テヘラン・アーザーディー広場で商売をする占い師たち
2011年02月17日付 Jam-e Jam 紙
老いも若きも、学生も勤め人も、時に広場の横にいる占い師たちの餌食になっている。実際、占い師たちにとって大切なのは、お金だけなのであり、誠実さなどではないのだ(写真:バフマン・サーデギー)
老いも若きも、学生も勤め人も、時に広場の横にいる占い師たちの餌食になっている。実際、占い師たちにとって大切なのは、お金だけなのであり、誠実さなどではないのだ(写真:バフマン・サーデギー)

開運の処方箋やヘビの椎骨〔※〕を売る、鏡を使って逃げた泥棒を見つける、不治の病を治す‥‥、これが詐欺占い師たちのやり方だ。

【事件部:ナーセル・サブーリー】毎日のように、占い師たちを訴える訴状が裁判所に寄せられているにもかかわらず、何十人もの占い師たちがテヘラン・アーザーディー広場を占拠し、ニセの処方箋を書いたり、奇妙きてれつなる薬草を与えたりするなどして、人々への詐欺行為を働いている。

 本紙の取材によると、日中、アーザーディー広場内を歩くと、何十人もの男女の占い師の姿を目にすることができる。彼らは高速バスの乗客らが行き交うルートに居座り、こうした人々に「未来のことを占ってあげるよ!」などと声をかけているのだ。

 幸運の処方箋を書く、ヘビの椎骨や油〔※〕を売る、エネルギー療法を行う、馬の蹄鉄を使って開運を行う、鏡を使って逃げた泥棒の居場所を突き止める、実入りのいい仕事を見つける‥‥占い師たちはこうした方法で、自らの市場を活況なままに保っているのだ。

 こうしたなか、逮捕を恐れることもなく「ウソ売りの店」を開いている、このような占い師たちのことを監視している人は、誰もいないように見える。

 男女の占い師たちの群れがやって来るのは、朝8時頃からだ。彼らは続々と、アーザーディー広場の周辺に現れ、営業権をもっているかのように、それぞれ特定の場所に居場所を定める。別の占い師の営業場所に近づこうものなら、この占い師の抗議を受け、直ちにそこから退却することになる。

 居場所を定めると、次に占い師たちがやるのは、占いをするための露店を開くことだ。彼らは通りかかった通行人に、運勢を占うよ、問題解決のための祈祷書きをするよ、などと声をかける。

 笑みを浮かべながら占い師たちの横を通りすぎる人もいれば、占い師たちの乞うような誘いに負けて、数分間彼らの横に座り、彼らの話に几帳面に耳を傾ける人もいる。

 話を聞きに来た人たちの信頼を掴めば、しめたもの、そのときはもう、彼らは自らの胸襟をすでに開いているからだ。

 〔取材をした日、〕花柄のルーサリー(スカーフ)を頭にかぶった女占い師の元を最初に訪れたのは、二人の若い女性だった。彼女たちは、この女性占い師の誘いに応じて、彼女の横に座ったのである。女性占い師はまず、独特の訛りのある話し方で、彼女たちにやさしく、「あなたたちの運勢は上昇している」「チャンスはあなた方の家の扉のすぐそこにまできている」「旅立ちの日が近づいている」などと話しかけている。

 女占い師は、彼女たちのうちの一人の手を取って、長年暗記していたとおぼしき言葉を、よどみなく並べたて、最後に抜け目なく、彼女たちに「近々、二人のお金持ちの求婚者が、高価な白の車に乗って、あなた方の家の扉をノックするでしょう。そしてあなた方に幸運をもたらすでしょう」などと語りかけている。

 二人の若い女性は、お札を数枚、女占い師の手に渡している。女占い師はもっと欲しいと、お金を所望している。

 彼女たちが女占い師に別れを告げた後、私は彼女たちが女占い師のもとを訪れた理由について、彼女たちに尋ねてみた。彼女たちはまず、ちょっとした遊びだったと述べたが、大学生だという彼女たちのうちの一人は、続けて次のように述べた。曰く、「占い師には私たちの未来が分かっていた。彼女が言ったことは正しかった。例えば、私が今関心を持っていることや不安に思っていることについて知っていた」。

 それから少し経って、私はつい先ほどまで、ある別の占い師のもとを訪れていた男性にも話を聞くことにした。占い師のもとを訪れたのはなぜか、その理由を尋ねると、その男性は「問題に巻き込まれて、地方からテヘランにやってきた。私の人生すべてを奪い取った詐欺師の行方を追っている。ここにいる占い師たちの誰かが、助けてくれるかもしれないと思った」と述べた。

