イスラエル、ムバーラク政権維持を働きかけ―イスラエル左派紙報道
2011年01月31日付 Radikal 紙

イスラエルは、中東地域の安定を守るため、エジプトのムバーラク大統領に対する批判を控えるよう欧米に要求した。

イスラエルがアメリカ合衆国とヨーロッパ諸国に対し、中東地域の安定を守るために、エジプトのホスニ・ムバラク大統領への批判を控えるよう呼びかけたことが明らかになった。

イスラエルの左派系の新聞であるハーレツ紙は、エジプトの安定を維持することは欧米諸国の利益にもなるとして、イスラエル政府が同盟国を説得しようと努めていると報じた。

注目すべきは、アメリカと欧州連合(EU)がムバラク政権の転覆を支持すると表明した後に、イスラエル政府がこうした外交努力を始めたことである。

イスラエル政府高官によると、イスラエル外務省は、アメリカ、カナダ、中国、ロシア、ヨーロッパ諸国のイスラエル大使館に文書を送り、大使らにそれぞれの赴任国でエジプトの安定の重要性を主張するよう指示した。

同紙はまた、今日(1月31日)EU諸国の外相がエジプトの状況について話し合うことを報じた上で、イスラエル政府高官の次のような発言を載せている。

「アメリカ、ヨーロッパの政府は世論によって振り回されており、そのために自国の真の利益を考えることができていない。ムバラク大統領を批判しているとしても、彼らは友人に孤立感を抱かせてはならない。ヨルダンとサウジアラビアは、欧米の反応を見守っており、皆がムバラク大統領をいかにして見捨てたかを目撃している。このことも深刻な結果をもたらすだろう」

■オバマはムバラクを裏切った

ハーレツ紙は、「オバマ大統領はムバラク大統領を裏切った」と主張するアリー・シャヴィト氏の解説も掲載した。
「ムバラク大統領と共に、アメリカの力も去りゆく」という題のこの解説は、アラブ世界の専制に終焉が訪れたとして、国民はこれ以上の苦しみを望んでおらず、エリート層も沈黙を守ることに耐えられないこと、政府への恐れが消え失せたこと、服従が終わったことを指摘した。暴動に対しては「自由のインティファーダ」という表現を用いている。
また、1789年のフランス革命において、暴動を起こした民衆によって破壊され、革命のシンボルとなったパリのバスティーユを引き合いに出し、次のように表現している。
「チュニジアのバスティーユは陥落した。カイロのバスティーユも壊れようとしている…。他のアラブのバスティーユも終わりを迎えるだろう。」

さらに同解説は、エジプトにおける一連の出来事は1987年に起きたパレスチナのインティファーダに類似しており、同時にこの(ムバラク政権の)崩壊は1989年に起きた東欧における共産主義体制の崩壊を想起させると述べて、この自由化プロセスがどこで終わりを迎えるのかは誰にも分からないと語っている。

■「アメリカ帝国」の崩壊

記事は、今後「アメリカ帝国」は悪として見なされるだろうが、しかしこの帝国が、この60年のあいだ世界を「安定」させ、比較的ではあるが世界の平穏、平和、繁栄を保障していたと指摘した。しかしながら、アメリカのバラク・オバマ大統領が「アメリカ帝国」に損害を与えたとして、次のように述べた。

「ムバラク大統領に対するオバマ大統領の裏切りは、アメリカに忠実で、安定・平穏路線を促進させてきた穏健なエジプト大統領に対する裏切りだけに留まらない。ムバラク大統領に対するオバマ大統領の裏切りは、第三世界諸国の全ての戦略的同盟国に対する裏切りをも象徴している。アジア、アフリカ、南米の指導者たちは揃って、今ワシントンとカイロの間で何が起こっているのかに注視している。みんなこのメッセージを理解している。すなわち、アメリカの発言には価値がない。アメリカとの同盟は信頼できない、ということだ。」

同記事は、これら考察の結果として、まず中国、ロシア、イラン、トルコやブラジルといった大国に影響し、その結果、アメリカの抑止力が失われるだろうと述べている。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:篁日向子 )
( 記事ID:21310 )