Fikret Bilaコラム:イラク化するトルコ
2010年12月09日付 Milliyet 紙

民主社会運動(DTH)が持ち出した都市議会構想が、オジャランのプロジェクトであり、「4本軸」のひとつであることを(以前に)示した。オジャランが民主市民党(DTP)及び平和民主党(BDP)に向けた提案は、どちらも個別に議論を要する問題である。DTPとBDPがこの構想を実現するために努力している一方で、新憲法のための準備も進められている。政権与党が新憲法に言及したことをきっかけに、両党は改正案を議案とするとともに別の憲法案の準備も進めている。

■憲法保証

オジャランが基本的には「民族国家」に反対する考え方を公表しているとしても、「クルド民族主義」に拠る活動や組織化が目指している目標が、(民族国家設立の考えと)異なっているとは思えない。「国家ではないが、それと同じ役割を担った議会を設立し、社会レベルでは共同組織(を設ける)」として要約されるアプローチは、何よりもまず無政府主義を思い起こさせる。オジャランがこれを否定したとしても、本質は非現実的な社会的、机上のシステムを提案しているのである。これも疑いなく別途取り上げるべき問題である。

オジャランの憲法案は、スペイン憲法を思い起こさせるような「トルコ共和国憲法は、あらゆる文化が、民主的に存在し、自身の価値を表現することを認める」という言葉で始まる。これが、端緒にすぎないことを強調しなければならない。セラハッティン・デミルタシュBDP共同党首は、憲法案の準備において、(この言葉を)以下のように続けている。
「我々は、全ての信仰、アイデンティティー及び集団が、それぞれ民主的に自己表現できる憲法案を準備している。」

■民族国家-統一構造

民族グループや信仰集団というものが位置を占めている(含まれている)憲法は、トルコをどこへ導くか?すぐに明記しなければいけないのは、この種の試みは、トルコ共和国の国民国家及び統一国家(という基本構造)と折り合わないということだ。さらに、このアプローチは、最近の言い方で、国民であることを基本とすることにも適当ではない。国民という法的繋がりを、民族や信仰集団と一緒に憲法に入れ込むと、違ったトルコができあがる。

■政治的組織化

憲法を民族アイデンティティーや信仰集団に基づいて作成することは、政治構造もこれに沿って形成されることを意味する。デミルタシュ共同党首の「民主的に自分を表現する」アプローチもこのことを指している。

BDP党首は、このアプローチにより、民族に基づいて結成した党の党首として、他の民族集団や信仰集団にも(同様に)政治組織化、結党を提案しているのである。政治システムを民族や信仰に基づいて組織化するということは、統一性をもたせるものではなく、それどころか、分裂ヘ導く考え方である。国民が民族や信仰に基づいて結党・組織化されることで、トルコは国家的・政治的一体性を強めることになると擁護することは、真実を知りながら、見て見ぬ振りをすることと同じである。

■イラクの例

民族や信仰に基づいて形成された政治的構造という観点で、イラクは、近隣で最も際立った例である。この構造は、イラクでは政治面のみならず、社会面においても支配的である。

ある帝国の遺産であるトルコがトルコ、クルド、チェルケス、ラズ、スンニー、アレヴィー、スンニーのトルコ人、スンニーのクルド人、アレヴィーのクルド人、スンニーのチェルケス人といった分類によって結党され、あるいは政党がこの集団に依拠して存在している様を考えてみてください。

こうした政治的構造が、社会構造をも形成(影響)しないと言えるであろうか。協会、商工会議所、組合もこの分類により組織化された社会で、どのように統一や結束が強化されるであろうか。

考えてください、イラクの例からも分かるように、自営業者の看板に民族アイデンティティーや信仰が記載されること、名刺にも同様に記載されるようなトルコで、社会や政治はどのようになるのかと。

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( 翻訳者:田辺朋子 )
( 記事ID:20920 )