Sami Kohenコラム:トルコ・北キプロス間の危機―その背景と影響
2011年02月08日付 Milliyet 紙

最近レフコシャで行われたとあるデモに関してレジェプ・タイイプ・エルドアン首相が述べた厳しい発言は、それまで何もなかったところに、北キプロス・トルコ共和国(KKTC)の間の危機を生みだした。

ここ数日の間、アンカラの一部の政府関係者とレフコシャの政治家、労働組合員、ジャーナリストやNGO関係者との間で、激しい言葉の応酬が巻き起こっている。トルコ系キプロス人が主張した苦しみ、失望もしくは怒りを見るにつけ、政府とトルコ系キプロス人との間のこの緊張を緩和させることはそうそう簡単なことではない。.この「事件」には実は2つの次元が存在する。1つは、トルコ政府とKKTCの間の「危機」に向かっている摩擦である。もう1つは、外交の観点から見た「事件」の国際社会に対する潜在的影響である。

■いかにして始まったのか

まず、この「事件」がいかにして始まったのか、簡潔に説明しよう。

KKTCで労働組合が構成する「プラットフォーム」は、1月28日にレフコシャで、4万人が参加した大きな集会を開いた。デモの目的は人々、特に労働者が受けている経済的苦痛を明らかにし、問題解決に向けた要望や提案を発表することであった。

当初は全てが計画されていたかのように進んだ。しかし終盤頃に、100人と推定される集団がキプロス共和国の国旗とともに、反トルコのプラカードを掲げスローガンを叫んだ。当初、トルコ系キプロス人らは、集会のこの面についてとくに気にはしていなかった。そもそもこれは、KKTCの一部の過激活動家が起こした初めての示威行動ではない。しかしエルドアン首相は、ジャーナリストからの質問への答えで、この事件を非常に深刻に受け止めていることを鮮明にした。エルドアン首相は、当初の発言やその後の発言では、概してトルコ系キプロス人を怒らせる、実際には激怒させるような一連の発言を行った。例えばトルコ系キプロス人を「養っている」といい、「あなた方は自分を誰だと思っているのか」といい、「恥知らずな集会を開いている」と述べ、KKTCの関係者に対し、集会の主催者らを「裁判所に送る」よう指示した。

このような演説の口ぶりを、トルコ系キプロス人はきわめて軽蔑的なものとし、厳しく受け止めた。一時KKTCのデルヴィシュ・エルオール大統領はトルコ政府の機嫌をとろうとしたが、エルドアン首相の非難は「誤った、不十分な情報のせい」であり、集会で「一般大衆は表現の自由を行使した」と述べることでは引けをとらなかった。

はっきりしていることは、エルドアン首相がレフコシャでの集会に関してであれ、KKTCにおける給料(「少なくとも1万トルコリラ=51.8万円」のような)に関してであれ、もしも健全な情報を得ていたならば、この結果はこのようにはならなかっただろう、ということである。もしも首相がトルコ系キプロス人を怒らせた「養う」と言った言葉やそれに似たような単語を使わず、KKTCの経済問題に関する見解をより穏やかな言葉で表明していたならば、この不運な「危機」は起こらなかっただろう。

■無用な危機

一方、首相はこの種のデモを我慢することはできないと述べ、直近の集会の責任者が確実に罰せられるよう望んだことは、「KKTCがトルコ政府の命令によって行動している」との印象を強めると見られている。

しかし、国際社会で本当にマイナスの印象をもたらすであろう発言は、トルコが「戦略的」利益のためにキプロスに留まっているという発言だった。はっきりいってこれは、北キプロスが「占領」下にあり、トルコ政府がこの立場を継続させたがっているというギリシャ系キプロスのプロパガンダに対し、新たな材料を提供するものである。しかしトルコはキプロスにおける存在を、常にトルコ系キプロス人を「救い」、そして「守る」という目的と関連付けながら説明しようと努めてきたのに、である。

要するに、「問題視せず」やり過ごすことができた集会に対し、この種の誤った厳しい発言はなされるべきではなかった。そして、何もないところにからこのような危機が作り出されなければよかったのに、といわざるをえない。

Tweet
シェア


この記事の原文はこちら
原文をPDFファイルで見る
原文をMHTファイルで見る

 同じジャンルの記事を見る


( 翻訳者:三上真人 )
( 記事ID:21409 )