 女占い師の助力は有効だったか、この男性に訊いたところ、男性は「明日、彼女の先生にあたる人の元を訪れ、詐欺師の行方を教えてもらうことになった。代金は20万トマーン〔約1万6千円〕とのことだ。今日は、1万トマーンだけ占い師に渡した」と述べた。

 この男性とはここで別れたが、詐欺師のことについて助けを求めるために、別の詐欺師のもとを訪れるなんてことがどうしたらできるのか、驚くばかりだ。

 こうした占い師たちの露店は毎日のように、都市の片隅で拡大を続けている。占い師たちの元を訪れる人々は、自分のお金を失うだけでなく、不治の病を治療するために彼らの勧めを実行したばかりに、より深刻な問題に直面することになる。本当のところ、これらの詐欺師たちの店は、いつになったら一掃されるのだろうか?

「われわれは逮捕している」

 この件に関し、治安維持軍広報センター所長のガニールー大佐に話を聞いた。同大佐は本紙に、「営利目的で路上で占いを行ったり、予言を吹聴したり、生活上の諸問題を解決するための処方箋を書いたりすることは、法律上、明らかに詐欺に該当する」と明言、次のように続けた。

 「もしこのような行為が衆人の目の前で行われていれば、明らかな犯罪行為と見なされる。こうしたことから、警察は全国、特にあなたが仰っていた場所(アーザーディー広場)での、こうした詐欺師たちの逮捕を、自らの日課としているのだ。しかしながら、こうした連中は巡回中の警察官を見るや、一目散に逃げ出してしまう。こうした中、警察の追跡・捜査を受けている者たちのなかには、逮捕・立件されて、司法に引き渡されている者もいる。判事たちの方も、こうした犯罪が繰り返されている現状に鑑み、被害者の有無に応じて、こうした連中に対して起訴状を出している。このように、彼らは一時的に刑務所に収監されている」。

 同所長はその上で、次のように続ける。「しかし気をつけなければならないのは、こうした連中は刑罰を受けたり、罰金を支払ったりすると、しばらく後には再び街中に舞い戻り、以前の犯罪を繰り返してしまうことだ」。

 ガニールー大佐はさらに、「他方、こうした詐欺師たちによる犯罪が後を絶たないのは、人々がこうした占い師を信用してしまうこと、こうした占い師の元を訪れる人々の無知にその原因がある。人々の教育、特に国営メディアを通じて人々を教育することに、もっと関心が払われてよい」と言明している。

〔‥‥〕

 刑事裁判所の補佐判事で法律学者のモハンマド・ホセイン・シャームルー氏は、この問題について次のように述べている。「現在、占い師と称して人々に詐欺を働いている連中に対する取り締まりは、裁判官の仕事の一つとして位置づけられている。占い師たちに言い渡されている判決の多くは、『収賄・横領・詐欺を犯した者たちの罰則』法第2条にもとづくものだ」。

 同氏はその上で、「その一方で、占い師への判決に関しては、判事らの間で意見の対立があるのも事実だ。というのも、1356年〔西暦1977年〕に可決された規則『微罪事件』では、占い師に対して500トマーン〔日本円で現在約40円〕の罰金が規定されている一方で、イスラーム刑法第1条ならびに第2条では、詐欺的な方法で人々を騙す行為についてはっきりと触れており、そのための罰則も定められているからだ」と続けた。

 シャームルー氏はその上で、「私の考えでは、社会の意識レベルを向上させる必要がある。必要な警告を発することで、こうした犯罪を防止することが肝要だ」と付け加えている。



※訳註:「ヘビの椎骨」は、開運や金運、縁結び、邪視除けなどに効果があるとされるヘビの骨や牙のこと。また「ヘビの油」とは、英語のスネーク・オイル、つまり効果の怪しげな薬のことだと思われるが、その一方でイランでは、主に女性をターゲットとしたシャンプーや石鹸、トリートメント、さらには美白クリームなどが「スネーク・オイル」の名で売られていることから、こうした商品のことを指しているのかもしれない。なお、こうした「スネーク・オイル」を製造・販売している「ラブ・ストリート社」は、これら以外にも、フランスのライセンスを得ていると称して、「痩せるためのジェル」や「乳房を引き締めるためのクリーム」、「早漏防止クリーム」など、性に深くかかわる製品を多数製造・販売しており、こうした回春剤的なクリームを総称して「ヘビの油」と呼んでいる可能性もある。

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( 翻訳者:斎藤正道 )
( 記事ID:21562 )