シリア教会総主教、「シリアは、トルコよりずっと快適」
2011年04月05日付 Milliyet 紙


シリアから来たシリア正教会のイグナティウス・ザッカ・ウワズ総主教の苦悩。すなわちミドヤットにある16世紀のモル・ガブリエル修道院を国庫庁が接収することの撤回を求めて、エルドアン首相と会談した代表団であるが、アンカラを満足げに後にした。またエルドアン首相には「公正発展党(AKP)からぜひシリア正教徒の国会議員を」と最後のお願いもしている。

彼らは政治力もなく、力もなく、発言権も弱い。しかしながら、この土地に「最も古くから暮らすもの」であるという自負、さらには自身の年齢が与える勇気によって、今週シリアから、アレッポから、アンタキヤから、マルディンから、アンカラに彼らはやってきた。彼ら自身の言葉によれば、レジェプ・タイイプ・エルドアン首相に「苦悩を説明するために。」

私は、シリア正教会のイグナティウス・ザッカ・イワズ総主教および彼が率いる代表団と、アンカラ訪問直後、イスタンブルで面会した。世界で最も古いキリスト教の指導者に会うために、タルラバシュ地区の奥の方の、ごみの山とけんけんをして遊ぶ子供たちの間をとおって、曲がりくねった通りに位置するシリア正教の教会にたどり着いた。教会の外では大音量で流れる(クルド系歌手)アフメト・カヤを聴く近所の人たち。教会の中では、信徒達と最後の別れの挨拶を交わし、ダマスカスに帰る準備をしていた…。

■ 1933年のダマスカス遷座。

何世紀にもわたって、マルディンのダリュル・ザファラン修道院に総主教座がおかれてきたシリア正教会は、シリア正教徒の虐殺や(強制)移住そしてその他の国家の弾圧に耐えられなくなり、1933年に総主教座をダマスカスに移した。しかしながら、いまだ信徒の一部はトルコにおり、また教会の重要なシンボルもトルコにあるのだ。代表団がアンカラに来た理由は、シリア正教徒の最も神聖な場所に数えられる(マルディン県の)ミドヤットにあるモル・ガブリエル修道院を救うためである。4世紀以来シリア正教徒の「エルサレム(聖地)」として神聖視されてきた修道院の土地の一部が、1月末の憲法裁判所の決定により国庫庁の管轄地になるとされた。彼らは数も少なく、弱い立場に置かれているけれども、権利を求めることには関しては毅然とした態度をとる人々である。

■ 変革はアサド大統領のもとで行われるべき

シリア正教会のイグナティウス・ザッカ・イワズ総主教に対し、私はシリアの政治情勢について質問した。総主教は変革を支持していることを明らかにした上で、「新しい時代にむけて私たちが望んでいることがあります。おそらくベシャル・アサド大統領はそれをやるつもりです。シリアは10年前に比べて随分と良くなりました」と語った。また代表団がアンカラで政府高官から得たメッセージも明かしてくれた。すなわち「改革は条件です、ただしアサド大統領の手で行われることが」。

一部のシリア正教徒らの団体は、先週シリア正教徒をルーツに持つマルクス・ウレック氏が公正発展党(AKP)の(国会議員)候補者になるために申請を行ったことに反発を示していた。ところがウレック氏の申請は、イワズ総主教自らによってエルドアン首相に出されたものらしい。「ご存じのように、スエーデンやベルギー、そしてシリアではシリア正教徒の国会議員がいます。いまやトルコにおいても、シリア正教徒の国会議員が選出される時代が来たのです。直接首相に請願致しました」と総主教は述べた。

■ エルドアン首相の「賃貸のやりかた」

アレッポのシリア正教会ヨハンナ・イブラヒム府主教との談笑の中で、彼らがエルドアン首相と会ったことで満足して帰国することになると私はわかっている。イブラヒム府主教は、「トルコが修道院の土地の一部を接収することに快く思ってはおりませんでした。しかしながら、首相とも大統領とも会談することを願っていました。「司法の決定に我々は干渉できない」と彼らは言いました。しかしながら、首相が提示したやり方は、私たちの教会として、われわれがあの土地を国庫から99年借りることなのです」と述べた。タルラバシュ地区の教会で我々は話を続けた。教会の中で、総主教に感謝の意を伝えに来た者たちは、2万人弱のトルコ国内のシリア正教徒たちの代表でもある。

シリア正教会のイグナティウス・ザッカ・イワズ総主教はエルドアン首相と会談を行った。

■ シリアで私たちは税金を払っていない。

トルコで生活し、日ごとに信者数を減らしているシリア正教徒達は、モル・ガブリエル修道院の他にも幾つかの問題を抱えている。イブラヒム府主教は、他のマイノリティ同様、「ワクフ財産」の(政府による)差し押さえについて不満を述べた。「世俗国家であるトルコ共和国」がオスマン帝国の滅亡に乗じて、多くのギリシャ正教徒、アルメニア正教徒、ユダヤ教徒、そしてシリア正教徒のワクフ財産を差し押さえたままの状態であると主張する。長年にわたり裁判は、いつも国家側に有利な判決を下している。それぞれの信徒共同体も(トルコを)去って行ったため、ワクフ財産もそれぞれマイノリティの手から離れて行っている。またイブラヒム府主教は「我々が抱える別の問題は兵役である」と語り、次のように続けた。「トルコ暮らしているシリア正教会の聖職者たちは兵役に就かなければなりません。しかし私たちは聖職者であり修道士なのです。私たちが武器を握ったり、兵役に就いたりしてはいけないのです。しかしながら、あなた方の首相はこのことにも、考慮するつもりですと語ったにすぎません」と述べた。

シリア正教の子供たちに宗教の教育が行われず、(彼らの)言葉を教えることもできず、そして最低限の教会の修理でさえ許可を得ることが出来ない、と不満を持っている。これらは長い間ギリシャ正教徒達たちから私が耳にしてきた不満でもある。

「しかし、おそらくシリアでのあなた方の立場は(トルコよりも)悪いのではないか」と私は言った。「いいえ、全く逆です」とイブラヒム総主教は反論し、「シリアでは私たちの信仰の自由は、トルコ以上であり、われわれはより平穏に暮らしています。私たちの財産と不動産は私たちの望みのままに管理しています。我々の学校も自由です。私たちの教会からは、税金や電気料金でさえ徴収されていないのです」と述べた。

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( 翻訳者:濱田裕樹 )
( 記事ID:22042 )