提案を、与党側も注目すべきである。

■政治的境界線

スカーフ問題を規定しているのは、上級裁判所の決定だけではない。さらに政治的な側面からの規制もある。政治的側面を考慮にれずに妥協案を生み出すことも不可能だろう。CHPのクルチダルオール党首が発表した枠組みは、スカーフ問題における境界線の観点から見て重要である。CHPは、スカーフが大学でのみ自由化されることを求め、大学以外の教育機関や公務員まで拡大されないないよう強く主張している。CHP党首が提案したこの枠組みは、実はこの問題の折り合いのつけ所をも示唆している。これに対して公正発展党(AKP)が行った最初の協議で、スカーフ解禁が高校、初等教育機関、公務員らに広げる可能性を残したことは、妥協の可能性を初めから窮地に追い込んだ。民族主義者行動党(MHP)のスカーフ問題への対応は、CHPの提案した境界線と一致している。二大野党のこの取り組みに対し、与党がスカーフ解禁範囲の拡大をしないと約束しなかったため、この問題を大学に限定したものとして解決することも難しくした。

■この機会を悪用するべきではない

野党、特に共和人民党(CHP)が、大学でのスカーフ自由化を支持しようとしていることを利用し、それを悪用する人々がでないようにすることも、大変重要である。CHPのこの(スカーフ容認の)態度をみて、公務員がスカーフを着用したり、高校や初等教育機関でもスカーフ着用で授業に参加しようとする動きがでたことは、CHPの不信感を高めることになるだろう。CHPは、問題を「高等教育を受ける自由の侵害」という観点から捉えている。与党が「教育を受ける自由」よりも宗教的観点から対応していることは、共通の基盤の創造を困難にしているもう一つの要因である。今日明らかになった構図は、CHPが述べた懸念が取り除かれていないことを示している。与党がこの懸念を取り除かない限り、短期間で共通の目標を達成することは不可能である。

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:小松裕美子 )
( 記事ID:20467 )