トルコ・ギリシャ両首脳、キプロス・EUめぐり刺々しい応酬
2011年01月08日付 Milliyet 紙

パパンドレウ・ギリシャ首相の「トルコがキプロス占領を続ける限りEU加盟はありえない」という発言に対し、エルドアン首相は、平和的メッセージを含むスピーチ原稿を変更して「トルコがあなたたちに何をしたというのか。忍耐にも限界がある」と述べた。

パパンドレウ・ギリシャ首相「8機のトルコ戦闘機がギリシャの小島の上空を飛行した。これはどういうことだ?トルコは何のデモンストレーションをしようとしているのか?これらの行動は、エーゲ海におけるトルコの状況を変えることはない。キプロス占領を続ける限りトルコのEU加盟はありえない。」

エルドアン首相「(トルコのEU加盟を)望まないのであればはっきりと言うべきである。私たちの忍耐を試したいのならば、それにも限度がある。一定のところまでは友好を続けよう。エルズルムの人々は友好ということを非常によくわかっている。友好関係とは死んだときには敵でさえ涙を流すようなものである。」

タイイプ・エルドアン首相とギリシャのヨルゴ・パパンドレウ首相は第25回ユニバーシアード冬期大会会場の開幕式のため昨日(7日)エルズルムで会った。エルドアン首相とパパンドレウ首相は、気温マイナス10度となったエルズルムでの開幕式で交互に熱い友好のメッセージを発した。しかしその後参加した大使会議はそれぞれが強硬なメッセージを述べあう舞台となった。パパンドレウ首相が「トルコがキプロス占領を続ける限りEU加盟はありえない」と述べると、エルドアン首相は平和的なメッセージを含むスピーチ原稿を変更し「トルコがあなたたちに何をしたというのか。忍耐にも限界がある」と述べた。

■8機の飛行機で飛行?

-パパンドレウ首相は、パランドケン・デデマン・ホテルでの第3回大使会議の閉会の晩餐会で最初のスピーチを行い、要約すると次のように述べた。「8機のトルコ戦闘機が水曜日にギリシャの島の上空を飛行した。これはどういうことなのか?トルコは何のデモンストレーションをしたかったのか?この行動はエーゲ海情勢を変えることはない。これはトルコにとって日常的な行動かもしれないが、ギリシャにとってはそうではない。似たような行動が緊張を作りだしている。私たちは緊張や疑念から抜け出すことはできないのか?両国間でまず信頼、その後継続的な平和が作られると考えている。

-大陸棚問題の未解決は大きな危険である。双方が認める解決法を探さなければならない。所定の期間内に実行できなければ国際司法に申し立てなければならない。緊張は我々の関係に害をなし、激しい事件が起こる危険を増加させている。トルコが本当に平和を望むならばこの種の行動を慎むべきである。隣人たちと問題ゼロをめざすなら、やるべきことはいくらでもある。

-キプロス問題は我々の関係において非常に重要だ。EU加盟交渉を窒息させている問題の1つである。今こそ解決すべきである。さもなければプロセスが凍結する危険に直面する可能性がある。キプロス居住のトルコ人とギリシャ人は共存できる。しかし国際社会は占領を合法とみなさない。トルコがキプロス占領を継続する限りEU加盟はありえない。フリストフィアス・キプロス大統領と相対する本当の対話者が必要である。

-トルコとギリシャの双方の事情は政治的決定に基づいているのである。関係を根本から変えるための歴史的な好機が目の前にある。親愛なるタイイプ首相、つまりあなたもこの友情を本当に望むならば、それを行動で示すべきである。そして相互の友好構築のためなら、忍耐強くいつでもあなたに協力するだろう。」

■我々の忍耐を試している

-エルドアン首相のスピーチを要約すると次のように述べた。「トルコはEU加盟のために50年我慢してきた国である。他に50年耐えた国があるのか?忍耐が試されている。トルコの加盟を望まないのであれば、はっきりと言うべきである。我々の忍耐を試しているのであれば、忍耐にも限度がある。一定のところまでは友好を続けよう。エルズルムの人々は友好とは何かを非常に良くわかっている。友好関係とは、死んだときには敵が涙を流すようなものである。

■トルコが何をした?

-トルコがあなたたちに何をしたというのか?トルコは大きすぎるといわれる。ブラジルも大国ではないか。つまり真意を明かすことができないのだ。しかし言いたいことはわかっている。はっきり言ってもらいたい。世界もそれを知ればいい。北キプロスに適用されている(経済的、政治的な)封鎖を終結させると、27か国の満場一致で決定した。しかし封鎖は終わったのか?いいや、終わってはいない。それでは、私は1人の首相として、1人の政治家として、責任ある立場の人間として、どうしろというのだ。相手が決めたことなのだから。あなたたちは満場一致で決定を下したが、決めた人々がこれを実施していないだけだ。

-トルコと北キプロスは常に譲歩せよと言われる。申し訳ないが、そうはいかない。問題の解決を望むならばテーブルに着いて、一緒に解決しよう。私たちただ平和の味方である。自国のために可能なかぎりあらゆる国と平和と繁栄を望んでいる。断言するが、私たちはもはや武力ではなく教育に、大量殺戮兵器にではなく子供たちが希望をもって成長する明日に投資する世界を望んでいる。

-親愛なるヨルゴ(・パパンドレウ・ギリシャ大統領)に聞いてもらう必要がある。フリストフィアス大統領は折に触れて私に「私はエルオール(・北キプロス大統領)といかなる身分で話すべきか?」と言っている。現在、今日まで45回余りの会談を行っており、どのようでも話せばいい。申し訳ないが「動物はお互いの匂いをかいで、人は話して(理解し合う)」という話がある。相互に理解するため、座って話し合おう。

■ムフティは任命されず

-(ギリシャ領内の)西トラキアで選ばれたムフティたちは未だに認められておらず、任命されていない。これについて、トルコで主教が私たちによって任命されることが正しくないのと同様、西トラキアのムフティの件も同じことではないか。これらを相互に行うことが必要である。私は尊敬する同僚である首相の誠意を疑っていない。彼にその意志があることはわかっている。私たちにも同様の意志がある。私たちはこれを達成しなければならない。将来の世代に腐った政治を残さないために達成しよう。異なる見解を互いに主張していては目的に到達できないだろう。固定観念から脱さなければならない。私たちトルコは地中海とエーゲ海が『平和の海』となることを望んでいる。」

(中略)

■ パパンドレウ首相:EUを説得すべき、エルドアン首相:信頼は完璧

2人の首相の記者会見で、ギリシャがトルコ国境に設置を考えているフェンスも話題に上った。パパンドレウ首相はこの問題について次のように述べた。「トルコとギリシャの共通の問題である「奴隷」貿易についても話し合った。トルコと協力している。あらゆる対策をトルコと相談しながら実施している。マリッツア(メリチ)川の一部を不法移民が通過ポイントとして使っている。我々の目的は技術的な障壁を作ることである。首相はビザ自由化を議題とした。私たちもその実現を望んでいる。これを支持する一方でEUにおいて私たちの立場を強化するために、トルコと移民について緊密な協力を行うことに関し、EUを説得する必要がある。」

■ 私たちにとっても悩み

エルドアン首相も次のように話した。「国境は206キロメートルあり、12.5キロメートルの(不法越境を阻止する)フェンスの問題が議題となっている。(往来を阻止する)壁のように考えるのは間違いである。ギリシャには100万人の不法滞在者がいることが分かっている。私たちは会談を行い、相互間の信頼は完璧である。私たちにとっても非常に大きな 悩みの種である。マリッツア川は私たちにも近隣諸国に対しても悩みの種だ。」

(後略)

(本記事はAsahi中東マガジンでも紹介されています。)

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( 翻訳者:永山明子 )
( 記事ID:21141 )